日鉄鉱業(証券コード1515)について、2026年6月提出の有価証券報告書(2026年3月期・第112期)および2026年8月6日発表の2027年3月期第1四半期決算説明資料をもとに、ファンダメンタルズ(企業の実力を示す基礎的な情報)を初心者向けに解説します。
企業概要
日鉄鉱業は、国内の石灰石鉱山とチリ共和国の銅鉱山を二本柱とする資源開発会社です。1939年、製鉄原料(石炭・鉄鉱石・石灰石等)の総合開発を目的に、旧日本製鐵の鉱山部門が独立する形で設立され、1954年に東京証券取引所第一部に上場しました。1972年の伊王島鉱業所閉山をもって国内の石炭生産からは撤退し、その後は石灰石など非鉄・非石炭系の鉱物資源と、チリでの銅鉱山開発へと事業の軸足を移してきました。2022年4月の東証市場区分再編では、市場第一部からプライム市場に移行しています。なお、筆頭株主は前身の親会社にあたる日本製鉄株式会社(持株比率10.32%)ですが、有価証券報告書には「当社には、親会社等はありません」と明記されており、支配株主を持たない独立した上場会社です。
事業は資源事業(鉱石部門・金属部門)、機械・環境事業、不動産事業、再生可能エネルギー事業の4区分・実質5セグメントで構成されています。
- 資源事業(鉱石部門):石灰石・砕石・タンカル(粉状石灰石)・燃料等の採掘・加工・販売。主力は高知県の鳥形山鉱業所で、国内最大規模の石灰石鉱山です。標高1,000m超の採掘現場から掘り出した石灰石を、総延長約23.3kmの長距離ベルトコンベアで海岸の選鉱・出荷設備まで運び、6万トンクラスの大型船舶にも対応する船積施設から国内外へ出荷しています。2026年3月期の売上高は669.07億円(グループ売上の約32%)。
- 資源事業(金属部門):チリ共和国で、操業中のアタカマ銅鉱山(60%権益、2003年操業開始、年産約1.1万トン)と、開発中のアルケロス銅鉱山(80%権益、年産1.5万トン計画)を展開。採掘した銅精鉱は、持分法適用関連会社の日比共同製錬株式会社(持分20.28%)に製錬を委託し、電気銅として販売しています。2026年4月には、米国アリゾナ州の銅探鉱プロジェクト「Oracle Ridge」にも新たに参入しました。2026年3月期の売上高は1,202.89億円(グループ売上の約57%)と、グループ最大のセグメントです。
- 機械・環境事業:集じん機など産業機械の製造・販売のほか、自社開発の鉄系無機凝集剤「ポリテツ」を中心とする水処理剤(環境商品)を展開。2026年3月期の売上高は159.05億円。
- 不動産事業:都市部の社有地でのオフィスビル・マンション経営や、全国の鉱山跡地・遊休地を活用した店舗・倉庫・駐車場等の賃貸。2026年3月期の売上高は47.46億円。
- 再生可能エネルギー事業:鹿児島県霧島市にある大霧発電所(九電みらいエナジー運営、出力30,000kW)への地熱蒸気供給や太陽光発電に加え、2025年6月には電源開発株式会社と共同で「白水越地熱株式会社」(当社51%出資、連結子会社)を設立し、新たな地熱資源の調査を進めています。2026年3月期の売上高は18.68億円。
代表取締役社長は森川玲一氏、本店は東京都千代田区丸の内です。連結従業員数は2,175名(2026年3月末)で、資源事業(鉱石部門1,189名、金属部門583名)が大半を占めます。経営理念は「日鉄鉱業グループは、豊かな未来社会づくりに貢献するとともに、社員一人一人が生き生きと誇りを持って働ける企業を目指します」です。
業績・財務情報
直近5期の業績推移(連結)
| 決算期 | 売上高 | 経常利益 | 親会社株主帰属純利益 | EPS | 自己資本比率 | ROE |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2022年3月期(第108期) | 1,490.82億円 | 166.05億円 | 92.79億円 | 111.55円 | 60.7% | 8.0% |
| 2023年3月期(第109期) | 1,640.20億円 | 132.04億円 | 97.80億円 | 117.58円 | 63.5% | 7.7% |
| 2024年3月期(第110期) | 1,668.84億円 | 120.56億円 | 66.02億円 | 79.38円 | 61.3% | 4.8% |
| 2025年3月期(第111期) | 1,967.66億円 | 114.37億円 | 90.19億円 | 109.35円 | 58.9% | 6.4% |
| 2026年3月期(第112期) | 2,097.17億円 | 202.21億円 | 140.33億円 | 178.37円 | 50.7% | 9.4% |
※EPSは、2022年10月の株式1株→2株分割、2025年10月の株式1株→5株分割を考慮し、過去に遡って調整した数値です(有価証券報告書記載)。
2026年3月期は、資源事業(鉱石部門・金属部門)と不動産事業の増益により、売上高2,097.17億円(前期比6.6%増)、営業利益188.26億円(同83.5%増)、経常利益202.21億円(同76.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益140.33億円(同55.6%増)と、増収かつ大幅増益となりました。 一方で自己資本比率は50.7%(前期58.9%)へ低下しており、これは後述するアルケロス鉱山開発向けの借入金増加によるものです。ROEは9.4%まで改善しました。
セグメント別の業績(2025年3月期→2026年3月期)
| セグメント | 売上高(2025年3月期→2026年3月期) | 営業利益(2025年3月期→2026年3月期) |
|---|---|---|
| 資源事業:鉱石部門 | 633.66億円→669.07億円(+5.6%) | 72.56億円→80.07億円(+10.4%) |
| 資源事業:金属部門 | 1,139.94億円→1,202.89億円(+5.5%) | 9.45億円→67.44億円(+613.3%) |
| 機械・環境事業 | 147.68億円→159.05億円(+7.7%) | 20.66億円→20.81億円(+0.7%) |
| 不動産事業 | 28.75億円→47.46億円(+65.1%) | 16.78億円→33.18億円(+97.7%) |
| 再生可能エネルギー事業 | 17.64億円→18.68億円(+6.0%) | 4.77億円→6.45億円(+35.3%) |
| 連結合計(全社調整後) | 1,967.66億円→2,097.17億円(+6.6%) | 102.57億円→188.26億円(+83.5%) |
※セグメント利益の合計は全社費用等の調整前の数値のため、連結合計の営業利益とは一致しません(差額は主に全社共通部門の費用等)。
増益の最大の牽引役は資源事業(金属部門)で、営業利益が9.45億円から67.44億円へと7倍超に拡大しました。 これはアタカマ鉱山の増収に加え、前期(2025年3月期)にあった生産コスト増加要因が剥落したことによるものです。不動産事業も、保有する販売用不動産の売却により営業利益がほぼ倍増しました。なお、この不動産事業の大幅増益は物件売却という一時的な要因によるところが大きく、翌期(2027年3月期)には反動が見込まれている点に注意が必要です(詳細は次章)。機械・環境事業は、水処理剤の主力商品「ポリテツ」の原材料価格高騰が利益の重石となり、増収の割に営業利益の伸びは0.7%にとどまりました。
財務指標とキャッシュフロー
2026年3月期末の総資産は3,104.12億円(前期末比29.2%増)、純資産は1,676.22億円(うち非支配株主持分を除いた自己資本は1,573.07億円、自己資本比率50.7%)です。総資産が大きく増加した一方で自己資本比率が58.9%から50.7%へ低下したのは、開発中のアルケロス銅鉱山向けの資金調達により、長期借入金が大幅に増加した(固定負債が前期末比119.7%増)ためです。 期末の有利子負債残高は640億円に達しています。
キャッシュフローを見ると、営業活動によるキャッシュ・フローは75.80億円のプラス(前期比57.2%の収入減少)、投資活動によるキャッシュ・フローはアルケロス鉱山向けの設備投資等により328.34億円の大幅なマイナス(前期比167.8%の支出増加)、財務活動によるキャッシュ・フローは長期借入れによる資金調達を主因に317.26億円のプラスとなりました。投資活動の支出を、営業活動によるキャッシュ・フローではまかないきれず、借入金で補っている状態であり、開発投資フェーズにあることがキャッシュフローの構造からも読み取れます。
最新四半期(2027年3月期第1四半期、2026年4~6月)の状況
2026年8月6日発表の決算説明資料によれば、売上高574.06億円(前年同期比24.4%増)、営業利益50.88億円(同40.5%増)、経常利益44.70億円(同0.6%減、ほぼ横ばい)、親会社株主に帰属する四半期純利益47.82億円(同45.0%増)と、増収増益で着地しました(前年同期比の数値は本レポートによる計算)。銅価格が1ポンドあたり431.75セントから604.38セントへ上昇したこと、円安(1米ドル144.59円→159.49円)が進んだことが、金属部門を中心に増益に寄与しました。経常利益がほぼ横ばいとなったのは、持分法適用会社である日比共同製錬の業績悪化や、アルケロス鉱山が開発用途で保有する現預金がチリ・ペソ安の影響を受けて為替差損を計上したことによるものです。純利益の伸びが特に大きいのは、政策保有株式の売却益が前年同期の0億円から27億円へ増加したことが主因です。
セグメント別(2025年度第1四半期→2026年度第1四半期、本レポートによる増減率計算)では、資源事業(金属部門)が売上高244.95億円→347.37億円(+41.8%)、営業利益7.83億円→20.19億円(+157.9%)と大きく伸びた一方、資源事業(鉱石部門)は売上高166.87億円→173.63億円(+4.1%)に対し営業利益は24.86億円→24.78億円(△0.3%)とほぼ横ばいでした。これは主力の石灰石が、顧客のプラント停止・不調により販売数量が減少し、価格改定効果を打ち消したためです。会社側は「Q1の減販は想定線であり、第2四半期以降の回復により通期の数量は計画通りを見込む」としています。
成長戦略・将来性
同社は2024年5月、2024~2026年度の3ヵ年を対象とする第3次中期経営計画を策定・公表しました。長期ビジョンとして「2033年度のありたい姿」を掲げ、経営管理目標をROIC(投下資本利益率)7%以上(会社が想定する資本コストWACC6%を上回る水準)に設定しています。ROICとは、事業に投じた資金に対してどれだけ効率よく利益を生み出しているかを示す指標です。計画2年目にあたる2025年度(2026年3月期)のROIC実績は6.7%となり、計画対比で3.5ポイント改善しました。長期目標の7%まであと一歩に迫っています。
中期経営計画の基本方針は、(1)ROIC経営の全社への浸透・定着、(2)アルケロス鉱山開発の着実な推進と操業開始の実現、(3)鳥形山を中心とする石灰石供給体制の最適化(海外向け販売の拡大含む)、(4)石灰石・ポリテツの新市場開拓、(5)新規資源の確保・開発、の5点です。
最大の焦点は、チリで開発中のアルケロス銅鉱山です。 2011年の初期探鉱から始まったこのプロジェクトは、2026年夏頃の操業開始を見込む最終段階まで進展していますが、有価証券報告書は「当初の計画に対して開発費用の増加や操業開始時期の遅れが生じております」と明記しています。さらに、2026年8月6日発表の決算説明資料によれば、同鉱山が位置するチリ・コキンボ州周辺で同年7月中旬に豪雨が発生し、鉱山サイトへの資機材搬入・人員輸送に使う主要公道の橋が決壊、アクセス公道の一部も流出したため、建設工事を一時中断しているとのことです。同社は仮設復旧の支援や周辺道路の使用(幅員等の制約あり)を検討していますが、2026年7~9月を予定していた操業開始への影響については、資料発表時点(8月6日)で「精査中」とされており、本レポート執筆時点でも影響の全容は確定していません。中期経営計画の最終年度である2026年度の重点課題が、天候リスクによって不透明感を増している点は、投資家として注視すべき重要なポイントです。
なお、チリでは2024年1月から銅のロイヤルティ課税を引き上げる新鉱業ロイヤルティ法が適用されていますが、アタカマ鉱山・アルケロス鉱山とも主な増税対象からは外れており、現時点での影響は軽微とされています。
このほかの成長投資としては、2026年4月に米国アリゾナ州の銅探鉱プロジェクト「Oracle Ridge」に参入(Eagle Mountain Miningとの合弁、4年間で総額2,000万米ドルを投じ環境許認可取得・試錐探鉱・実現可能性評価を実施)したほか、機械・環境事業では主力の水処理剤「ポリテツ」について、台湾・ベトナムをターゲットに現地工場を建設し、東アジア・東南アジア市場の開拓を図る方針です。
2027年3月期の連結業績予想は、売上高2,325億円(前期比10.9%増、本レポート計算)、営業利益140億円(同25.5%減)、経常利益115億円(同43.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益120億円(同14.3%減)と、増収減益を見込んでいます。 銅価格は1ポンドあたり550セント(前期実績490.59セント)、為替は1米ドル155円(前期実績150.77円)を前提としています。セグメント別に見ると、金属部門は売上高が20.4%増加する見通しである一方、営業利益は13.4%減少する計画です(いずれも本レポートによる計算)。これは、アルケロス鉱山の調査費・開発コストの本格投下や、アタカマ鉱山でプラントから離れたエリアでの採掘本格化に伴う労務費増加が理由です。不動産事業も、前期にあった不動産売却益の反動で営業利益が51.5%減少する計画となっています(本レポートによる計算)。「本業は伸びるが、開発投資の先行負担と一時益の反動で今期は減益」という構図であり、2026年5月13日公表の当初計画から変更はないとされていますが、前述のアルケロス鉱山の豪雨影響次第では、この計画自体が今後見直される可能性がある点には留意が必要です。
株主還元
配当方針は、「連結配当性向40%を目途に配当を実施し、単年度の業績変動の影響を受けないよう、配当下限値を1株当たり34円とし、連結配当性向と配当下限値のいずれか高い方を採用する」というものです。剰余金の配当は中間・期末の年2回を基本としています。
2026年3月期の配当は、中間配当117円(2025年10月の株式分割前の金額)・期末配当48円(分割後の金額)で、株式分割の影響を調整した合計は1株当たり71.4円(配当性向約40%、EPS178.37円に対して)でした。2027年3月期は1株当たり62.0円を予想しており(配当性向約40.6%、会社予想EPS152.51円に対して)、減益計画のもとでも配当性向40%程度の水準を維持する方針です。過去10年超の配当金・配当性向の推移を見ると、2015年度~2020年度は1株当たり8~11円程度で推移していましたが、2021年度以降は資源価格の上昇による増益を背景に33.5円→35.5円→33.8円→44.8円→71.4円と大きく増配が続いてきました(いずれも株式分割調整後の金額)。
資本効率の向上に向けては、配当だけでなく政策保有株式の売却と自己株式取得も進めています。 2027年3月期第1四半期には、政策保有株式31億円分を売却するとともに、自己株式30億円分を取得しました。また、2025年10月1日には普通株式1株を5株とする株式分割を実施し、同年11月28日には自己株式352万3,190株を消却しています。アルケロス鉱山向けの大型投資で財務レバレッジが上昇する局面でありながら、株主還元・資本効率向上の取り組みも並行して進めている点が特徴です。
ガバナンス・リスク
同社は2023年6月の定時株主総会で監査等委員会設置会社に移行しました。取締役会は9名で構成され、うち4名(泉宣道氏、板倉賢一氏、青木優子氏、道又紀子氏)が社外取締役(社外取締役比率44.4%)で、このうち青木優子氏・道又紀子氏の2名が監査等委員を兼務しています(監査等委員は計3名、うち2名が社外)。社外取締役4名は、親会社や主要取引先の出身者ではない独立性を有する経営者・学者・弁護士とされています。取締役会は原則月1回開催され、重要案件は事前に経営会議(経営企画部担当役員が議長)で多角的に検討したうえで付議する運営体制です。
政策保有株式(いわゆる持ち合い株式)については、上場株式31銘柄・貸借対照表計上額423.40億円、非上場株式23銘柄・6.25億円の合計約429.65億円を保有しています。これは2026年3月期末の総資産(3,104.12億円)の約13.8%に相当する規模であり、上場企業の中でも政策保有株式の比重が大きい部類に入ります。会社は個別銘柄ごとに事業関連性・財務健全性・経済合理性を毎年検証する方針を示しており、2026年3月期には非上場株式1銘柄・上場株式4銘柄(売却価額合計29.25億円)を売却するなど、縮減の取り組みも進めています。
事業等のリスクとして有価証券報告書が特に詳しく挙げているのは、(1)主要事業拠点に関するリスク(鳥形山鉱業所は多雨地域に位置し豪雨で生産・出荷に支障が生じうるほか、南海トラフ巨大地震のリスクも指摘。アタカマ鉱山は逆に乾燥地域でインフラ未整備のため豪雨時に洪水被害を受けやすい)、(2)休廃止鉱山の鉱害管理リスク(全国に多数の休廃止鉱山を保有し、鉱業法上、鉱害発生時は最終鉱業権者として賠償義務を負う)、(3)銅価・為替・金利変動リスク(銅価10セント/lb変動で連結売上高20.8億円・営業利益4.5億円が変動、為替5円/ドル変動で売上高38.8億円・営業利益1.9億円が変動すると試算。有利子負債640億円を抱え金利変動の影響も従来以上に大きい)、(4)鉄鋼・セメント需要への依存リスク、(5)資源開発(探鉱・開発)に伴う投資回収リスク、(6)事業の国際展開リスク、(7)環境規制リスク、(8)感染症リスクです。
加えて特筆すべきは訴訟リスクです。連結子会社の日鉄鉱コンサルタント株式会社は、2023年6月に北海道蘭越町で発生した蒸気噴出事故に関し、工事発注者である三井エネルギー資源開発株式会社(旧三井石油開発)に対して出来高・作業費等21億2,900万円の支払いを求めて2024年9月に提訴した一方、同社からは安全施工義務違反を理由に34億6,400万円の支払いを求める訴訟を2024年10月に提起されており、両訴訟は東京地方裁判所で併合審理され、現在も係争中です。 双方の請求額を合計すると56億円規模となり、結果次第では業績への影響が生じ得る点は投資家として留意すべきでしょう。
なお、アルケロス鉱山開発向けのコミットメント付タームローン契約(政府系金融機関・都市銀行3行、2034年1月最終弁済)には財務制限条項が付されており、提出会社単体の株主資本を778億円以上に維持すること、経常損益が2期連続で損失とならないようにすることなどが定められています。2026年3月期末時点でこれらの条項に抵触する状況にはありませんが、開発コストの増加や豪雨被害の影響が長引いた場合、財務規律の面でも注視が必要です。有価証券報告書には、2026年4月28日付でNittetsu Mining USA LLCを通じ米国のWedgetail Operations LLCを子会社化した旨が重要な後発事象として記載されていますが、それ以外に重要な後発事象はないとされています。
株主構成・株価情報
2026年3月31日現在の大株主は次のとおりです。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本製鉄株式会社 | 10.32% |
| THE NORTHERN TRUST COMPANY AVFC(コンチネンタル・ジェネラル・インシュアランス関連) | 9.68% |
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 8.14% |
| 公益財団法人日鉄鉱業奨学会 | 8.14% |
| 株式会社麻生 | 5.00% |
| 株式会社みずほ銀行 | 3.73% |
| 株式会社三井住友銀行 | 2.49% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505223 | 2.02% |
| 日鉄鉱業持株会 | 1.83% |
| 住友大阪セメント株式会社 | 1.64% |
上位10名の合計は53.00%です。筆頭株主は前身の親会社にあたる日本製鉄(10.32%)ですが、支配的な株主ではなく、上位株主は信託銀行・保険会社・取引先企業など幅広く分散しています。自社の奨学財団(公益財団法人日鉄鉱業奨学会)が2位株主に並ぶ点はやや珍しい特徴です。単元株式数は100株で、発行済株式総数は2025年10月の株式分割(1株→5株)と同年11月の自己株式消却(352万3,190株)を経て8,000万株となっています。
現在の株価情報(2026年9月16日終値、株価はYahoo!ファイナンスのデータ)では、株価3,385円、時価総額約2,708億円です。PERは、会社発表の2027年3月期予想EPS152.51円を用いると約22.2倍(本レポートによる計算)、PBR(実績BPS2,040.74円ベース)約1.66倍、配当利回り(会社予想)1.83%となっています。過去5期のPER推移(有価証券報告書記載)は6.35倍→6.09倍→12.46倍→12.04倍→13.92倍と、資源価格の変動に伴う業績のブレを背景に変動してきました。株価情報は変動するため、最新の数値は証券会社のサイト等でご確認ください。
まとめ
日鉄鉱業(1515)は、国内最大規模の石灰石鉱山「鳥形山」を擁する資源事業(鉱石部門)と、チリでの銅鉱山開発(金属部門)を二本柱とする、旧日本製鐵の鉱山部門にルーツを持つ資源会社です。2026年3月期は、銅価格上昇や不動産売却などを追い風に純利益が前期比55.6%増と大幅増益となり、ROICも長期目標の7%に着実に近づいています。一方で、開発中のアルケロス銅鉱山は、開発費用の増加・スケジュール遅延に加え、2026年7月には現地の豪雨被害でアクセス道路が寸断され、当初予定していた7~9月の操業開始への影響を精査中という、足元で不確実性の高い局面にあります。2027年3月期は、この開発投資の本格化や前期の不動産売却益の反動により減益計画となっており、豪雨被害の影響次第では、この計画自体が変わる可能性もあります。財務面では、開発資金の借入増加により自己資本比率が50.7%まで低下している点、連結子会社が抱える約56億円規模の訴訟が係争中である点も留意すべきポイントです。一方で、配当性向40%を目途とする株主還元方針や、政策保有株式の縮減・自己株式取得を通じた資本効率向上の取り組みは着実に進められています。今後は、アルケロス鉱山の操業開始時期とコストの動向、そして訴訟の帰趨を中心に、業績の変化を注視していく必要があります。