【1514】住石ホールディングス

2026/09/22

企業分析

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住石ホールディングス(証券コード1514)について、2026年6月提出の有価証券報告書(2026年3月期・第18期)および2026年7月31日発表の2027年3月期第1四半期決算短信をもとに、ファンダメンタルズ(企業の実力を示す基礎的な情報)を初心者向けに解説します。

企業概要

住石ホールディングスは、石炭事業・ダイヤ事業・採石事業を傘下に持つ純粋持株会社です。もともとは住友グループの石炭採掘会社である住友石炭鉱業株式会社(1949年に東京・大阪両証券取引所に上場)で、江戸時代の別子銅山開坑(1691年)にまでさかのぼる沿革を持ちます。国内での炭鉱事業は1994年の赤平炭砿閉山をもって終了し、その後は石炭の仕入・販売(トレーディング)を主軸とする会社へと転換しました。2008年10月、単独株式移転により持株会社「住石ホールディングス株式会社」を設立し、東京証券取引所に新規上場(現在は東証スタンダード市場)しています。2016年には新素材事業(現・ダイヤ事業)と採石事業を新設分割で別会社化し、現在の3事業体制が整いました。

事業セグメントは次の3つです。

  • 石炭事業:連結子会社の住石貿易株式会社が、発電所や紙・パルプ工場などの大口需要家向けに石炭の仕入・販売を行う事業。2026年3月期の売上高は99.54億円で、グループ売上の9割超を占める中核事業です。
  • ダイヤ事業:連結子会社のダイヤマテリアル株式会社(北海道赤平市)が、衝撃圧縮法という特殊な製法で工業用人工ダイヤモンド(研磨材向けなど)を製造・販売しています。2025年5月には多結晶ダイヤの受託製造企業である株式会社トラストウェルと資本業務提携を締結し、協業を進めています。
  • 採石事業:連結子会社の泉山興業株式会社(青森県六ヶ所村)が、道路用砕石や港湾・原子力関連工事向けの高価格帯製品を採取・加工・販売しています。

この3事業の売上高合計は106.58億円(2026年3月期)と、上場企業としては小粒な規模です。しかし同社の利益の実態を理解するうえで欠かせないのが、連結子会社の住石マテリアルズ株式会社が保有する豪州の炭鉱会社Wambo Coal Pty Ltd(ワンボ社、米国ピーボディ社グループが運営)のB種株式です。 このワンボ社からの受取配当金が、経常利益の大半を占める構造になっています(詳細は次章)。なお、2025年度からは新規事業として映像コンテンツ産業への参入にも着手しており、複数のアニメ・実写映画の製作委員会に出資する取り組みを始めています。

株主構成の面での最大の特徴は、2024年5月に大手企業グループ「株式会社麻生」(本社:福岡県飯塚市、セメント・医療・建設コンサルティング・不動産など多角的に事業を展開)との間で資本業務提携を締結し、以後継続的な株式取得により、2026年3月末時点で麻生の議決権保有比率が56.91%(有価証券報告書の「事業年度末日現在」の記載では57.01%)まで上昇し、住石ホールディングスは麻生グループの連結子会社となっている点です。 上場は維持したまま、麻生グループの一員として経営を進める体制となっています。

代表取締役社長は森省輔氏(元・株式会社三井住友銀行専務執行役員、株式会社明電舎代表取締役副社長を経て2024年6月就任)で、本店は東京都港区西新橋です。従業員数は連結40名(臨時雇用者7名を含む)と非常に少人数の組織です。

業績・財務情報

直近5期の業績推移(連結)

決算期売上高経常利益親会社株主帰属純利益EPS自己資本比率ROE
2022年3月期(第14期)102.77億円23.56億円22.68億円41.02円80.4%14.0%
2023年3月期(第15期)363.23億円37.19億円36.67億円68.31円77.9%19.4%
2024年3月期(第16期)144.16億円81.06億円75.30億円144.70円86.7%31.8%
2025年3月期(第17期)102.64億円47.11億円41.95億円76.76円96.5%15.3%
2026年3月期(第18期)106.58億円27.94億円26.38億円44.11円90.6%9.2%

※第17期(2025年3月期)より、ワンボ社からの利益分配金の表示区分を「売上高」から「営業外収益」の「受取配当金」に変更しており、過年度分も組替え後の数値です。このため、第16期以前と第17期以降とで売上高を単純比較することはできません。

5期の推移を見ると、経常利益・純利益・ROEはいずれも2024年3月期(第16期)をピークに減少傾向にあります。 これは主として、後述するワンボ社からの受取配当金が年度によって大きく変動するためです。自己資本比率は一貫して77~97%と、上場企業の中でもきわめて高い水準(無借金に近い財務体質)を維持しています。

本業の実力と受取配当金の切り分け

同社の損益計算書を見るうえで重要なのは、営業利益(本業の実力を示す利益)と経常利益(本業に加え、受取配当金などの財務収益まで含めた利益)の水準が大きく乖離している点です。

項目2025年3月期2026年3月期増減
売上高102.64億円106.58億円+3.8%
営業利益0.48億円3.29億円+582.1%
受取配当金(主にワンボ社分)46.34億円24.08億円△48.0%
経常利益47.11億円27.94億円△40.7%
親会社株主帰属当期純利益41.95億円26.38億円△37.1%

本業の営業利益は0.48億円から3.29億円へと6.9倍に拡大しており、石炭・ダイヤ・採石の3事業自体は着実に改善しています。 それにもかかわらず経常利益・純利益が大きく落ち込んだのは、もっぱらワンボ社からの受取配当金が前期の46.34億円から24.08億円へとほぼ半減したためです。同社の利益水準を見る際は、営業利益(事業の実力)と、変動の大きいワンボ社からの受取配当金を分けて捉えることが重要と言えます。

セグメント別の状況(経常利益ベースのセグメント利益)は次のとおりです。

セグメント2025年3月期売上高2026年3月期売上高2025年3月期セグメント利益2026年3月期セグメント利益
石炭事業95.58億円99.54億円(+4.1%)4.69億円5.51億円(+17.5%)
ダイヤ事業2.78億円2.67億円(△3.7%)0.70億円0.66億円(△5.7%)
採石事業4.29億円4.36億円(+1.7%)1.07億円1.20億円(+12.1%)
報告セグメント計102.64億円106.58億円6.46億円7.36億円(+13.9%)
全社利益等(主にワンボ社配当・本社費用)――40.65億円20.57億円(△49.4%)

石炭事業は貯炭スペースの有効活用による大口需要家からの追加受注獲得により増収増益、採石事業は風力発電・原子力関連・港湾工事向けの高価格帯出荷が好調で増収増益となりました。一方、ダイヤ事業は多結晶ダイヤの国内主要顧客での生産調整や海外販売の伸び悩みに加え、製造設備増強に向けた整備コスト発生もあり減収減益となっています。全社利益等(主にワンボ社からの配当金と本社管理費用)が7割超を占める経常利益の構造は変わらず、同社の連結利益の水準は、3事業の合計よりも「全社利益等」の変動によって大きく左右される点に注意が必要です。

なお、2026年3月期の特別損益には、2025年3月期に計上した減損損失4.86億円が無くなった一方、北海道の炭鉱の元従業員によるじん肺疾患損害賠償請求について和解金0.11億円を支払い和解が終結した旨が記載されています。

財務指標とキャッシュフロー

2026年3月期末の自己資本比率は90.6%(ROE9.2%)と、借入への依存がきわめて低い財務体質です。キャッシュフローを見ると、営業活動によるキャッシュ・フローは仕入債務の増加や税引前利益の計上により45.53億円のプラス(前期0.26億円のプラス)、投資活動によるキャッシュ・フローは投資有価証券の取得等により11.62億円のマイナス、財務活動によるキャッシュ・フローは配当金の支払等により18.22億円のマイナスとなりました。現金及び現金同等物の期末残高は169.24億円まで積み上がっています。

最新四半期(2027年3月期第1四半期、2026年4~6月)の状況

2026年7月31日発表の第1四半期決算短信によれば、売上高26.99億円(前年同期比1.5%減)、営業利益0.46億円(同119.2%増)、経常利益0.71億円(前年同四半期0.02億円)、親会社株主に帰属する四半期純利益0.49億円(前年同四半期は0.06億円の損失)と、増益基調でのスタートとなりました。石炭・ダイヤ・採石の3事業すべてが増収増益となっています。通期の連結業績予想(下記「成長戦略・将来性」参照)に変更はありません。

成長戦略・将来性

同社は2025年5月、中期経営計画(コーポレート・スローガン「人と技術と資源と向き合い、その先へ」)を策定・公表しました。最終年度である2027年度(2028年3月期)の数値目標は営業利益5億円、ROE8%以上です。経常利益については、当初目標を24億円としていましたが、ワンボ社における坑内掘り(地下の石炭層を採掘する方式)の生産終了に伴い受取配当金の見通しを見直した結果、目標を20億円に下方修正しています。なお、坑内掘り終了後の露天掘りへの移行や代替収益源の有無など、この減少が一時的なものか恒久的なものかについては、今回参照した有価証券報告書・決算短信に具体的な記載はなく、今後の開示を注視する必要があります。

項目2026年3月期実績2027年3月期計画2028年3月期目標(当初→見直し後)
営業利益3.29億円3.00億円5.00億円→5.00億円(変更なし)
経常利益27.94億円18.00億円24.00億円→20.00億円
ROE9.2%8%以上8%以上

事業別の基本施策としては、(1)石炭事業ではコールセンター・コールヤード機能の強化と、顧客のバイオ燃料への燃料転換(脱炭素化対応)への対応強化、(2)ダイヤ事業では資本業務提携先(トラストウェル社)との協業拡大による多結晶ダイヤ製造販売事業の規模拡大、(3)採石事業では下北半島エリアでの新規顧客獲得・販路エリア開拓、(4)新規事業の検討チーム組成、が掲げられています。成長投資額は2025~2027年度の3カ年で30億円を計画しており、2025年度は6億円を既存設備メンテナンス・M&A投資・人材投資に充当しました。

新たな取り組みとして、成長分野と位置づける映像コンテンツ産業への参入が始まっています。2025年度は複数のアニメ・実写映画の製作委員会への参画を決定しており、将来的な事業部門化を視野に展開する方針です。現時点では、決算短信の営業外費用に「映像コンテンツ関連費用」(製作委員会出資金の償却額等)として小規模な費用計上があるのみで、収益への貢献はまだ確認できません。石炭・ワンボ社配当の変動を補う「新たな収益の柱」として期待するには時期尚早であり、現段階では実験的な小規模投資にとどまっている点には留意が必要です。

事業環境認識としては、脱炭素化の進展により主力の石炭事業の需要が中長期的に減少する可能性があることを会社自身が課題として認識しており、燃料転換需要の取り込みなど対応を進めています。あわせて、利益の柱であったワンボ社からの受取配当金についても、坑内掘り生産終了という構造変化を受けて先行きの減少を織り込んだ計画としている点は、今後の業績を見るうえで重要な視点です。中期経営計画は策定から1年足らずで早くもワンボ社の坑内掘り生産終了を理由に数値目標の下方修正を経ており、業界内での位置づけ(石炭トレーディング市場でのシェア等)については他データとの比較が必要ですが、収益源の分散・多様化がどこまで進むかが中期的な注目点と言えます。

株主還元

配当方針は「配当性向40%以上を目安に、安定的な配当を継続する」というものです(配当性向とは、稼いだ純利益のうちどれだけを配当に回しているかを示す指標)。2026年3月期の配当は1株当たり20円(配当性向45.3%、連結EPS基準)で、2027年3月期は1株当たり15円を計画(配当性向56.1%、会社予想連結EPSベース)と、減益計画のもとでも配当性向を切り上げる形で株主還元の維持に努める姿勢を示しています。なお、過去5期の1株当たり配当額は5.00円→7.50円→60.00円→30.00円→20.00円と変動が大きく、これは前述のとおりワンボ社からの受取配当金の増減に伴う利益水準の変動を反映したものです。

自己株式取得にも積極的です。2026年7月31日、取得株式数の上限160万株(発行済株式総数の約2.4%)・取得価額上限10億円とする自己株式取得を決議し、2026年8月3日から27日までの短期間で上限の160万株すべてを約9.90億円で取得、予定より早く取得を終了したことを2026年8月28日に発表しました。 取得方法は自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)および東京証券取引所における市場買付です。このほか、取締役・執行役員向けの譲渡制限付株式報酬制度(年間報酬額の上限200百万円、うち社外取締役分30百万円)も導入されています。

ガバナンス・リスク

同社は監査等委員会設置会社(取締役会に監査等委員という役割の取締役を置き、経営の監督機能を持たせる機関設計)を採用しています。2026年6月25日(有価証券報告書提出日)現在、取締役会は9名で構成され、うち3名(中村幸雄氏、神谷宗之介氏、千田浩一氏)が社外取締役(社外取締役比率33.3%)で、全員が監査等委員を兼務しています。2026年3月期の取締役会開催回数は10回で、全取締役の出席率は100%でした。

ガバナンス上の特徴として、取締役9名のうち2名(麻生巌氏、大濵理氏)は親会社である株式会社麻生の役職員です。特に麻生巌氏は株式会社麻生の代表取締役社長本人が住石ホールディングスの取締役を兼務しており、親会社トップが子会社の経営監督に直接関与する体制となっています。 良し悪しを一概に評価することは難しいものの、親子上場(親会社と子会社がともに上場している状態)における少数株主保護やガバナンスの独立性という観点からは留意すべきポイントであり、投資家として意識しておく価値のある事実です。

政策保有株式(いわゆる持ち合い株式)については、同社は持株会社であり、連結子会社株式を除く純投資目的・純投資目的以外の投資株式は保有していないと明記されています。なお、連結子会社の住石マテリアルズ株式会社が非上場株式18銘柄・貸借対照表計上額28.51億円を保有しており、この中にワンボ社のB種株式が含まれるとみられます(銘柄別の内訳は開示されていません)。

事業等のリスクとして有価証券報告書に挙げられているのは、(1)信用リスク、(2)金利変動リスク(資金調達を主に銀行借入で行っているため)、(3)海外投資リスク(ワンボ社を運営する米国ピーボディ社等の業務状況が業績に影響しうる)、(4)資産価値の下落リスク、(5)海外情勢リスク(石炭事業の主な仕入先である豪州・インドネシア等の政治経済環境の変化や資源市況の変動)です。同社はほぼ無借金経営(自己資本比率90.6%)のため、金利上昇が財務コストを直接圧迫するリスクは限定的とみられますが、利益の柱であるワンボ社関連の海外投資リスクは、同社の事業構造上、最も重要なリスク要因と言えるでしょう。なお、2026年3月期中に北海道の旧炭鉱の元従業員によるじん肺疾患に関する損害賠償請求が和解金の支払いにより終結しています。有価証券報告書上、重要な後発事象に該当する事項はないとされています。

株主構成・株価情報

2026年3月31日現在の大株主は次のとおりです。

株主名持株比率
株式会社麻生56.91%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)3.44%
三井住友カード株式会社2.81%
株式会社三井住友銀行2.21%
株式会社日本総合研究所1.40%
楽天証券株式会社共有口0.99%
モルガン・スタンレーMUFG証券株式会社0.90%
株式会社SBI証券0.63%
大澤 政俊0.61%
野村證券株式会社0.55%

上位10名の合計は70.44%で、筆頭株主である株式会社麻生1社で発行済株式(自己株式を除く)の過半を超える56.91%を保有しています。これとは別に自己株式7,399,704株(発行済株式総数の11.01%、2026年3月末時点)を保有しており、前述の2026年8月の自己株式取得(160万株)を加味すると、自己株式比率はさらに上昇し、市場で流通する株式(流通株式)の比率は一段と限られることになります。単元株式数は100株です。

現在の株価情報(2026年9月18日終値、Yahoo!ファイナンスのデータ)では、株価639円、時価総額約429.55億円、PER(会社予想EPS26.75円ベース、2027年3月期)約23.89倍、PBR(実績BPS468.63円ベース)約1.36倍、配当利回り(会社予想)2.35%となっています。過去5期のPER推移(有価証券報告書記載、提出会社ベース)は4.1倍→5.4倍→9.5倍→9.5倍→22.5倍と大きく変動しており、利益水準がワンボ社からの受取配当金によって年度ごとに大きく振れるため、PERの単年度比較には注意が必要です。株価情報は変動するため、最新の数値は証券会社のサイト等でご確認ください。

まとめ

住石ホールディングス(1514)は、石炭・ダイヤ・採石という3つの小規模な事業を展開する持株会社でありながら、利益の実質的な柱は豪州の炭鉱会社ワンボ社からの受取配当金という、やや特殊な収益構造を持つ企業です。2026年3月期は本業(営業利益)こそ6.9倍に拡大したものの、ワンボ社からの配当金減少により経常利益・純利益は前期比4割弱の減益となりました。中期経営計画も策定から1年足らずでワンボ社の坑内掘り生産終了を理由に目標が下方修正されており、収益源の先行きにはある程度の構造的な不透明感があることは留意すべき点です。一方で、2024年に資本業務提携を結んだ株式会社麻生グループの傘下に入ったことで経営基盤が強化され、配当性向40%以上を目安とする継続的な株主還元方針のもと、2026年8月には予定を上回るペースで大型自己株式取得を完了するなど、株主還元への積極姿勢は明確です。自己資本比率90%超という財務健全性の高さも際立ちます。今後は、石炭・ダイヤ・採石という本業の収益力向上のペースと、ワンボ社関連利益の減少ペースとのバランス、そして映像コンテンツ事業など新規事業の育成状況に注目していく必要があります。

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