【150A】JSH

2026/09/21

企業分析

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企業概要

株式会社JSH(証券コード:150A、東京証券取引所グロース市場)は、障がい者の雇用を支援する「地方創生事業」と、精神疾患のある方向けの訪問看護を行う「在宅医療事業」を2本柱とする会社です。2016年4月に設立され、2024年3月26日にグロース市場へ上場しました。本社は東京都中央区京橋で、福岡に本社機能(福岡本社)、大阪に支社を置いています。代表取締役会長兼社長は創業者の野口和輝氏です。経営理念は「人を通じて、喜びを作り、幸せを作る」です。

連結の従業員数は579名(2026年3月末、ほかに臨時雇用が平均61.5名)で、前年の488名から増えています。提出会社(単体)の平均年齢は41.6歳、平均勤続年数は2.61年、平均年間給与は約349万円です。連結子会社は、不動産向けの無人内見システムを提供するショウタイム24株式会社(2025年1月に第三者割当増資の引受で子会社化)の1社です。

事業の中身は、次のとおりです。

セグメント 主な内容 2026年3月期の売上高(百万円) 前期比 セグメント損益(百万円)
地方創生事業 障がい者雇用支援(コルディアーレ農園)、観光物産(Re:Local) 3,205 +27.8% 776(利益)
在宅医療事業 精神疾患のある方向けの訪問看護、訪問診療のコンサルティング 1,445 ▲0.6% ▲196(損失)
その他 IoTソリューション(無人内見システム)など 113 - ▲63(損失)
合計 - 4,740 +19.5% 営業損益 ▲106

※セグメント売上高は、セグメント間の内部取引を含む有価証券報告書の記載です(3つの合計は連結売上高と一致しません)。在宅医療事業とその他の販売実績(外部顧客への売上)は、有価証券報告書ではそれぞれ1,440百万円、94百万円です。セグメント損益の合計(約517百万円)と営業損益(▲106百万円)の差は、本社の管理部門などの全社費用と内部取引の消去で、約▲623百万円です(当レポートの逆算)。

利益を稼いでいるのは、地方創生事業の「障がい者雇用支援事業」です。仕組みは次のとおりです。

障がい者の法定雇用率(一定規模以上の企業に、従業員に占める障がい者の割合を、一定以上にすることを義務づける制度)は、2024年4月に2.3%から2.5%へ、2026年7月には2.7%へ引き上げられました。ところが、法定雇用率を達成している民間企業は、2025年6月時点で46.0%にとどまります(厚生労働省の集計、有価証券報告書の記載)。特に東京都では、法定雇用率を達成している企業は31.1%で、雇用義務のある企業のおよそ3社に2社が未達成です(有価証券報告書の記載)。会社は、障がい者を雇いたくても、応募がない、仕事の切り出しが難しい、といった理由で、雇用が進みにくいと説明しています。

そこで、企業が当社から障がい者(と、その管理者)の紹介を受けて採用し、その方々が、地方にある当社の「コルディアーレ農園」(水耕栽培の屋内農園が中心)で働く、というサービスを提供しています。企業は、当社に、農園の利用料、水耕栽培設備のレンタル料、障がい者を支える「定着支援サポート料」を、毎月支払います。当社は、看護師や精神保健福祉士、ジョブコーチを農園に配置し、通勤の送迎も行っています。

収益の種類 内容
スポット売上(1回限り) 障がい者やその管理者の人材紹介料(サービス導入時)
リカーリング売上(毎月の継続収入) 農園利用料、設備レンタル料、定着支援サポート料。コルディアーレ農園の売上の約90%(2026年3月期)

2026年3月末の障がい者受入数は1,788人(前年同月比約+25%)、農園は26拠点(9都道府県)でした。障がい別の構成は、身体、知的、精神がおよそ1:1:2です。

在宅医療事業は、精神疾患のある方の自宅に看護師が訪問する訪問看護サービスです。売上の9割以上が、医療保険の診療報酬(患者の自己負担分を含む)で、1回の訪問あたり約9千円です。2026年3月末で、14都道府県に、訪問看護ステーション39事業所と8営業所、計47拠点があります。この事業で培った看護のノウハウを、農園の障がい者の定着支援に活用しています。

業績・財務情報

直近の業績(3月期)

JSHは、2025年3月期(第9期)から連結決算を開示しています。それ以前は、提出会社(単体)の数値のみです。単体の5年間の推移は、次のとおりです。

項目(単体) 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高(億円) 23.30 29.68 34.82 39.68 46.52
経常利益(億円) 0.83 1.61 1.95 1.94 ▲0.41
当期純利益(億円) 0.61 1.88 1.45 1.53 ▲0.78
1株当たり当期純利益(円) 15.33 41.25 31.29 27.33 ▲13.79
1株当たり純資産(円) ▲352.71 ▲258.78 334.63 364.07 350.74
自己資本比率 42.2% 66.9% 72.2% 69.7% 52.4%
ROE(自己資本利益率) 16.3% 18.8% 9.2% 7.9% ▲3.9%
従業員数(名) 301 383 427 484 572

※億円表記は千円単位の実数を小数第3位で四捨五入したものです。有価証券報告書の「主要な経営指標等の推移」の表には営業利益の欄がないため、5期分の比較は経常利益で示しています。1株当たり指標は、2023年9月の株式分割(1株→200株)を反映した有価証券報告書の数値です。2022年3月期と2023年3月期の1株当たり純資産がマイナスなのは、上場前に優先株式(優先的な権利を持つ株式)が発行されていたためと見られます(当レポートの推定)。ROEは、株主の出資分(自己資本)に対して1年間でどれだけ利益が出たかを示す指標で、一般に10%を超えると高い水準とされます。

売上高は、4年間(2022年3月期→2026年3月期)で約2.0倍、年平均で約19%の伸びです(当レポートの計算)。一方、2026年3月期は、売上が伸びたのに、利益が赤字になりました。以下、連結の数値で見ます。

2026年3月期(第10期・連結)の内訳

項目 2025年3月期 2026年3月期 増減
売上高(百万円) 3,967 4,740 +19.5%
売上総利益(百万円) 1,450 1,422 ▲1.9%
(売上総利益率) 36.5% 30.0% ▲6.5ポイント
販売費及び一般管理費(百万円) 1,273 1,528 +20.0%
営業損益(百万円) 176 ▲106 -
経常損益(百万円) 185 ▲108 -
特別損失(百万円) 6 18 主に減損損失
親会社株主に帰属する当期純損益(百万円) 144 ▲121 -
1株当たり当期純損益(円) 25.67 ▲21.44 -

※売上総利益率は、当レポートの計算です。

売上は+19.5%伸びましたが、売上原価が+31.8%増えたため、売上総利益は前期を下回りました。有価証券報告書は、原価が増えた理由を、事業の拡大に伴う原価部門の人員増による人件費の増加と、新しい農園や訪問看護の事業所の開設による地代家賃の増加と説明しています。販売費及び一般管理費も、管理部門の人員増と、看護師の採用手数料の増加で+20.0%増えました。

赤字の中心は在宅医療事業です。地方創生事業は、売上+27.8%、セグメント利益+39.8%(7.76億円)と好調でした。一方、在宅医療事業は、前期の1.65億円の利益から、1.96億円の損失に転じました(差は約3.6億円)。有価証券報告書は、「中長期的な収益基盤の確立を見据えた積極的な出店戦略」として、この1年で、新たに12事業所と14営業所を開設し、10営業所を事業所へ変更したと説明しています。看護師の人数(常勤換算)は、2025年4月の122.2人から2026年3月の163.8人へ増えました。

在宅医療事業の収益は、「訪問件数×約9千円」で決まります。看護師1人あたりの月間訪問件数は、2025年4月の98.5件から、2026年3月の88.9件(2026年2月は78.2件)へ下がっています。看護師を先に増やしたものの、訪問件数が追いつくのに時間がかかった、というのが、有価証券報告書の数値から読み取れる構図です(当レポートの解釈)。

その他(ショウタイム24)は、前期は損益計算書の連結が始まる前でしたが、当期は売上1.13億円、セグメント損失0.63億円でした。広告宣伝や人材採用などの先行投資を行ったと説明されています。

経常損失(▲1.08億円)から、特別損失(主に減損損失、0.18億円)と、税金(0.20億円)を差し引き、非支配株主(ショウタイム24の少数株主)に帰属する損失(0.25億円)を加えて、親会社株主に帰属する当期純損失は1.21億円でした。

「地方創生事業」の主な指標(有価証券報告書)は、次のとおりです。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
利用企業数(社) 112 143 172 203 248
リカーリング売上(百万円) 729 1,315 1,697 2,187 2,773
期末1企業あたりリカーリング売上(千円) 6,509 9,198 9,866 10,775 11,183
解約率(前期末受入数比) 5.0% 0.0% 1.4% 5.4% 4.5%

利用企業数は4年間で112社から248社へ倍増し、リカーリング売上も約3.8倍になりました。1企業あたりの売上が、6.5百万円から11.2百万円へ上がっているのも特徴で、会社は、既存の利用企業が障がい者の受入人数を増やすこと(追加受入)と、価格の見直しが主な理由と説明しています(2026年9月3日公表の機関投資家との質疑応答)。地方創生事業の売上に占めるリカーリング売上の割合は、約86.5%です(当レポートの計算)。

在宅医療事業の指標(2026年3月期)も見ておきます。

項目 2025年4月 2026年3月
利用者数(人) 2,010 2,297(+14.3%)
月間訪問件数(件) 12,037 14,555
常勤換算看護師数(人) 122.2 163.8
1利用者あたり訪問件数(件) 6.0 6.3
1看護師あたり訪問件数(件) 98.5 88.9

※伸び率は、当レポートの計算です。

2027年3月期 第1四半期(4~6月)の状況

項目 2026年3月期 第1四半期 2027年3月期 第1四半期 増減
売上高(百万円) 1,091 1,466 +34.4%
売上総利益(百万円) 369 528 +43.1%
(売上総利益率) 33.8% 36.0% +2.2ポイント
販売費及び一般管理費(百万円) 366 422 +15.3%
営業利益(百万円) 2 105 約43倍
経常利益(百万円) 2 102 約67倍
親会社株主に帰属する四半期純利益(百万円) ▲13 61 黒字転換
1株当たり四半期純利益(円) ▲2.24 10.81 -

※売上総利益の増減率と売上総利益率は、当レポートの計算です。営業利益と経常利益の増減率は、決算短信では「1,000%以上」のため、当レポートで倍率に直しています。

第1四半期は、売上+34.4%、営業利益1.05億円と、黒字に転換しました。セグメント別の状況は、次のとおりです。

セグメント 売上高(百万円) 前年同期比 セグメント損益(百万円) 前年同期
地方創生事業 995 +35.9% 334 183
在宅医療事業 433 +26.6% ▲51 ▲19
その他 41 +145.8% ▲1 ▲10

地方創生事業のセグメント利益率は、33.5%(前年同期は25.0%)に上がりました(当レポートの計算)。一方、在宅医療事業は、売上が+26.6%伸びたのに、損失は0.19億円から0.51億円へ拡大しています。会社は、事業運営の効率化と経営資源の最適配分を目的に、6月30日付で1営業所、7月31日付で3営業所を閉鎖したと説明しています。

第1四半期の営業利益の増加分(約1.03億円)のうち、地方創生事業のセグメント利益の増加(約1.51億円)が、在宅医療事業の損失拡大(約0.32億円)と、全社費用の増加(約0.24億円)を上回っています(当レポートの計算)。黒字化の中心は、引き続き地方創生事業です。

会社が毎月開示している主要指標(2026年9月3日に公表)は、次のとおりです。

指標 2026年3月 2026年6月 2026年8月 8月の前年同月比
障がい者受入数(人) 1,788 1,900 1,942 +25.6%
在宅医療の月間訪問件数(件) 14,555 16,064 16,667 +34.8%
無人内見の利用中戸数(戸、当月) 501 546(※) 576(※) +72.5%

※無人内見の利用中戸数は、ショウタイム24の決算期(4月期)に基づく数値で、2026年3月は同社の3月、6月と8月は同社の6月と8月の数値です。会社の連結業績には、2か月遅れて反映されます。

障がい者受入数は、前年同月比+25%前後の伸びが続いています。在宅医療事業の訪問件数は、2025年4月~11月は、9月を除いて前年同月を下回っていました。12月以降はプラスに転じ(2026年3月は+19.4%)、2026年度に入ってからは、前年同月比+20~35%の伸びです。看護師の増員が、訪問件数の増加に結びつき始めたと読み取れます(当レポートの解釈)。ただし、訪問件数が増えても、看護師の人件費に見合う水準かどうかは、在宅医療事業のセグメント損益で確認する必要があります。

通期予想に対する進捗

会社は、2026年5月に公表した2027年3月期の連結業績予想を、7月15日付で修正し、同時に中期事業計画を公表しました。第1四半期の決算では、この予想を据え置いています。

項目 2026年3月期(実績) 2027年3月期(会社予想) 増減率 第1四半期の進捗率
売上高(百万円) 4,740 6,461 +36.3% 22.7%
営業利益(百万円) ▲106 395 - 26.7%
経常利益(百万円) ▲108 371 - 27.6%
親会社株主に帰属する当期純利益(百万円) ▲121 192 - 31.9%
1株当たり当期純利益(円) ▲21.44 34.01 - -

※進捗率は、当レポートの計算です。会社は、年次で業績を管理しているため、通期の予想のみを開示しています(半期ごとの予想はありません)。

第2~第4四半期(残り9か月)に必要な水準は、次のとおりです(当レポートの計算)。

項目 第1四半期(実績) 第2~第4四半期の平均(予想から逆算)
売上高(百万円/四半期) 1,466 1,665(+13.6%)
営業利益(百万円/四半期) 105 96.5(▲8.5%)

売上は、第1四半期より、平均で約14%高い水準が必要です。一方、営業利益は、第1四半期の水準(1.05億円)を平均で1割弱下回っても達成できる計算になります。第1四半期の売上の伸び(+34.4%)は、通期予想の伸び(+36.3%)とほぼ同じペースで、会社の予想は、足元の勢いを、おおむね、そのまま織り込んだものと読み取れます(当レポートの解釈)。

なお、会社は、有価証券報告書で、障がい者雇用支援事業の人材紹介売上(スポット売上)は、企業が3月末までのサービス提供を求める傾向があるため、下期に偏りやすく、第1~第3四半期の通期利益計画に対する進捗率は、低くなりやすいと説明しています。第1四半期の営業利益の進捗率は26.7%と、この説明よりは高い水準です。ただし、前期の第1四半期の営業利益は0.02億円で、通期は赤字でした。前期は、在宅医療事業の費用先行が、下期の人材紹介売上の増加を打ち消していたため、季節性だけでは、今期の進捗を読み切れない点には注意が必要です(当レポートの見方)。

親会社株主に帰属する当期純利益の予想(1.92億円)は、経常利益の予想(3.71億円)の約52%です。差の約1.8億円は、法人税等と非支配株主に帰属する損益と見られ、実効税率が高い水準です(当レポートの推定)。第1四半期の法人税等は0.42億円で、税金等調整前四半期純利益の約41%でした(当レポートの計算)。

キャッシュフローと財務の状態

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業活動によるCF(億円) 1.38 ▲0.39
投資活動によるCF(億円) ▲6.91 ▲6.53
財務活動によるCF(億円) 1.68 7.66
現金及び現金同等物の期末残高(億円) 8.11 8.85
減価償却費(億円) 1.49 2.36

※第1四半期(4~6月)の決算では、キャッシュフロー計算書は作成されていません。

2026年3月期は、営業活動で0.39億円の資金が出ていきました。投資活動では、熊本の新築農園(2025年7月に第一農園と第二農園を開園)などの設備投資(有形固定資産の取得)に5.80億円を使い、営業CFと投資CFの合計(フリーキャッシュフロー)は、約▲6.92億円でした(当レポートの計算)。この資金は、銀行からの長期借入れ(10.04億円の収入、1.41億円の返済)で賄いました。

項目 2025年3月末 2026年3月末 2026年6月末
現金及び預金(百万円) 811 885 892
借入金(短期+長期、百万円) 290 1,078 1,035
リース債務(百万円) 180 258 -
簡易的なネットキャッシュ(現金-借入金、百万円) 521 ▲193 ▲143
自己資本比率 68.3% 51.2% 50.7%

※2025年3月末の借入金は、短期借入金176百万円、1年内返済予定の長期借入金23百万円、長期借入金91百万円の合計です。2026年6月末は、短期借入金1.00億円、1年内返済予定の長期借入金1.87億円、長期借入金7.48億円の合計です。リース債務は、有価証券報告書の借入金等明細表(1年以内返済予定を含む)の数値で、2026年6月末の数値は決算短信に記載がありません。2025年3月末の簡易的なネットキャッシュは、現金と借入金のみで計算した当レポートの数値です。

この1年で、実質的な財務の姿は、「現金が借金を上回る状態」から、「借入金が現金を上回る状態」に変わりました。2026年3月末の借入金は10.78億円、リース債務を含む有利子負債は13.36億円で、現金(8.85億円)を上回っています(リースを含めた簡易的なネットキャッシュは約▲4.51億円、当レポートの計算)。ただし、自己資本比率は、2026年6月末で50.7%と、なお5割を超えています。平均利率は、長期借入金が1.52%、短期借入金が1.28%です。長期借入金の返済期限は2027年4月から2032年12月で、1年以内に返済する予定の長期借入金は、1.87億円(2026年3月末)です。

有価証券報告書は、この1年の設備投資の動きを、「農園と訪問看護の新拠点の開設のために、自己資金と金融機関からの借入で賄う」としています。成長のための設備投資を、借入金で賄う段階に入ったことを示しています。

また、有価証券報告書には、コミットメントライン契約(金融機関があらかじめ決めた期間・金額の範囲で、借入の実行を約束する契約)に財務制限条項(純資産や損益の水準が一定の条件を下回ると、借入の停止などが起こりうる条項)が付されていると記載されています。2026年3月末時点の主な内容は、次のとおりです。当座貸越とコミットメントラインを合わせた枠は11.0億円で、この枠の借入実行残高はゼロです(2026年3月末)。

銀行 主な条件(要約)
りそな銀行 単体の純資産を、前年比75%以上に維持する。単体の営業損益を、2期連続で損失にしない。
三菱UFJ銀行 単体の純資産を、2024年3月期の75%以上に維持する。単体の経常損益を、2期連続で損失にしない。

2026年3月期の単体の経常損益は▲0.41億円の損失でした。次の期(2027年3月期)にも損失を計上すると、条項に触れる可能性があります(単体の営業損益の実績は、有価証券報告書の主要指標には載っていないため、りそな銀行の条項の判定は、当レポートでは行いません)。会社は、2027年3月期に連結営業利益3.95億円への黒字転換を予想しており、この条項の水準は、予想が達成されれば問題ない範囲と見られます(当レポートの解釈)。なお、この条項は、2026年3月期の有価証券報告書時点のもので、その後の変更は確認していません。

継続企業の前提に関する注記はありません。

成長戦略・将来性

会社は、「地域を問わず全ての人が、心豊かに、能力や個性を発揮できる社会の実現」を目指すゴールとして掲げ、次の3つの領域を進めています。

1. 障がい者雇用支援事業(コルディアーレ農園)

会社は、成長の指標として、「利用企業数の拡大」と「1企業あたりの年間単価の向上」の2点を最重要視していると説明しています(2026年9月3日公表の機関投資家との質疑応答)。

追い風として、次の点が挙げられています。

  • 法定雇用率の引き上げ:2026年7月から2.7%です。会社は、2.3%から2.7%への2回の引き上げで、新たに11万人以上の障がい者の雇用が生まれる可能性があると試算しています(有価証券報告書の試算)。
  • 都市部の雇用のしにくさ:東京都で法定雇用率を達成している企業は31.1%にとどまり、およそ3社に2社が未達成と説明されています。

拠点の展開では、これまで九州(長崎、宮崎、熊本、福岡、佐賀、大分)が中心でしたが、都市部への展開を進めています。2024年12月に札幌、2025年1月に岡山、2025年11月に東京都の青梅、2026年1月に東京都の足立(180区画、最大規模)、2026年5月に大阪府の八尾(90区画)を開園しました。会社は、「都心部を希望する企業に対しても、地方の農園の価値を理解していただくことで、追加導入や切り替えに至るケースも出ている」と説明しています。

競合との違いとして、会社は、精神科の経験のある看護師、精神保健福祉士、ジョブコーチなどを現地に多数配置し、本人と家族への対応も含めて、手厚い支援を提供している点を挙げています。障がい者の職場への定着率の向上に、在宅医療事業のノウハウを活用しています。

2. 在宅医療事業(訪問看護)

精神疾患のある患者の数は、2023年度に603万人と、増加しています。国の方針は、入院中心から、地域での生活を支える方向へ進んでおり、在宅で医療を受ける方が増えるという認識のもと、会社は、医療機関と連携して、訪問看護の体制を整えています。

一方で、この事業は、2026年3月期に赤字となっており、出店を進めるだけでなく、看護師1人あたりの訪問件数を高めて、採算を改善できるかが課題です。前述のとおり、看護師1人あたり訪問件数は、2026年3月期に98.5件から88.9件へ下がっています。2026年6月と7月には、4つの営業所を閉鎖しており、拠点の効率化も進めています。

3. 新しい取り組み

  • 無人内見システム(ショウタイム24):スマートロックを使い、夜間や不動産会社の定休日にも、無人で物件を内見できるサービスです。物件の売却後に、機器を取り外して、次の物件で使い回せる点が評価されていると、会社は説明しています。利用中戸数は、2026年8月に576戸(前年同月比+72.5%)と、伸びています。ただし、セグメント損失(2026年3月期は▲0.63億円、2027年3月期の第1四半期は▲0.01億円)が続いており、規模はまだ小さい(売上は連結の約2%、当レポートの計算)状況です。
  • 観光物産事業(Re:Local):2026年4月に、静岡県伊東市で、一棟貸しの別荘(AUFU VILLA JOGASAKI)を開業しました。長崎県五島市での旅行・民泊事業を中心に、地域に根差した事業を拡大する方針です。

中期事業計画

会社は、2026年7月15日に、2027年3月期の業績予想の修正と同時に、3か年の中期事業計画(2029年3月期まで)を公表しています。数値目標は、次のとおりです(会社の開示資料に基づく数値です)。

項目 2027年3月期(会社予想) 2028年3月期(計画) 2029年3月期(計画)
売上高(百万円) 6,461 8,465 10,658
営業利益(百万円) 395 780 1,321
(営業利益率) 6.1% 9.2% 12.4%
売上高の前年比(当レポートの計算) +36.3% +31.0% +25.9%
地方創生事業:農園数(拠点) 28 35 43
地方創生事業:利用企業数(社) 283 318 356
地方創生事業:リカーリング売上(百万円) 3,695 4,628 5,697

※2026年3月末の実績は、農園26拠点、利用企業数248社、リカーリング売上2,773百万円です。会社は、2028年3月期に地方創生事業の売上50億円、無人内見(IoT)事業の黒字化、2029年3月期に同事業の売上10億円規模を目標としています。在宅医療事業は、利用者数を2026年3月の2,297人から、2029年3月期に4,076人へ増やす計画です。

売上は、2026年3月期の47.40億円から、3年後(2029年3月期)に106.58億円と、約2.2倍、年平均で約31%の成長が必要です(当レポートの計算)。直近の第1四半期の売上の伸び(+34.4%)や、障がい者受入数の伸び(+25.6%)と比べると、2028年3月期の+31.0%は、足元のペースが続くことに加えて、単価の上昇なども必要な水準です。たとえば、2027年3月期のリカーリング売上(計画3,695百万円)は、2026年3月期(2,773百万円)の約1.33倍で、利用企業数の計画(248社→283社、+14%)を大きく上回ります。障がい者受入数の伸び(+25%前後)が続くとして、残りの約6~7%分は、単価の上昇などで補う必要があります(受入数と売上が比例すると仮定した、当レポートの粗い試算です)。

営業利益は、2027年3月期の3.95億円から、2028年3月期に7.80億円(約2.0倍)、2029年3月期に13.21億円(約3.3倍)と、売上より速く増える計画です。利益率の改善は、在宅医療事業の採算の回復と、無人内見事業の黒字化が前提になると読み取れます(当レポートの解釈)。機関投資家との質疑応答でも、会社は、計画の達成に向けて、「既存事業の着実な成長に加え、新たな事業領域への展開も進める」と説明しています。

株主還元

JSHは、2026年3月期まで、配当を実施していません。ところが、2026年に入り、株主還元の方針が大きく変わりました。

施策 内容
配当 2027年3月期の期末配当を3円と予想(初の配当予想。中間配当は0円)
自己株式の取得 2026年8月13日に決議。上限は1,000,000株(発行済株式総数(自己株式を除く)の17.6%)、または取得価額の総額5億円。取得期間は2026年8月14日~2027年8月13日。東京証券取引所での市場買付
資本金等の減少と剰余金の処分 2026年6月23日の定時株主総会で承認され、8月1日に効力が発生。資本金を約2.02億円減らして10.0億円に(減少前は約12.02億円)、資本準備金を約8.92億円減らして2.5億円に(減少前は約11.42億円)し、減らした金額をその他資本剰余金へ振り替え、その他資本剰余金の一部(約3.57億円)で繰越利益剰余金の欠損を填補

配当:1株あたり3円は、2027年3月期の予想EPS(34.01円)に対する配当性向(利益のうち配当に回す割合)で約8.8%です(当レポートの計算)。総額は約1,700万円です(3円×5,666,100株、当レポートの計算)。配当を予想したこと自体が、有価証券報告書(2026年6月提出)の「当面の間は内部留保の充実を図る」という方針からの変化です。

自己株式の取得:会社は、目的を「株主還元の充実及び資本効率の向上を図るとともに、機動的な資本政策の遂行を可能とするため」としています。上限は、株数(100万株)と金額(5億円)のどちらか先に達した時点までです。2026年9月18日の終値(823円)で計算すると、5億円で取得できる株数は約60.8万株で、発行済株式総数の約10.7%です(当レポートの計算)。100万株の上限は、この株価では届きません。なお、会社は、取得の状況を適時開示で公表しており、2026年9月2日付で「自己株式の取得状況(途中経過)」が開示されています。最新の取得株数と金額は、会社の開示で確認する必要があります(当レポートでは、その数値を反映していません)。

資本金等の減少:資本金などの数字を動かして、過去の赤字(欠損)を、帳簿上で解消する手続きです。決算短信は、目的を、「配当や自己株式取得などの株主還元の早期実現に向け、資本政策の柔軟性と機動性を確保するため」としています。発行済株式総数と純資産額は変わりません。

5億円の自己株式の取得は、現在の財務の状態から見て、大きな金額です。2026年6月末の現金及び預金(8.92億円)の約56%、純資産(20.06億円)の約25%、時価総額(約46.6億円)の約10.7%にあたります(当レポートの計算)。5億円をすべて使うと、現金は、他に資金の動きがなければ、約3.9億円まで減ります。一方で、有利子負債は10億円台で、投資も続くため、還元と成長投資、財務の余裕のバランスをどう取るかが注目点です(当レポートの整理)。なお、りそな銀行の純資産に関する条件(前述、前年比75%以上)との関係では、5億円をすべて使うと、他の要因がなければ、単体の純資産(2026年3月末約19.9億円)は約14.9億円まで減り、前期末の75%の水準(約14.9億円)とほぼ同じになります。2027年3月期の純利益の予想(約1.9億円)が加われば上回る計算ですが、これは当レポートの試算で、条項の最新の内容は確認していません。

新株予約権(役員・従業員向け)については、次のとおりです。2026年3月末の付与済みの新株予約権は258,800株で、発行済株式総数の4.6%です。行使価額は、すべて1株425円です(第1回、第2回、第4回~第7回)。2026年9月18日の終値(823円)は、行使価額の約1.9倍です(当レポートの計算)。すべて行使されると、約1.1億円の払込みがあり、株式数は増えます(希薄化)。

株主優待の制度は、有価証券報告書、決算短信には記載がありません。

ガバナンス・リスク

ガバナンス

創業者の野口和輝氏が、代表取締役会長兼社長として、取締役会の議長を務め、直接・間接に発行済株式の35.55%(2026年3月末)を保有する筆頭株主でもあります。有価証券報告書は、この状況を、「創業者への依存」のリスクとして記載しており、会社は、権限委譲を進めて依存度を下げていると説明しています。

取締役会は、取締役9名(うち社外取締役2名)で構成され、監査役会は、監査役3名(全員が社外監査役)です。監査役には、弁護士2名が含まれています。会社は、監査役会設置会社で、執行役員制度を導入しています。主要株主である野口氏との取引は、現在ありません。取引が生じる場合は、少数株主の利益を損なわないよう、取締役会で審議する方針です。

リスク

有価証券報告書は、多くのリスクを記載しています。特に重要と考えられるものは、次のとおりです。

  • 障がい者雇用支援事業への規制や風評:会社は、農園で働く形について、外部の弁護士に確認し、厚生労働省にも照会して、適法性を確認しているとしています。しかし、このような仕組みに対して、否定的な風評があることを認識しており、厚生労働省は2023年以降、「障害者雇用ビジネス」の実態調査を行い、利用企業に向けた望ましい取組のポイントを公表しています。将来、ビジネスモデルを規制する法改正などがあれば、業績に影響を受ける可能性があります(発生可能性は「中」、影響度は「大」)。会社は、同業他社と業界団体(一般社団法人日本障害者雇用促進事業者協会)を設立して、法令の趣旨に沿った運営に取り組んでいます。
  • 法定雇用率の変化:法定雇用率の引き上げが中止された場合や、雇用義務がなくなった場合は、事業に影響を受けます(発生可能性は「低」、影響度は「大」)。
  • 利用企業の獲得と競争:競合企業が多数存在しており、優位性を保てなかった場合は、顧客を獲得・維持できないおそれがあります(発生可能性は「高」、影響度は「大」)。
  • 人材の確保と定着:看護師をはじめとした人材の確保が、事業の成長に必要で、流動性の高い職種であることから、リスクとして挙げられています(発生可能性は「高」、影響度は「大」)。
  • 診療報酬の改定:在宅医療事業の売上の9割以上が診療報酬で、2年ごとの改定の影響を受けます。
  • 新株予約権による希薄化:潜在株式数の割合は、発行済株式総数の4.6%です。
  • ベンチャーキャピタルの保有割合:ベンチャーキャピタルまたはそのファンドが、発行済株式総数の26.02%を保有しており、これらの株式が売却されると、株価に悪影響が出る可能性があると、会社自身が記載しています。
  • 株式会社N・フィールド出身の取締役4名の競業避止:取締役4名が、同社との間で役員等退任後1年間の競業避止契約を結んでいました。会社は、違反はなく、民法上の時効期間も過ぎていると認識していますが、同社から請求などがあった場合には、事業に影響を受ける可能性があると記載しています。
  • 業績の季節変動:人材紹介売上が下期に偏りやすいことは、前述のとおりです。
  • 管理監督者の範囲の縮小:2023年4月に、労働基準法上の管理監督者の範囲を縮小しました。過去の未払賃金は存在しない旨の同意書を取得していますが、未払賃金の請求が発生した場合には、影響を受ける可能性があります。

これらに加えて、当レポートの読み取りとして、次の点にも注意が必要です(いずれも当レポートの整理です)。

1. 在宅医療事業の採算の回復が、全社の利益を左右する

2026年3月期の営業損益を、セグメントで分解すると、地方創生事業の利益(7.76億円)が、在宅医療事業とその他の損失(計2.59億円)と、全社費用など(約6.23億円)を吸収できず、営業赤字になりました。2027年3月期の第1四半期は、在宅医療事業の損失が拡大しています(▲0.51億円)。通期の営業利益3.95億円の達成には、地方創生事業の伸びに加えて、在宅医療事業の損失縮小が、どこまで進むかが問われます。

2. 借入金の増加と、投資・還元の両立

借入金は、この1年で約2.9億円から約10.8億円へ増えました。5億円までの自己株式の取得を実行しながら、拠点の開設などの投資を続けるとなると、資金の使い方が、これまで以上に重要になります。中期事業計画では、農園を26拠点(2026年3月末)から、2029年3月期に43拠点へ増やす計画のため、設備投資は続くと見られます(当レポートの解釈)。

3. 第1四半期の進捗と季節性

第1四半期の営業利益(1.05億円)は、通期予想(3.95億円)の26.7%です。しかし、前期の第1四半期は0.02億円で、通期は赤字でした。会社が説明する下期偏重の季節性と、在宅医療事業の費用の出方によって、四半期ごとの利益は、大きくぶれる可能性があります。

4. 第1四半期決算は、監査法人のレビューを受けていない

決算短信の第1四半期の四半期連結財務諸表に対する公認会計士または監査法人のレビューは「無」と記載されています。

株主構成・株価情報

大株主の状況(2026年3月31日現在)

株主名 所有株式数 持株比率
野口 和輝(代表取締役会長兼社長) 1,976千株 34.87%
ジャフコSV5共有投資事業有限責任組合 980千株 17.28%
ジャフコSV5スター投資事業有限責任組合 242千株 4.27%
東京センチュリー株式会社 180千株 3.17%
株式会社はじめカンパニー 170千株 3.00%
速水 裕 110.8千株 1.95%
Ariake Secondary Fund Ⅲ LP 107千株 1.88%
株式会社ホテル・アルファ・ワン事業本社 100千株 1.76%
ホテル・アルファーワン事業共同組合 100千株 1.76%
株式会社ホテルアルファ―ワン・ディベロップメント 100千株 1.76%
上位10名の合計 4,065千株 71.7%

※持株比率は、発行済株式(自己株式を除く)の総数に対する割合で、有価証券報告書の記載です。ジャフコの2つの組合を合わせると、約21.5%です(当レポートの計算)。有価証券報告書のリスク情報では、ベンチャーキャピタルまたはそのファンドの保有割合は26.02%です。

創業者の野口氏と、ジャフコの2つの組合で、発行済株式の約56%(34.87%+21.55%、当レポートの計算)を占め、上位10名では71.7%です。株式の大半を少数の株主が持っており、市場で自由に売買される株式の比率(浮動株比率)は、大きくないと見られます(当レポートの推定)。

所有者別の状況(2026年3月末)は、個人その他が81.43%、その他の法人が13.66%、外国法人等(個人以外)が2.60%、金融機関が0.05%です。株主数は1,711人です。

株式の情報は次のとおりです。

  • 発行済株式総数:5,666,100株(2026年3月末、2026年6月末、2026年8月13日時点とも同数。自己株式は0株)
  • 単元株数:100株
  • 株式分割:2023年9月15日付で、1株を200株に分割
  • 上場:2024年3月26日、東京証券取引所グロース市場(公開価格456円)

株価と投資指標

2026年9月18日の終値823円での指標です。株価の変動により、数値は変わります。

項目 数値
株価(2026年9月18日終値) 823円
時価総額 約46.63億円(発行済株式数5,666,100株)
PER(2027年3月期の会社予想EPS 34.01円) 約24.2倍
PER(2026年3月期の実績EPS ▲21.44円) 算出不可(赤字)
PBR(2026年6月末BPS 353.15円) 約2.33倍
PBR(2026年3月末BPS 342.29円) 約2.40倍
配当利回り(2027年3月期の予想配当3円) 約0.36%
年初来高値/安値 880円(2026年9月16日)/329円(2026年6月16日)
出来高(2026年9月18日) 199,100株(約1.64億円)
最低購入額 約8.2万円(100株)

※PERは「株価÷1株当たり純利益(EPS)」、PBRは「株価÷1株当たり純資産(BPS)」です。2026年6月末のBPSは、自己資本20.01億円を、発行済株式数5,666,100株で割った当レポートの計算です。2026年3月末のBPS(342.29円)は、有価証券報告書の数値です。年初来高値・安値と出来高は、Yahoo!ファイナンスの掲載値です。出来高の金額は、当レポートの計算です。

参考指標(当レポートの計算):

  • 売上高に対する倍率:時価総額は、2027年3月期の会社予想売上(64.61億円)の約0.72倍、2026年3月期の実績売上(47.40億円)の約0.98倍です。
  • 営業利益に対する倍率:時価総額に、借入金(2026年6月末10.35億円)を足し、現金(8.92億円)を引いた企業価値(借入金のみで計算し、リース債務は含みません)は約48.1億円で、2027年3月期の会社予想営業利益(3.95億円)の約12.2倍です。
  • 株価の推移:2026年6月16日の安値(329円)から、現在(823円)までは、約2.5倍です。上場時の公開価格(456円)に対しては、約1.8倍です。2026年3月期の有価証券報告書に記載の最高株価(574円)と最低株価(340円)と比べても、現在は上場後の高い水準にあります。この間に、2026年7月15日に、業績予想の修正と中期事業計画が公表され、8月13日に、第1四半期の黒字転換、初の配当予想、最大5億円の自己株式取得が公表されています。これらが、市場で買い材料と受け止められた可能性がありますが(当レポートの推測)、株価の上昇の要因は、開示資料からは特定できません。
  • 流動性:2026年9月18日の出来高は199,100株(約1.64億円)で、これは発行済株式総数の約3.5%にあたります(当レポートの計算)。この日の株価は、前日比で▲32円(▲3.74%)でした(Yahoo!ファイナンスの掲載値)。

PERが約24倍、PBRが約2.3倍という数字は、前期が営業赤字で、今期に黒字転換を予想しているという、利益の水準が大きく変わる局面の数字であることを踏まえて見る必要があります。同業他社との比較データがないため、割高・割安の判断は本レポートでは行いません。業界内での位置づけは、他社のデータとの比較が必要です。

まとめ

JSHは、障がい者の雇用を、地方の農園での就労で支える「障がい者雇用支援事業」と、精神疾患のある方向けの「訪問看護」を2本柱とする会社です。地方創生事業は、利用企業数が4年間で112社から248社へ倍増し、リカーリング売上(毎月の継続収入)は約3.8倍になっています。2027年3月期の第1四半期は、売上が+34.4%の14.66億円、営業利益が1.05億円と、黒字に転換しました。

一方で、見ておきたい点もあります。

  • 2026年3月期は営業赤字:売上は+19.5%の47.40億円でしたが、営業損益は▲1.06億円でした。在宅医療事業の先行費用が主な要因です。
  • 在宅医療事業の損失は、第1四半期も拡大:売上は+26.6%でしたが、セグメント損失は0.51億円で、前年同期(0.19億円)より拡大しました。
  • 通期予想のハードル:2027年3月期は、売上64.61億円(+36.3%)、営業利益3.95億円の予想です。第2~第4四半期の売上は、第1四半期より平均で約14%高い水準が必要です。
  • 中期計画のハードル:売上は、2029年3月期に106.58億円(3年で約2.2倍、年平均約31%)、営業利益は13.21億円(営業利益率12.4%)を計画しています。2027年3月期のリカーリング売上の計画(前期比約1.33倍)は、利用企業数の伸びを大きく上回るため、単価の上昇なども必要です。
  • 借入金の増加:この1年で、借入金は約2.9億円から10.8億円に増え、ネットキャッシュは、プラスからマイナスになりました。財務制限条項が付されたコミットメントラインもあります。
  • 株主還元への転換:初の配当予想(3円)と、最大5億円の自己株式取得を決議しました。ただし、5億円は、現金の約56%にあたる金額で、投資や借入とのバランスが焦点です。
  • 法規制・風評、株式の需給:障がい者雇用ビジネスへの否定的な風評と規制の可能性、創業者とVC(ベンチャーキャピタル)で約56%を保有する株式の偏り、新株予約権による希薄化(4.6%)にも注意が必要です。

今後のチェックポイントとして、次の3点が挙げられます。

  • 在宅医療事業の損益が改善に向かうか。訪問件数(2026年8月は前年同月比+34.8%)と看護師の人数の関係、営業所の閉鎖の効果が、セグメント損益に表れるかを、次の四半期決算で確認したいところです。
  • 障がい者受入数(2026年8月1,942人、+25.6%)と、1企業あたりの単価が伸び続けるか。法定雇用率2.7%への引き上げの効果と、都市部の農園(東京、大阪)の稼働がポイントです。
  • 自己株式の取得の実行状況と、借入金・現金の推移。財務制限条項の条件に対して余裕を保てるかも、あわせて確認する必要があります。

本レポートは、企業の開示資料(有価証券報告書、決算短信、決算説明資料、適時開示資料、株主総会関連資料)に基づく情報整理であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資の最終判断は、ご自身の責任で行ってください。

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