【1383】ベルグアース

2026/09/04

企業分析

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野菜苗(接ぎ木苗)の生産・卸売りで国内トップシェアを持つベルグアース(証券コード1383)について、2026年10月期第2四半期(中間期)決算短信と半期報告書をもとに、ファンダメンタルズ(企業の実力を示す基礎的な情報)を初心者向けに解説します。

1. 企業概要

ベルグアース株式会社は、愛媛県宇和島市に本社を置く農業関連企業です。主力事業は野菜の「接ぎ木苗」をはじめとする苗(なえ)の生産・卸売りで、年間約2,300万本という生産量は国内トップクラスとされています(同社サイト・外部情報より)。接ぎ木苗とは、病気に強い品種の根(台木)に、味や収量に優れた品種の枝(穂木)を接いで育てた苗のことで、収穫量や病害耐性を高められることから、プロの農家を中心に広く使われています。

沿革(公式サイト等の外部情報による)は次の通りです。創業者の山口一彦氏が1996年に有限会社山口園芸を設立したのが原点です。日本では農業生産法人(農地を使って農業を営む法人)は株式上場ができないという法的な制約があったため、2001年1月に「野菜苗の仕入販売及び研究開発」を目的とする新会社としてベルグアースを設立し、山口園芸の研究開発部門などを分社化しました。2004年には大手ホームセンターとの取引を開始して家庭園芸向け販売を本格化し、その後全国に生産農場を展開。2011年11月29日に大阪証券取引所JASDAQ(スタンダード)に上場し、2022年4月に東京証券取引所スタンダード市場へ移行しました。2022年2月には福島県に植物ワクチン(病気に強い苗を作るための研究)の研究施設も開設しています。

経営理念として、「日本農業の為になる、役に立つ会社になることで、農業に革命を興し、人々の食と暮らしを豊かにする」を掲げています(半期報告書より)。

ビジネスモデルの特徴は、閉鎖型育苗施設(温度や湿度を管理できるハウス型の設備)と情報システムを組み合わせた、いわば「工業的」な農業経営にあります。天候リスクを抑えながら計画的に苗を生産し、全国のJAや種苗店、大手ホームセンターなどに卸すことで、安定供給と品質の均一化を図っています。

事業は3つのセグメントに分かれます。中核は野菜苗・苗関連事業で、トマト・キュウリ・ナス・スイカ・メロン・ピーマン類などの苗を生産・販売しています(売上の約87%を占める柱です)。次いで、種子や農業資材を扱う農業・園芸用タネ資材販売事業、家庭園芸向けの店舗販売を行う小売事業があります。

2. 業績・財務情報

中間期(第2四半期累計)の業績

2026年10月期第2四半期累計期間(2025年11月1日〜2026年4月30日、以下「今中間期」)の連結業績は次の通りです。

項目 今中間期 前年同期 増減
売上高 3,496百万円 3,205百万円 +9.1%
営業損益 △44百万円 △232百万円 赤字幅縮小
経常損益 △37百万円 △224百万円 赤字幅縮小
親会社株主に帰属する中間純損益 △12百万円 △69百万円 赤字幅縮小
1株当たり中間純損失(EPS) △7.77円 △43.41円 -

売上高は前年同期比+9.1%と増収を確保し、営業損失・経常損失・純損失はいずれも前年同期から大幅に縮小しました。 苗の販売という事業の性質上、春先の作付けシーズンに需要が集中するため、同社の業績は季節性が大きく、下半期(特に本決算にあたる10月期末に近い時期)に利益が積み上がりやすい構造です。会社側も「当第2四半期連結累計期間の業績は概ね予定通りに推移しております」とコメントしており、この中間期の赤字自体は想定の範囲内とみられます。

なお、中間純損失が営業損失・経常損失よりも縮小しているのは、法人税等調整額(会計上の一時的な税金の調整)で16百万円の利益要因があったためです。

参考までに、前期(2025年10月期、通期)の実績は、売上高7,303百万円、経常損益△29百万円(通期でも経常損失)、親会社株主に帰属する当期純利益+48百万円、EPS+30.22円、自己資本比率34.9%でした。経常損益が赤字でも最終利益が黒字になったのは、法人税等の調整によるものとみられます。

セグメント別の状況(今中間期)

セグメント 売上高 前年同期比 セグメント利益(損失) 前年同期
野菜苗・苗関連事業 3,044百万円 +10.2% +177百万円 △1百万円(赤字転換)
農業・園芸用タネ資材販売事業 404百万円 +3.4% +10百万円 +5百万円(+119.1%)
小売事業 49百万円 -7.2% △5百万円 △6百万円(赤字縮小)

主力の野菜苗・苗関連事業は、前年同期のセグメント損失から177百万円の黒字に転換しました。要因は、今期新たに連結子会社となったピーエスピー株式会社(PSP社)の寄与に加え、2025年3月にフル稼働を始めたベルグ福島(株)鶴沢農場が今期は通年で稼働したこと、そして全国的にスイカ苗の需要が伸びたことです。特に同社独自規格の「ヌードメイク苗」(接ぎ木の手間を省いた独自製法の苗)を含むスイカ苗の売上は前年同期比+17.2%と大きく伸びました。一方で、種苗や培土などの資材コスト上昇、人手不足によるパート・派遣スタッフの活用増、新農場の稼働に伴う労務費・減価償却費の増加といったコスト圧力もあり、これらを段階的な価格転嫁で吸収した形です。

品目別では、トマト苗796百万円(+12.5%)、キュウリ苗653百万円(+1.8%)、ナス苗313百万円(+9.2%)、スイカ苗547百万円(+17.2%)、メロン苗307百万円(+11.8%)、ピーマン類苗(ピーマン・パプリカ・シシトウ・トウガラシ)194百万円(+13.6%)となっており、スイカ苗の伸びが目立ちます。地域別では、北海道・東北(592百万円、+18.9%)や九州・沖縄(302百万円、+16.9%)の伸びが大きく、最大の販売地域は関東(1,074百万円、+6.8%)でした。

農業・園芸用タネ資材販売事業も、PSP社の新規連結や、暑さに強い夏秋向けミニトマト品種「サマーソニック」の認知拡大による粗利改善で増収増益となりました。小売事業は春の家庭菜園フェアなどを実施したものの減収で、セグメント損失は縮小したものの依然として赤字です。

財務状態とキャッシュフロー

中間期末(2026年4月30日)時点の総資産は7,104百万円で、前期末(2025年10月末)から17.3%(1,046百万円)増加しました。一方、純資産は2,152百万円で前期末から1.0%(22百万円)減少しており、その結果、自己資本比率は前期末の34.9%から29.5%へ低下しました。純資産が減少したのは、中間純損失の計上に加え、期末配当金16百万円を支払ったためです。

総資産の増加は、主に短期・長期の借入金増加によるもので、これは季節性のある事業の運転資金需要(苗の生産には仕込みから出荷まで一定期間がかかり、その間の材料費・労務費を立て替える必要があります)と、PSP社の子会社化に伴うのれん(買収額が取得した純資産を上回った差額。将来の収益力を見込んで計上する無形資産)69百万円の計上によるものとみられます。

営業活動によるキャッシュフロー(本業でどれだけ現金を生み出したか)は△375百万円と、前年同期の△294百万円からマイナス幅が拡大しました。これは売上債権(未回収の売掛金)や棚卸資産(在庫)の増加が主因で、季節性の高い苗ビジネスでは中間期に運転資金が先行して出ていく傾向があります。投資活動によるキャッシュフローは+109百万円(前年同期△281百万円)とプラスに転じましたが、これはPSP社の株式取得構造に伴う収入や保険積立金の解約収入によるもので、事業拡大のための投資が減ったわけではない点に注意が必要です。財務活動によるキャッシュフローは+175百万円で、借入によって運転資金・投資資金を賄った形です。現金及び現金同等物の中間期末残高は782百万円で、前年同期末比+11.8%でした。

3. 成長戦略・将来性

同社は2024年から2028年を対象とする中期経営計画を掲げ、「10年後に次の成長段階へ大きく飛躍できるベルグアースグループを目指す」ことを目標としています。基本戦略として、①苗事業の更なる拡大と収益力強化、②新製品・新技術の開発、③苗事業を起点とした事業領域の拡大、④事業インフラ強化の4つを掲げていますが、今回提供された決算短信・半期報告書の範囲では、具体的な数値目標(売上高○億円といった目標)までは確認できませんでした。

2026年10月期の通期業績予想は、2025年12月15日の開示時点から変更されていません。 内訳は、売上高8,000百万円(前期比+9.5%)、営業利益110百万円、経常利益105百万円、親会社株主に帰属する当期純利益54百万円(+12.9%)、EPS34.09円で、いずれも黒字転換・増益を見込んでいます。中間期の赤字は季節性によるもので、下半期にかけて利益が積み上がる計画とみられます。

成長ドライバーとしては、今期連結対象に加わったPSP社が持つ種子コーティング加工技術(種子に薬剤や資材をコーティングして発芽率や耐病性を高める技術)の今後の事業展開への活用、関連会社である株式会社むさしのタネ(PB=プライベートブランド品種を扱う種苗会社)との今後の連携が挙げられています。また、2025年3月にフル稼働を開始したベルグ福島の鶴沢農場が今期通年で稼働することも、生産能力・自社生産比率の向上に寄与する見通しです。

研究開発費は中間期に68百万円を投じており、前年から大きな変化はないとされています。植物ワクチン研究施設(2022年開設)を含め、病害に強い苗の開発が引き続きの取り組みとみられます。

4. 株主還元

配当については、2025年10月期の実績が期末10.00円(年間合計10.00円)、2026年10月期は中間配当0円(実績)、期末10.00円(予想、合計10.00円)と、中間期が赤字であるにもかかわらず、年間配当は前期と同水準を維持する計画です。

配当性向(純利益のうち配当にいくら回したか)は、2025年10月期実績ベースで10.00円÷EPS30.22円=約33.1%でした。中間期はEPSがマイナスのため配当性向を単純計算できませんが、通期予想EPS34.09円に対して年間配当10.00円を当てはめると約29.3%となり、無理のない範囲の配当計画といえます。ただし、季節性の大きい事業で通期予想の達成が前提となっている点には留意が必要です。

自己株式(会社が買い戻して保有している自社株)は300株(発行済株式の0.02%)とごく少数で、積極的な自社株買いは確認できませんでした。

5. ガバナンス・リスク

会計監査(レビュー)は、えひめ有限責任監査法人が担当しています。地方(愛媛県)の監査法人が担当している点は、同社が地域に根差した企業であることの表れともいえますが、大手監査法人と比べた監査体制の規模感については留意しておくとよいでしょう。

6. 株主構成・株価情報

半期報告書(2026年4月30日時点)によると、主な株主は以下の通りです。

株主名 持株比率
山口一彦(代表取締役社長兼CEO兼COO) 10.13%
アグリビジネス投資育成株式会社 7.04%
株式会社伊予銀行 3.72%
ベルグアース共栄会 3.43%
OATアグリオ株式会社 3.10%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 2.44%
松岡馨 2.17%
ベルグアース従業員持株会 1.70%
トキタ種苗株式会社 1.69%
山口眞由子 1.57%

上位10名の合計は36.98%です。創業者である代表取締役社長・山口一彦氏が筆頭株主として10.13%を保有しており、農業関連の政府系ファンドであるアグリビジネス投資育成、地元の伊予銀行、取引先企業(OATアグリオ、トキタ種苗)、従業員持株会など、事業に関わりの深い株主が名を連ねているのが特徴です。ベルグアース共栄会(取引先で構成される株主組織とみられます)も含めると、経営陣・関係者の結びつきが強い株主構成といえます。なお、自己保有株式300株(0.02%)のほか、伊予農産株式会社が保有する相互保有株式12,800株(0.79%、うち6,100株はベルグアース共栄会名義)があります。

発行済株式総数は1,613,580株、単元株式数は100株です。株式分割の記録は確認できませんでした。

株価情報については、外部の株式情報サイトのデータ(2026年6月時点、以下ソースにより多少の差異があります)によると、株価は2,862円〜2,996円程度、時価総額は約46億〜48億円、PER(会社予想EPSベース)はおおむね85〜90倍程度、PBR(実績)は2.2倍前後、予想配当利回りは0.3%台となっています。PERが80倍を超える高い水準にあるのは、直近の連結業績が赤字基調で1株当たり利益が小さいこと(通期予想EPSでも34.09円)が主な要因で、単純な割高・割安の判断には注意が必要です。株価情報は変動するため、最新の数値は証券会社のサイト等でご確認ください。

7. まとめ

ベルグアース(1383)は、接ぎ木苗の国内生産量トップクラスを誇る野菜苗メーカーで、今中間期は増収を確保しつつ、前年同期からの大幅な赤字縮小を達成しました。新規連結したPSP社や福島の新農場のフル稼働が主力の苗事業を押し上げており、通期では黒字転換・増益の会社予想を維持しています。季節性の大きい事業構造で下半期の実績次第という点には注意が必要です。配当は赤字下でも据え置く方針が示されており、株主還元の安定性を重視する姿勢がうかがえます。


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