【149A】シンカ

2026/09/21

企業分析

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企業概要

株式会社シンカ(証券コード:149A、東京証券取引所グロース市場)は、企業の電話や、SMS(携帯電話の番号あてに送る短いメッセージ)、メール、ビデオ通話などのやり取りを、クラウド上で一元管理するサービス「カイクラ」を提供する会社です。2014年1月に設立され、2024年3月27日にグロース市場へ上場しました。本社は東京都千代田区で、大阪に支社、京都と福岡に開発センターを置いています。代表取締役社長は創業者の江尻高宏氏です。経営理念は「ITで世界をもっとおもしろく」です。

子会社はなく、単体(連結ではない)の決算を開示しています。従業員は93名(2026年6月末、アルバイト2名を含む)で、2025年12月末の75名から半年で大きく増えました。2025年12月末時点の平均年齢は38.3歳、平均勤続年数は2.9年、平均年間給与は約661万円です。

「カイクラ」の仕組みは、次のとおりです。契約先(会社では「カイクラユーザー」と呼びます)のオフィスに専用の機器「カイクラアダプター」を設置すると、固定電話に着信があった瞬間に、その相手の顧客情報や過去の会話履歴が、パソコンやスマートフォンの画面にポップアップ表示されます。電話番号を変える必要はありません。通話の自動録音、AIによる文字起こしと要約、SMSの送信、ビデオ通話、メールの取り込みなどの機能があり、すべての履歴が顧客情報と紐づいて残ります。担当者ごとに対応の質が違う「属人化」を減らし、組織で顧客対応を管理できるようにすることが狙いです。2025年1月には、固定電話の番号のままスマートフォンで発着信できるクラウド電話「カイクラフォン」の提供も始めました。

収益は3つ(およびその他)で構成される、SaaS型の収益モデルです。SaaSとは、ソフトウェアをインターネット経由で月額料金などで提供する方式のことです。

収益の種類 内容 2025年12月期(百万円) 前期比
初期売上 拠点にカイクラを導入するときの費用(アダプターの設置など) 128 ▲32.8%
月額売上 拠点ごとに毎月かかる利用料(サブスクリプション) 1,137 +30.4%
従量課金売上 SMSの送信など、使った分だけかかる料金 190 +15.5%
その他 - 9 +75.6%
合計 - 1,464 +18.8%

※前期比は、有価証券報告書の記載です。

会社は、月額売上と従量課金売上を合わせた毎月の継続収入を「ストック売上」として重視しています。2025年12月期は、売上高の約91%がこのストック売上です(当レポートの計算)。導入時にだけ発生する初期売上は減り、毎月の継続収入が増えた構造です。

主な販売先の業種は、自動車(ディーラー)、不動産、医療・介護などです。2026年6月末のアクティブユーザー拠点数(解約した拠点を除いた、使われている拠点の数)は6,619拠点で、業種別では自動車が40.1%(2,651拠点)と最も多く、医療・介護が20.3%、不動産が14.1%です(構成比は決算説明資料の記載)。販売は、自社の営業部門に加え、NTTグループ、大塚商会、SB C&Sなどの販売パートナー経由や、機能の一部を他社にOEM(相手先のブランドで提供)する方法でも行っています。

業績・財務情報

直近5年間の業績(12月期・単体)

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高(億円) 5.77 7.68 10.40 12.32 14.64
経常利益(億円) ▲0.92 ▲1.51 0.98 0.49 0.62
当期純利益(億円) ▲0.90 ▲1.36 1.09 0.16 0.43
1株当たり当期純利益(円) ▲33.35 ▲50.56 40.45 5.27 13.48
1株当たり純資産(円) 155.69 105.13 145.58 309.07 326.69
自己資本比率 79.2% 70.8% 73.0% 79.6% 81.9%
ROE(自己資本利益率) ▲19.3% ▲38.8% 32.3% 2.3% 4.2%
営業活動によるCF(億円) ▲0.97 ▲1.86 1.47 1.02 0.79
従業員数(名) 38 53 55 64 75

※億円表記は千円単位の実数を小数第3位で四捨五入したものです。1株当たり指標は、2023年10月の株式分割(1株→40株)を反映した、有価証券報告書の数値です。有価証券報告書の「主要な経営指標等の推移」の表には営業利益の欄がないため、5期分の比較は経常利益で示し、営業利益は2024年12月期以降を別に記載しています。ROEは、株主の出資分(自己資本)に対して1年間でどれだけ利益が出たかを示す指標で、一般に10%を超えると高い水準とされます。

売上高は、4年間(2021年→2025年)で約2.5倍、年平均で約26%の伸びです(当レポートの計算)。2023年12月期に黒字化しましたが、その後の利益は、売上の伸びほどには大きくなっていません。2023年12月期の純利益(1.09億円)が経常利益(0.98億円)を上回っているのは、法人税等の計上額がマイナス(税金の戻り)だったためと見られます(経常利益と純利益の差からの当レポートの推定)。ROEも、2023年12月期の32.3%から、2025年12月期の4.2%へ下がっています。自己資本比率は、2024年3月の上場に伴う資金調達で高まり、以後は約80%前後で安定しています。

2025年12月期(第12期)の内訳

項目 2024年12月期 2025年12月期 増減率
売上高(百万円) 1,232 1,464 +18.8%
売上総利益(百万円) 1,015 1,199 +18.1%
(売上総利益率) 82.4% 81.9% ▲0.5ポイント
販売費及び一般管理費(百万円) 938 1,139 +21.5%
営業利益(百万円) 78 60 ▲23.0%
(営業利益率) 6.3% 4.1% ▲2.2ポイント
経常利益(百万円) 49 62 +27.2%
当期純利益(百万円) 16 43 +167.2%

※販売費及び一般管理費の2024年12月期の数値は、前期比+21.5%から逆算した当レポートの概算です。営業利益率は、当レポートの計算です。

売上は+18.8%と伸びたものの、営業利益は▲23.0%の減益でした。売上総利益率は約82%と高い(ソフトウェアの利用料が中心の事業のため)一方、人件費、広告宣伝費、AI関連の研究開発費などが増え、販売費及び一般管理費が売上の伸びを上回りました。経常利益と純利益の伸びが大きく見えるのは、前期にあった上場関連費用や本社移転費用などの一過性の費用がなくなったためで、有価証券報告書は営業利益の減少を明記しています。事業の実力を示す数字は、営業利益の推移で見るのが適切です。

「カイクラ」のKPI(会社が重視する経営指標)は、次のように推移しています。

KPI 2025年12月末 2026年6月末 前年同期比
顧客数(社) 3,182 3,366 +11.5%
アクティブユーザー拠点数(拠点) 6,202 6,619 +11.4%
ARPA(1拠点あたりの月間売上、円) 19,557 20,067 +8.2%
ARPU(1社あたりの月間売上、円) 38,196(2025年12月末) 39,460 +8.2%
月次解約率(四半期の平均) 0.16%(2025年10~12月) 0.35%(2026年4~6月) ▲0.03ポイント
ARR(年間のストック売上高、億円) 13.27 15.20 +20.2%

※顧客数、拠点数、ARPA、ARPUは月末値です。2025年12月末の数値は、有価証券報告書または決算説明資料の四半期推移の記載によります。ARRは、12か月分の「月額売上」と「従量課金売上」の合計です(会社の定義)。

顧客数、拠点数、単価(ARPA)、ARR、解約率のいずれも、順調に推移しています。解約率は、会社が目標の上限とする月2.00%を大きく下回る水準です。ただし、直近の0.35%は、前四半期の0.26%、2025年10~12月の0.16%より高く、四半期ごとに上下があります。

2026年12月期 上期(1~6月)の状況

項目 2025年上期 2026年上期 増減率
売上高(百万円) 702 875 +24.5%
売上総利益(百万円) 583 699 +19.9%
(売上総利益率) 82.9% 79.9% ▲3.0ポイント
販売費及び一般管理費(百万円) 546 851 +55.7%
営業損益(百万円) 36 ▲152 -
経常損益(百万円) 37 ▲154 -
中間純損益(百万円) 27 ▲157 -
1株当たり中間純損益(円) 8.62 ▲48.49 -

※売上総利益率と販売費及び一般管理費の増減率は、当レポートの計算です。

上期の売上は過去最高の8.75億円(+24.5%)で、2025年12月期の+18.8%から伸び率が上がりました。四半期でみると、2026年の第1四半期が4.23億円(+24.0%)、第2四半期が4.51億円(+25.2%)で、増収のペースが速まっています。

一方、営業損益は1.52億円の赤字(前年同期は0.36億円の黒字)でした。売上総利益は+19.9%増えたのに対し、販売費及び一般管理費は+55.7%(3.05億円)増えたためです。給料手当(販売費及び一般管理費の主要な費目)は、1.73億円から2.41億円へ、+39.7%増えています。会社は、人材採用・育成、広告宣伝、研究開発、AI技術の活用などの成長投資を「計画的かつ積極的に実行している」と説明しています。売上総利益率は79.9%と、前年同期の82.9%から3.0ポイント下がりました(会社は、サーバー利用料やカイクラアダプター費用などを原価としています)。

売上の内訳(収益区分)は、次のとおりです。

収益区分 2025年上期(百万円) 2026年上期(百万円) 増減率
初期売上 65 101 +53.9%
月額売上 543 648 +19.4%
従量課金売上 89 112 +25.1%
その他 5 14 +193%
合計 703 875 +24.5%

※増減率は、千円単位の数値から計算した当レポートの計算です。

月額売上と従量課金売上を合わせたストック売上は、上期で約7.60億円(売上高の約87%)です(当レポートの計算)。前年同期の約90%より、初期売上とその他の伸びで、わずかに低下しています。

通期予想に対する進捗

会社は、2026年2月13日に公表した2026年12月期の業績予想を、2026年8月13日の中間決算でも据え置いています(修正なし)。

項目 2025年12月期(実績) 2026年12月期(会社予想) 増減率 上期実績の進捗率
売上高(百万円) 1,464 1,858 +26.9% 47.1%
営業損益(百万円) 60 ▲579 - 赤字幅の26.2%
経常損益(百万円) 62 ▲580 - -
当期純損益(百万円) 43 ▲546 - -
1株当たり当期純損益(円) 13.48 ▲170.12 - -

会社は、2026年12月期を「非連続な成長への転換点」と位置づけ、過去最大の成長投資(約9.84億円)を計画しています。主な内容は、人材採用、AI関連投資、広告宣伝の3つです(決算説明資料)。この計画額のうち、説明資料は、2026年第2四半期時点の推計で、通期の見込みを約8.79億円(計画の89.3%)としています。なお、AI関連の投資額は、決算説明資料では約3.1億円、第三者割当増資の開示(決算短信)では総額3.5億円と記載されており、両者の集計範囲は同じではないと見られます。

上期の実績を踏まえた、下期に必要な水準は次のとおりです(当レポートの計算)。

項目 2025年下期(実績) 2026年上期(実績) 2026年下期(予想から逆算)
売上高(百万円) 762 875 983(前年下期比+29.1%)
営業損益(百万円) 24 ▲152 ▲427(上期の約2.8倍の赤字)

※2025年下期は、2025年12月期の通期実績から2025年上期を引いた当レポートの概算です(営業損益は60-36=24百万円)。

会社の予想は、下期の売上が上期の伸び(+24.5%)より速い+29.1%で伸びる一方、営業赤字は上期の約2.8倍の約4.27億円に膨らむというものです。決算説明資料は、「ストック収益が中心のため、売上は後半にかけて積み上がる計画」「利益計画については、第3四半期以降に積極的な投資実行がされる見込みで、各プロジェクトが始動」と説明しています。上期の営業赤字(1.52億円)は、通期予想の赤字幅(5.79億円)の約26%で、投資は下期に集中する計画です。

キャッシュフローと財務の状態

項目 2025年12月期 2026年上期
営業活動によるCF(億円) 0.79 ▲1.30
投資活動によるCF(億円) ▲0.63 ▲0.51
財務活動によるCF(億円) ▲0.04 ▲0.15
現金及び現金同等物の期末残高(億円) 9.85 7.88

2026年上期は、営業活動で1.30億円の資金が出ていき、投資活動(主に本社の増床・移転に伴う設備の取得、0.40億円)で0.51億円を使い、現金は9.85億円から7.88億円へ、1.96億円減りました。2026年6月末の自己資本比率は77.6%で、借入金は短期借入金の0.30億円だけです(2026年6月末)。したがって、簡易的なネットキャッシュ(現金から借入金を引いた額)は約7.58億円です(当レポートの計算)。継続企業の前提に関する注記はありません。

決算短信の重要な後発事象として、2026年7月6日に、第三者割当増資(発行価額710円、140,000株、手取り約0.98億円)の払込みが完了しています。この資金は、「カイクラ」への生成AI関連機能(AI電話、AIチャットなど)の実装費用に、2026年7月~12月に使う予定です(詳しくは「成長戦略・将来性」を参照)。

年末の現金の水準の参考計算:下期の営業赤字(約4.27億円)がそのまま営業キャッシュフローの赤字になり、投資キャッシュフローが上期並み(約▲0.5億円)で、増資の手取り(約0.98億円)が入ると仮定すると、2026年12月末の現金は、約4億円台になります(7.88億円-4.27億円-0.51億円+0.98億円=約4.07億円、当レポートの参考計算)。実際は、運転資本の動きや新株予約権の行使による払込みなどで変わります。2027年12月期の会社計画は営業利益0.10億円(ほぼ収支均衡)ですが、この計画の達成が、資金面の余裕を左右します。

成長戦略・将来性

会社は、2030年12月期を最終年度とする長期ビジョン「Thinca VISION 2030」で、売上高65億円以上、営業利益15億円以上、PER15倍以上を掲げ、「顧客価値拡大と将来キャッシュフローの積み上げの結果として、時価総額100億円を早期に達成させる」としています(決算説明資料)。「コミュニケーション・シンギュラリティ構想」として、顧客企業の対話の課題をAIで加速して解決することを目指しています。

中期の業績計画は、次のとおりです(決算説明資料)。

項目 2025年12月期(実績) 2026年12月期(予想) 2027年12月期 2028年12月期 2029年12月期 2030年12月期
売上高(百万円) 1,464 1,858 2,600 3,500 5,000 6,500
営業利益(百万円) 60 ▲579 10 415 900 1,500
売上高の前年比(当レポートの計算) +18.8% +26.9% +39.9% +34.6% +42.9% +30.0%

※2027年12月期以降は会社の計画です。前年比は、当レポートの計算です。

この計画の売上は、2025年から2030年の5年間で約4.4倍、年平均で約35%の成長が必要です(当レポートの計算)。参考として、2026年上期の売上の伸びは+24.5%、ARR(ストック売上の年間換算)の伸びは+20.2%です。この計画を達成するには、現在の伸びより速い成長が必要になることを意味します。会社は、成長の追加要素として、既存顧客への追加提案(アップセル・クロスセル)と、新しい販売チャネルの拡大、M&A(企業買収)を挙げています。

成長のための主な重点戦略は、次のとおりです。

  • 顧客開拓のスピードアップ:セールス・マーケティングへの先行投資と、販売パートナーの活用です。2026年上期に人員は75名から93名に増えました。決算説明資料は、SB C&S社の全国の代理店網を通じた販売の強化(展示会への出展、共催ウェビナー、全国の代理店への紹介、SB C&S社への週1回の常駐)を、下期の準備として挙げています。10月以降は、全国8都市の展示会に出展する予定です。
  • アップセル・クロスセルによる顧客単価の向上:AI機能を有償オプション化して、ARPU(1社あたりの月間売上)を引き上げる方針です。「AI業務日報機能」「AIチャット機能」「AI対面録音機能」などをリリースし、アップセル専任のチームを拡充して、既存顧客から有償オプションの受注も始まっている、と説明しています。
  • AI投資:会社は「AIを使う会社から、つくる会社へ」を掲げています。2026年3月に業務提携を発表し、6月に資本業務提携へ進めた、AI開発会社の株式会社フィックスターズ(Fixstarsグループの株式会社Fixstars Investmentへの第三者割当増資、発行価額710円、140,000株、払込金額の総額は約0.99億円)と、AIの共同開発を進めます。会社は、短期は「AI機能の毎月のリリースと有償オプション化」、中長期は「独自のAIエンジンの開発」と整理しています。
  • 新規ビジネス:「カイクラフォン」(クラウド電話)、AI受託開発、AIコンサルティングの3つで、専任の販売体制を作り、立ち上げ直後から3領域すべてで受注を獲得した、と説明しています(金額は開示されていません)。
  • 法改正への対応:2026年6月に改正保険業法が施行され、10月にはカスタマーハラスメント(顧客からの迷惑行為)対策が企業の義務になる中、通話をAIで判定する「クレーム・カスハラ判定」などの機能で、規制対応のニーズを取り込む方針です。

会社は、当社サービスが「AIで簡単に模倣できない理由」として、固定電話の会話データを取得するためのハードウェア(カイクラアダプター)が必要で、一般的なAIが学習できる「Web・テキストデータ」だけでは再現できないことを挙げています。一方で、有価証券報告書のリスク情報では、生成AIの進展で類似機能のサービスが比較的容易に開発される可能性(発生可能性は「中」、影響度は「大」)も挙げており、AIは、追い風と競争の両面がある領域と位置づけられています。

自動車業界での導入の広がりも、成長の材料です。2026年6月末の導入状況は、次のとおりです(決算説明資料、会社の集計)。

自動車メーカー系列 導入社数シェア 導入拠点シェア 対象拠点数(概数)
トヨタ 18.8% 8.0% 約4,900
ホンダ 27.6% 46.3% 約2,400
ダイハツ 53.4% 36.0% 約800

トヨタ系列は、拠点数が最も多い一方で、導入拠点シェアは8.0%と低く、今後の伸びしろ(白地)が大きいと会社は位置づけていると読み取れます(当レポートの解釈)。2025年12月末からの導入拠点シェアの伸びは、トヨタで+1.6ポイント、ホンダで+4.0ポイント、ダイハツで+0.6ポイントです。

株主還元

シンカは、現時点で配当を実施していません。2025年12月期の配当は無配で、2026年12月期の配当予想も0円です。有価証券報告書は、配当について、「経営成績、財政状態、事業計画の達成状況等を勘案しながら、株主への利益配当を検討していく方針」と記載しています。配当の開始時期や、配当性向などの数値目標は示されていません。

自己株式の取得もありません(自己株式は0株)。役員や従業員に対しては、新株予約権と、譲渡制限付株式報酬(2026年上期に、取締役2名と執行役員3名に、発行価格1,301円で発行)による報酬制度があります。

株主優待の制度は、有価証券報告書、決算短信には記載がありません。

ガバナンス・リスク

ガバナンス

創業者の江尻高宏氏が、代表取締役社長として、取締役会の議長を務めています。2025年12月期の取締役会は、取締役5名(うち社外取締役3名)で構成され、年18回開催されました。出席率は、就任中の期間で全員が100%です。2026年3月の定時株主総会で、取締役は4名(うち社外取締役2名)となる予定でした(有価証券報告書提出時点の議案)。2026年6月の決算説明資料の会社概要では、代表取締役の江尻氏、取締役の笹田直紀氏(CTO)、社外取締役の阿久津聡氏と田邉愛氏の4名が記載されています。

監査役会は、常勤監査役1名と非常勤監査役2名の3名で構成されています。会社は、執行役員制度(4名の執行役員、CPO、CFOを含む)を導入しています。役員報酬は、取締役(社外を除く3名)が総額約4,479万円、社外役員(7名)が約2,258万円で、いずれも固定報酬です。業績連動報酬と退職慰労金はありません。

リスク

有価証券報告書は、26項目のリスクを記載しています。特に重要と考えられるものは、次のとおりです。

  • 競合と生成AI:同様の機能を提供する競合他社や、新規参入、生成AIによる類似サービスの開発が、競争環境を変える可能性があります(発生可能性は「中」、影響度は「大」)。2025年1月に、固定電話の番号のままクラウド電話に切り替えられる「双方向番号ポータビリティ制度」が導入されたことも、競争優位性が変化する可能性として挙げられています。
  • 特定のサービスと特定の人物への依存:売上高は、すべて「カイクラ」によるものです。また、創業者の江尻高宏氏が、経営方針や事業戦略の決定に極めて重要な役割を果たしています。
  • 新株予約権による希薄化:2025年12月末時点で、付与済みの新株予約権は283,680株で、発行済株式総数に対して8.8%です。行使されると、既存株主の持分が薄まります。
  • ベンチャーキャピタルの保有割合:2025年12月末時点で、ベンチャーキャピタルが組成した投資事業組合が、発行済株式の31.3%(1,002,220株)を保有しています。これらの株式が売却されると、短期的に株価が下がる可能性があると、会社自身が記載しています。
  • 販売パートナーへの依存:販売パートナーの事業方針の変更や、手数料の引き上げなどが、収益性に影響する可能性があります。
  • アダプターの設置と確保:拠点への設置工事の遅れや、アダプターの調達が計画どおりに進まないと、収益の認識が遅れます。

これらに加えて、当レポートの読み取りとして、次の点にも注意が必要です(いずれも当レポートの整理です)。

1. 計画の達成に必要な成長ペースが、現在の伸びより高い

中期計画の売上は、2027年12月期が+39.9%、2028年12月期が+34.6%、2029年12月期が+42.9%です。現在の伸び(上期の売上+24.5%、ARR+20.2%)を大きく上回っており、新規の営業チャネル(SB C&Sなど)とAIの有償オプション、新規ビジネスの貢献が、どこまで数字に表れるかが問われます。

2. 営業赤字の拡大と、現金の減少

下期の営業赤字は、予想から逆算すると約4.27億円で、上期(1.52億円)の約2.8倍です。手元資金は、2026年6月末の約7.88億円から、年末には約4億円台になると試算されます(前述の参考計算)。借入金はほとんどなく、財務の余裕は大きい一方、投資の効果が出る前に、資金が細る局面があります。

3. 上期の営業赤字が、計画の範囲内かどうかは、下期を見ないと判断できない

上期の営業赤字(▲1.52億円)は、通期予想(▲5.79億円)の約26%で、計画より小さい赤字です。ただし、会社は、投資が第3四半期以降に集中すると説明しています。上期の進捗が「順調」なのか、「投資の遅れ」なのかは、下期の費用の出方を見て判断する必要があります。

4. 中間決算短信は、監査法人のレビューを受けていない

決算短信には、「第2四半期(中間期)決算短信は公認会計士又は監査法人のレビューの対象外です」と記載されています。なお、半期報告書の中間財務諸表は、太陽有限責任監査法人による期中レビューを受けています。

株主構成・株価情報

大株主の状況(2026年6月30日現在)

株主名 所有株式数 持株比率
INTERACTIVE BROKERS LLC(常任代理人:インタラクティブ・ブローカーズ証券) 557千株 17.03%
江尻 高宏(代表取締役社長) 403千株 12.33%
DCIベンチャー成長支援投資事業有限責任組合 289千株 8.85%
株式会社ナンディ(江尻氏の資産管理会社) 280千株 8.55%
株式会社TKP 156千株 4.76%
光通信KK投資事業有限責任組合 129千株 3.95%
NVCC8号投資事業有限責任組合 116千株 3.54%
GMO Optical Investment株式会社 61千株 1.87%
モルガン・スタンレーMUFG証券株式会社 52千株 1.60%
スターティアテクノス株式会社 50千株 1.53%
上位10名の合計 2,096千株 64.02%

※持株比率は、発行済株式(自己株式を除く)の総数に対する割合で、半期報告書の記載です。ナンディが江尻氏の資産管理会社であることは、有価証券報告書の役員の所有株式数に関する注記によります。江尻氏本人とナンディの合計は、約20.9%です(当レポートの計算)。

2025年12月末(有価証券報告書)と比べると、INTERACTIVE BROKERS LLCの持株比率は20.92%から17.03%に低下し、2025年12月末に7.79%を保有していた「SBI AI&Blockchain投資事業有限責任組合」は、2026年6月末の上位10名から外れています。一方、株式会社TKP(4.76%)とGMO Optical Investment株式会社(1.87%)が新たに上位に入りました。

所有者別の状況(2025年12月末)は、個人その他が57.2%、外国法人等(個人以外)が21.9%、その他の法人が16.4%、金融機関が0.0%(8単元)、金融商品取引業者が4.5%です。株主数は973人です。

株式の情報は次のとおりです。

  • 発行済株式総数:3,414,620株(2026年8月13日現在。2026年6月末は3,274,620株)
  • 単元株数:100株
  • 株式分割:2023年10月25日付で、1株を40株に分割しました。
  • 上場:2024年3月27日、東京証券取引所グロース市場
  • 2026年7月6日の第三者割当増資:140,000株を発行し、発行済株式数の約4.1%にあたります(当レポートの計算)。

株価と投資指標

2026年9月18日の終値806円での指標です。この株価は、2026年8月13日の中間決算の発表後の水準です。年初来高値・安値はYahoo!ファイナンスの掲載値(2026年8月10日時点)です。株価の変動により、数値は変わります。

項目 数値
株価(2026年9月18日終値) 806円
時価総額 約27.52億円(2026年8月13日現在の発行済株式数3,414,620株)
PER(会社予想) 算出不可(2026年12月期は赤字予想、EPS ▲170.12円)
PER(2025年12月期の実績EPS 13.48円) 約59.8倍
PBR(2025年12月末BPS 326.69円) 約2.47倍
PBR(2026年6月末BPS 286.01円) 約2.82倍
配当利回り 0.00%(無配)
年初来高値/安値 1,774円(2026年3月30日)/672円(2026年3月9日)
出来高(2026年9月18日) 2,200株(約177万円)
最低購入額 約8.1万円(100株)

※PERは「株価÷1株当たり純利益(EPS)」、PBRは「株価÷1株当たり純資産(BPS)」です。2026年6月末のBPSは、純資産9.37億円を、2026年6月末の発行済株式数(3,274,620株)で割った当レポートの計算で、2026年7月の増資(手取り約0.98億円)は含んでいません。増資後の純資産(約10.35億円)を、増資後の株式数(3,414,620株)で割ると、BPSは約303円、PBRは約2.66倍です(当レポートの参考計算)。出来高の金額は、当レポートの計算です。

参考指標:

  • 売上高に対する倍率:時価総額は、2026年12月期の会社予想売上(18.58億円)の約1.48倍、2025年12月期の実績売上(14.64億円)の約1.88倍です(当レポートの計算)。
  • ARRに対する倍率:時価総額は、2026年6月末のARR(約15.2億円)の約1.81倍です。増資の手取りと6月末の簡易ネットキャッシュ(約7.58億円)を差し引いた「実質的な企業価値」は、約19.0億円で、ARRの約1.25倍です(当レポートの参考計算)。
  • 長期ビジョンとの比較:会社が「早期に達成」を掲げる時価総額100億円は、現在の時価総額(約27.5億円)の約3.6倍です(当レポートの計算)。
  • 年初来高値との比較:2026年3月27日に、フィックスターズとの業務提携が発表されており(決算短信の記載)、年初来高値は、その直後の3月30日です。現在の806円は、高値の約55%下、安値の約20%上の水準です(当レポートの計算)。株価が3月に急上昇し、その後に下がった理由は、開示資料からは分かりません。なお、2026年6月の第三者割当増資の発行価額(710円)に対して、現在の株価は約14%高い水準です(当レポートの計算)。
  • 流動性:2026年9月18日の出来高は2,200株(約177万円)で、売買代金が小さく、流動性(売買のしやすさ)が低い点に注意が必要です。

PER(赤字予想のため算出不可)、PBRが約2.5~2.8倍、時価総額のARR倍率が約1.8倍という数字は、営業赤字を計画する成長投資の期間で、利益ベースの倍率が使いにくい会社であることを踏まえて見る必要があります。同業他社との比較データがないため、割高・割安の判断は本レポートでは行いません。業界内での位置づけは、他社のデータとの比較が必要です。

まとめ

シンカは、固定電話などの会話を一元管理するクラウドサービス「カイクラ」を提供し、売上の約9割がストック売上という収益基盤を持つ会社です。2026年上期は、売上が過去最高の8.75億円(+24.5%)、顧客数3,366社(+11.5%)、拠点数6,619拠点(+11.4%)、ARR約15.2億円(+20.2%)、月次解約率0.35%と、事業のKPIは順調に伸びています。

一方で、見ておきたい点もあります。

  • 営業赤字の計画:2026年上期は営業損益が▲1.52億円(前年同期は+0.36億円)で、通期の会社予想は▲5.79億円です。下期に約4.27億円の赤字(上期の約2.8倍)が必要で、投資が第3四半期以降に集中する計画です。
  • 販売費及び一般管理費の増加:上期は+55.7%で、売上総利益の伸び(+19.9%)を大きく上回りました。売上総利益率も、82.9%から79.9%へ下がっています。
  • 中期計画のハードル:売上は、2027年12月期に+39.9%、2030年12月期まで年平均約35%の成長が必要です(現在の伸びは+24.5%)。営業利益は、2027年12月期に0.10億円、2030年12月期に15億円の計画です。
  • 資金の減少:上期の営業キャッシュフローは▲1.30億円で、現金は7.88億円まで減りました。年末には約4億円台になる試算です。借入金はほとんどなく、自己資本比率は77.6%と高い水準です。
  • 希薄化と株式の需給:新株予約権による潜在株式は、2025年12月末で8.8%、2026年7月の第三者割当増資は約4.1%です。ベンチャーキャピタルが約31%を保有し、出来高も小さい状況です。
  • 無配:配当の開始時期や数値目標は示されていません。

今後のチェックポイントとして、次の3点が挙げられます。

  • 下期の売上(約9.83億円、前年同期比+29.1%)と、営業赤字の幅(約4.27億円)が、計画どおりに進むか。特に、第3四半期の営業損益と、販売費及び一般管理費の増え方です。
  • ARPU(顧客単価)と月次解約率が、AIの有償オプション化で、どこまで改善するか。SB C&Sなどの販売パートナー経由の受注が、KPI(顧客数、拠点数)に表れるか。
  • 手元資金(2026年6月末7.88億円)の推移と、2027年12月期の営業利益(会社計画は0.10億円)の見通し。

本レポートは、企業の開示資料(有価証券報告書、半期報告書、決算短信、決算説明資料)に基づく情報整理であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資の最終判断は、ご自身の責任で行ってください。

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