【1491】中外鉱業

2026/09/21

企業分析

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企業概要

中外鉱業株式会社(証券コード:1491、東京証券取引所スタンダード市場)は、金・プラチナなどの貴金属のリサイクル(スクラップから地金を再生する事業)と販売を中心に、中古工作機械の販売、キャラクターグッズなどのコンテンツ事業を手がける会社です。1932年に金鉱山の開発を目的として創立され、1949年に東京証券取引所に上場した歴史の長い会社で、本社は東京都千代田区丸の内にあります。かつては鉱山会社でしたが、現在の稼ぎ頭は鉱山ではなく、リサイクル原料から金・プラチナの地金を取り出し、販売する事業です。代表取締役社長は西元丈夫氏です。

決算期は3月で、連結(子会社を含めたグループ全体)の決算を開示しています。連結子会社は中古工作機械を扱う株式会社インテックスの1社で、ほかに3社の非連結子会社(小規模なため連結に含めていない会社)があります。従業員は連結で163名(2026年3月末、臨時雇用の平均人員は別に54名)、提出会社(中外鉱業単体)は150名で、平均年齢は36.0歳、平均年間給与は約605万円です。

事業は3つの報告セグメント(会社が業績を分けて開示する事業区分)と、不動産・投資などを集めた「その他」で構成されています。2026年3月期の売上高2,816.92億円の内訳は次のとおりです(構成比、利益構成比は当レポートの計算です)。

セグメント 主な内容 売上高(億円) 売上構成比 セグメント利益(億円)
貴金属事業 貴金属地金の生産・販売、含金銀非鉄金属の仕入販売、宝飾品・ダイヤモンドの販売 2,781.51 98.7% 28.09
機械事業 中古工作機械・鈑金機械の仕入・販売(インテックス) 7.38 0.3% 0.21
コンテンツ事業 玩具・キャラクターグッズの企画・販売、複合カフェの運営 27.79 1.0% 2.17
その他 不動産、投資、太陽光発電の売電収入など 0.25 0.0% ▲0.70

※セグメント利益の合計(3つの報告セグメントで30.47億円)から、どのセグメントにも配分しない全社費用(5.31億円)とその他(▲0.70億円)を引いたものが、連結の営業利益(24.46億円)です。

貴金属事業が、売上の約99%、報告セグメントの利益の約92%(当レポートの計算)を占めています。会社が公表している生産体制は、東京工場(東京都大田区)で金地金が月産800キログラム、プラチナが月産50キログラムです。全国に9店舗の営業拠点があり、貴金属のスクラップ(使用済みの宝飾品や工業製品などのリサイクル原料)を買い取り、精製して地金にして販売します。有価証券報告書に記載された主要な販売先は、三菱商事RtMジャパン株式会社、アサヒプリテック株式会社などです。

ここで押さえておきたいのは、売上高の大きさは、金などの相場の水準に大きく左右されるという点です。貴金属地金は、市況で価格が決まる商品です。売上高が2,800億円を超えていても、営業利益は24.46億円で、営業利益率は約0.87%にとどまります(当レポートの計算)。売上が大きい分、金価格が数%動くだけで、利益の水準が変わりうる構造です。

機械事業は、中古の工作機械(金属を削る機械など)を仕入れて販売する事業で、会社は「中古工作機械業界ではトップクラスの地位」と説明しています。コンテンツ事業は、アニメなどの人気タイトルのグッズ企画・販売と、コンセプトカフェなどの運営です。前期(2025年3月期)はセグメント利益が8.65億円と、貴金属事業(10.43億円)に近い規模の稼ぎ頭でしたが、当期は2.17億円に減りました。

業績・財務情報

直近5年間の業績(3月期・連結)

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高(億円) 515.90 848.23 1,137.59 1,623.45 2,816.92
経常利益(億円) 5.09 6.49 2.52 12.38 22.90
親会社株主に帰属する当期純利益(億円) 5.47 3.98 2.19 12.19 15.14
1株当たり当期純利益(円) 37.88 27.64 15.17 84.57 105.14
1株当たり純資産(円) 490.41 498.05 493.22 567.80 651.86
自己資本比率 71.9% 66.7% 58.6% 49.5% 53.3%
ROE(自己資本利益率) 8.0% 5.6% 3.1% 15.9% 17.3%
営業活動によるCF(億円) 3.57 ▲11.22 4.91 8.40 26.01
1株当たり配当(円・併合後換算) 20 10 10 30 34

※億円表記は千円単位の実数を小数第3位で四捨五入したものです。2025年10月1日に普通株式20株を1株にする株式併合(株数をまとめて、1株あたりの価値を高める手続き)を行っており、1株当たり指標は、有価証券報告書が併合を反映して算出した数値です。1株当たり配当は、併合前の金額(1.00円、0.50円、0.50円、1.50円)を20倍した当レポートの換算で、2026年3月期は期末配当の予定額です。換算しているのは1株当たりの金額だけで、実際に支払われた配当金の総額は変わりません(換算後の配当性向は、有価証券報告書記載の配当性向と一致します)。有価証券報告書の「主要な経営指標等の推移」の表には営業利益の欄がないため、5期分の比較は経常利益で示し、営業利益は直近2期分を連結損益計算書から引用しています。ROEは、株主の出資分(自己資本)に対して1年間でどれだけ利益が出たかを示す指標で、一般に10%を超えると高い水準とされます。

売上高は、4年間(2022年3月期→2026年3月期)で約5.5倍になりました(当レポートの計算)。経常利益も、2024年3月期の2.52億円を底に、2年間で約9倍(22.90億円)に伸びています。ただし、上で見たとおり売上高は金などの相場の影響を受けるため、売上の伸びの全部が「事業の規模拡大」を意味するとは限りません。会社は、2026年3月期について「金相場が上昇基調で推移し、リサイクル原料の集荷量が堅調であったことにより工場稼働率が高水準を維持した」と説明しています。

自己資本比率は、2022年3月期の71.9%から2025年3月期の49.5%へ低下し、2026年3月期は53.3%に戻りました。借入と、お客様から先に受け取る「前受金」で在庫を増やした年に、比率が下がっています(後述)。

2026年3月期(第134期)の内訳

項目 2025年3月期 2026年3月期 増減率
売上高(百万円) 162,345 281,692 +73.5%
売上総利益(百万円) 3,925 5,080 +29.4%
(売上総利益率) 2.42% 1.80% ▲0.62ポイント
販売費及び一般管理費(百万円) 2,507 2,634 +5.1%
営業利益(百万円) 1,418 2,446 +72.5%
(営業利益率) 0.87% 0.87% ±0.00ポイント
経常利益(百万円) 1,238 2,290 +84.9%
法人税等(百万円) 20 772 -
(税引前利益に対する税負担率) 1.6% 33.8% -
親会社株主に帰属する当期純利益(百万円) 1,219 1,514 +24.2%

※売上総利益率、営業利益率、税負担率、売上総利益と販管費の増減率は、当レポートの計算です。

売上高は+73.5%、営業利益は+72.5%と、ほぼ同じ率で伸びました。営業利益率は、2年連続で0.87%前後と変わりません。利益が増えた理由は、「1円あたりの利益率が上がった」ことではなく、「売上の規模が大きくなった」ことです。売上総利益率はむしろ2.42%から1.80%へ下がっています。販管費の増加(+5.1%)が売上の伸びより小さかったため、営業利益が伸びています。

セグメント別のセグメント利益は次のとおりです。

セグメント 2025年3月期(百万円) 2026年3月期(百万円) 増減
貴金属事業 1,043 2,809 +1,765
機械事業 25 21 ▲4
コンテンツ事業 865 217 ▲648
報告セグメント計 1,933 3,047 +1,113
その他 ▲33 ▲70 ▲37
全社費用 ▲482 ▲531 ▲49
営業利益 1,418 2,446 +1,028

貴金属事業のセグメント利益が+17.65億円増えた一方で、コンテンツ事業は▲6.48億円減っています。会社は、コンテンツ事業について、委託販売先での売上が落ち込んだと説明しています(売上高は38.56億円から27.79億円へ▲27.9%)。前期は貴金属とコンテンツの2本足だった利益が、当期は貴金属への依存が強まったことになります。

この決算では、次の3点に注意して読む必要があります。

1. 税負担が前期の1.6%から33.8%に上がり、純利益の伸び(+24.2%)が営業利益の伸び(+72.5%)を大きく下回った

法人税等(法人税、住民税及び事業税と、法人税等調整額の合計)は、前期の0.20億円から当期の7.72億円へ増えました。前期は税引前利益に対する税負担率が1.6%と極めて低く、当期は33.8%と標準的な水準になっています。有価証券報告書の税効果の注記では、税務上の繰越欠損金(過去の赤字を将来の黒字から差し引ける制度)に対応する繰延税金資産の3.23億円は、全額が「評価性引当額」(将来の税金の軽減効果を見込まない処理)とされています。前期は税負担が軽かった分、純利益が大きく見え、当期は税金が普通にかかったため、営業利益ほどには純利益が伸びなかった、という見方ができます(当レポートの解釈)。1株当たり当期純利益(EPS)の伸びは+24.3%(84.57円→105.14円)で、ROEは15.9%から17.3%に上がっています。

2. 棚卸資産評価損が、前期の約0.26億円から当期の約2.46億円に増えた

棚卸資産評価損とは、在庫の市場価格が下がったときに、帳簿上の在庫の金額を切り下げる損失で、売上原価に含まれます。有価証券報告書によると、この金額は前期の26,048千円から、当期は245,983千円になっています。当期の営業利益(24.46億円)の約1割にあたる規模です(当レポートの計算)。在庫を大きく持つ商売なので、相場が下がる局面では、この評価損が利益を押し下げる構造です。次に見る2027年3月期の第1四半期は、まさにこの影響が大きく出ました。

3. 営業外費用に、休止した鉱山の管理費(休山管理費)が毎年計上されている

経常利益は営業利益より小さく、営業外損益の合計は▲1.56億円です(営業外収益0.31億円-営業外費用1.87億円)。営業外費用の中心は、休山管理費(0.93億円、前期は1.21億円)と支払利息(0.43億円、前期0.20億円)です。休山管理費は、かつての鉱山の坑廃水の処理などの費用と考えられますが、有価証券報告書に内訳の詳細はありません。事業とは別に、毎年約1億円前後の費用がかかり続けている点は、覚えておきたいところです。

2027年3月期 第1四半期(4~6月)の状況

項目 2026年3月期1Q 2027年3月期1Q 増減
売上高(百万円) 57,834 74,289 +28.5%
売上総利益(百万円) 792 129 ▲83.8%
(売上総利益率) 1.37% 0.17% ▲1.20ポイント
販売費及び一般管理費(百万円) 593 654 +10.4%
営業損益(百万円) 199 ▲526 -
経常損益(百万円) 162 ▲551 -
親会社株主に帰属する四半期純損益(百万円) 160 ▲555 -
1株当たり四半期純損益(円) 0.55 ▲38.66 -

※前年同期のEPS(0.55円)は、株式併合を反映した数値です。売上総利益率と増減率は、当レポートの計算です。

第1四半期は、売上高が+28.5%と増えた一方、営業損益は5.26億円の赤字(前年同期は1.99億円の黒字)となりました。売上総利益は7.92億円から1.29億円へ大きく減り、売上総利益率は0.17%まで下がっています。会社は、「金・プラチナ価格は下落基調で推移した」ことを挙げ、貴金属事業とコンテンツ事業で棚卸資産評価損を計上したことが業績を押し下げたと説明しています。評価損は減益の主な要因として挙げられていますが、その金額は決算短信に記載がなく、影響の大きさは確認できません。

セグメント別の営業損益は次のとおりです。

セグメント 売上高(百万円) 営業損益(百万円) 前年同期
貴金属事業 73,532 ▲344 +170
機械事業 210 +5 +4
コンテンツ事業 534 ▲2 +171
その他 20 ▲44 ▲5
全社費用(調整額) - ▲140 ▲142
営業損益 74,289 ▲526 +199

営業損益の悪化幅(▲7.25億円)のうち、貴金属事業が▲5.15億円、コンテンツ事業が▲1.73億円、その他が▲0.40億円です(当レポートの計算)。全社費用(主に報告セグメントに帰属しない一般管理費)は、ほぼ横ばいです。

第1四半期末の貸借対照表(2026年6月30日)は、2026年3月末と比べて大きく変わっています。

項目 2026年3月末(百万円) 2026年6月末(百万円) 増減
現金及び預金 6,300 3,354 ▲2,946
商品及び製品 3,160 4,154 +994
原材料及び貯蔵品 1,466 3,936 +2,470
前受金(お客様から先に受け取った代金) 1,723 3,671 +1,948
短期借入金 1,650 2,258 +608
未払法人税等 733 4 ▲730
純資産 9,367 8,320 ▲1,047
自己資本比率 53.3% 44.4% ▲8.9ポイント
1株当たり純資産(円) 651.86 579.13 ▲72.73

現金が29.5億円減った一方、在庫(原材料と商品・製品の合計)は34.6億円増えました(当レポートの計算)。前受金の増加(19.5億円)と、短期借入金の増加(6.1億円)が、在庫の積み増しを支えています。また、未払法人税等が7.3億円減っていることから、前期分の税金の支払いが、この四半期に出ていったとみられます(当レポートの推定)。純資産の減少(▲10.5億円)は、四半期純損失(5.55億円)と、期末配当(4.89億円)の分の利益剰余金の減少によるものです。

通期予想に対する進捗

会社は、2026年8月14日の第1四半期決算短信で、第2四半期(中間期)と通期の業績予想を修正しています。

項目 2026年3月期(実績) 2027年3月期 第2四半期累計(予想) 2027年3月期 通期(予想)
売上高(億円) 2,816.92 1,460(前年同期比+29.5%) 3,000(+6.5%)
営業利益(億円) 24.46 2.60(▲67.4%) 17.70(▲27.6%)
経常利益(億円) 22.90 2.00(▲72.3%) 16.00(▲30.1%)
親会社株主に帰属する当期純利益(億円) 15.14 0.10(▲98.6%) 10.00(▲33.9%)
1株当たり当期純利益(円) 105.14 0.70 69.46

会社予想は、通期で減収ではなく増収(+6.5%)ながら、営業利益は▲27.6%の減益です。売上高は相場に左右されるため、営業利益率は、2026年3月期の0.87%から、約0.59%(17.70億円÷3,000億円、当レポートの計算)に下がる計画です。

第1四半期の実績を踏まえた、残りの期間に必要な水準は次のとおりです(当レポートの計算)。

項目 第1四半期実績 中間期予想に必要な第2四半期 通期予想に必要な第2~4四半期
売上高(億円) 742.89 717.11(前年の第2四半期は約549.14、約+30.6%) 2,257.11
営業利益(億円) ▲5.26 7.86 22.96
経常利益(億円) ▲5.51 7.51 21.51
当期純利益(億円) ▲5.55 5.65 15.55

第1四半期の営業赤字(▲5.26億円)を取り戻すには、第2四半期(7~9月)の1四半期だけで、営業利益7.86億円が必要です。前年の第2四半期の営業利益は、前年の中間期営業利益(2.60億円が前年同期比▲67.4%であることから逆算した約7.98億円)から第1四半期(1.99億円)を引いた約6.0億円と見られ、それを上回る水準です(概算)。また、通期予想を達成するには、第2~4四半期の9か月で営業利益約22.96億円が必要です。前年の同じ9か月(第2~4四半期)の営業利益は約22.46億円(24.46億円-1.99億円)で、前年並みかやや上回る水準を要する計算になります。

中間期の予想では、経常利益2.00億円に対して、純利益は0.10億円しかありません。これは、第1四半期の赤字には税金の軽減効果が計上されておらず(第1四半期の法人税等は、税引前損失に対して0.04億円のプラスです)、第2四半期の黒字には税金がかかる前提であるためと考えられます(当レポートの解釈)。通期では、経常利益16.00億円に対して純利益10.00億円で、税負担率は約37.5%(当レポートの計算)です。

キャッシュフローと財務の状態

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業活動によるCF(億円) 8.40 26.01
投資活動によるCF(億円) ▲5.43 ▲10.60
財務活動によるCF(億円) 5.64 6.18
現金及び現金同等物の期末残高(億円) 41.41 63.00
有利子負債(借入金、億円) 約27.7 約37.0

2026年3月期の営業CFは26.01億円でした。営業CFと投資CFを合わせたフリーキャッシュフロー(自由に使えるお金)は約15.41億円(当レポートの計算)です。営業CFの内訳を見ると、税引前利益22.86億円のほかに、運転資本(売掛金、在庫、買掛金、前受金の増減の合計)が約4.14億円のプラスでした。内訳は、在庫の減少(+17.79億円)、買掛金の増加(+11.67億円)、売掛金の減少(+3.34億円)、前受金の減少(▲28.67億円)で、個別の項目は大きく動いていても、合計では大きなズレは出ていません(当レポートの計算)。

ただし、この会社のキャッシュは、前受金(お客様から先に受け取った代金)の大きな増減で、期中の残高が大きく変動する点に注意が必要です。前期は前受金が24.63億円増え、当期は28.67億円減っています。2026年3月末の現金63.00億円のうち、前受金の残高が17.23億円あり、これは今後、商品を引き渡すことで消える性質のお金です。現金から有利子負債(借入金約37.0億円)を引いた簡易的なネットキャッシュは約26.0億円、前受金の分(17.2億円)を差し引くと約8.8億円となります(当レポートの参考計算)。なお、一般的なネットキャッシュは「現金-有利子負債」で、前受金の控除は当レポート独自の調整です。前受金は、将来、商品を引き渡す義務を伴う負債の性質があり、手元の現金の一部が「自由に使えるお金」ではないことを示すために差し引いています。

第1四半期末(2026年6月末)は、現金33.54億円に対して、有利子負債が約42.88億円(短期借入金22.58億円、関係会社短期借入金0.50億円、長期借入金〔1年内返済分を含む〕19.80億円)となり、簡易的なネットキャッシュは▲9.34億円(借入超過)です(当レポートの計算)。なお、同じ時点の前受金は36.71億円です。

投資活動では、2026年3月期に設備投資として総額16.65億円を使い、建物及び構築物が前期の2.53億円から17.68億円へ増えました(前期末に9.72億円あった建設仮勘定が、完成して建物に振り替わったものと見られます)。有価証券報告書は、この設備投資を「貴金属事業の設備改修工事一式等を中心」と説明しています。また、米国ハワイ州の非連結子会社CHUGAI HAWAII LLC(不動産事業)に、3.80億円を出資しています。この出資は、関係会社出資金として貸借対照表に計上されています。

財務制限条項(お金を借りる際の約束事)にも触れておきます。有価証券報告書の「重要な契約等」によると、借入金の一部には、次の財務上の特約がついています。

  • 決算期末(第2四半期を含まない)の単体の純資産の部の金額を、前年同期比75%以上に維持すること。
  • 決算期(第2四半期を含まない)の単体の経常損益を、2期連続で損失にしないこと。

これに抵触して貸付人から請求があると、期限の利益(借りたお金を決められた期日まで返さなくてよい権利)を失います。2026年3月期の単体の純資産は93.70億円なので、その75%は約70.27億円です(当レポートの計算)。2026年6月末の連結純資産(83.20億円)は、この水準を約12.9億円上回っています。ただし、特約は単体の数値で判定され、判定の時点は決算期末(第2四半期を含まない)です。決算短信には単体の貸借対照表がないため、この比較は連結の数値による概算にすぎません(2026年3月期は、連結の純資産93.67億円と単体の93.70億円の差は0.03億円でした)。通期予想どおりなら、期末の純資産は、期首の93.67億円から配当4.89億円を引き、純利益10.00億円を足した、約98.8億円となる計算です。

成長戦略・将来性

有価証券報告書に記載された会社の経営方針は、「本業重視の経営」「株主重視の経営」「将来ビジョン」の3つです。中期経営計画の数値目標(売上高、利益、配当性向など)は、有価証券報告書には記載されていません。将来ビジョンとして、各事業部を分社化し、M&Aで買収する子会社も含めたホールディングカンパニー制を目指すとしています。

事業ごとに、会社が述べている方向性は次のとおりです。

  • 貴金属事業:金は「安全資産」としての需要が強まっているとし、プラチナは、水素社会への移行に伴う燃料電池や水電解装置の電極触媒(化学反応を助ける材料)としての長期的な需要拡大が見込まれるとしています。生産体制の強化、自社が運営するオークションの開催、営業活動による販路拡大で、収益力の強化を目指します。
  • 機械事業:半導体産業の設備投資、自動化、環境対応投資への底堅い需要を期待する一方で、内需は中小企業を中心に様子見が続いているとしています。仕入と販路の拡大、適正な在庫管理を進めます。
  • コンテンツ事業:「推し活」の市場拡大を背景に、自社ECサイトでのグッズ販売の強化、商業施設・アミューズメント施設・スポーツ施設・飲食チェーンとの協業、北米をはじめとした海外戦略の強化、人気タイトルとタイアップしたコンセプトカフェの運営を挙げています。

数字で見ると、貴金属事業の成長は、2026年3月期の売上+76.5%、セグメント利益+169%(約2.7倍)と、相場の追い風と集荷の堅調さを受けたものです。一方で、コンテンツ事業は、売上が▲27.9%、セグメント利益が▲75%と落ち込んでおり、事業ごとの方向性が、数字にはまだ表れていません。

会社の成長を考えるうえでは、次の点が、今後の見どころとなります(いずれも当レポートの整理であり、会社の説明ではありません)。

  • 相場に頼らない収益の柱をどこまで作れるか:売上の約99%を貴金属事業が占め、その利益は、地金の相場、原料の集荷量、在庫の評価に左右されます。コンテンツ事業の立て直しや、ハワイでの不動産事業などが、その分散になるかが焦点です。
  • 設備投資(16.65億円)の使い道と効果:本社の建物・土地の帳簿価額は26.24億円で、総資産の約15%を占めます。この投資が収益にどう結びつくかは、有価証券報告書からは読み取れません。
  • ハワイへの出資(3.80億円)の位置づけ:有価証券報告書は、CHUGAI HAWAII LLCを不動産事業と記載していますが、事業計画の詳細は開示されていません。

株主還元

項目 2025年3月期 2026年3月期 2027年3月期(予想)
1株当たり配当(円・併合後換算) 30 34 未定
配当性向 35.5% 32.3% -
配当金の総額(百万円) 288 489(予定) -

※2025年3月期の配当は、併合前の1.50円を20倍した当レポートの換算です。配当性向は、有価証券報告書の記載です。

配当は、2026年3月期の期末配当として34円(年間34円)を、2026年6月26日の定時株主総会の決議事項として予定していました(有価証券報告書提出時点)。前期の30円(併合後換算)から+13%の増配です。2026年3月期は中間配当を実施しておらず(第2四半期末は0円)、決算短信では2027年3月期の配当予想は「未定」とされています。参考として、34円を会社予想EPS(69.46円)で割ると、配当性向は約49%になります(当レポートの計算)。

配当方針は、「将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、安定した配当を継続して実施する」としています。配当性向などの数値目標は示されていません。年2回(中間・期末)の配当を基本とし、定款で、毎年9月30日を基準日とする中間配当ができると定められています。

自己株式の取得は、2026年3月期には、株式併合で生じた端数の買取りと、単元未満株式の買取りが中心です(取得の合計は約4万株、約0.4億円)。自己株式の保有数は、2026年3月末で117,723株(発行済株式の0.81%)です。株主還元の中心は配当で、まとまった規模の自社株買いは、この期間には行われていません。

ガバナンス・リスク

ガバナンス

取締役会は、2026年6月25日現在で取締役8名(うち社外取締役2名)で、議長は代表取締役社長の西元丈夫氏です。取締役会は原則として毎月開催し、当期は14回開催されました。取締役の出席率は、全員が100%です。監査役会は、常勤監査役1名と非常勤の社外監査役3名の計4名で構成されています。社外取締役2名は弁護士、社外監査役は弁護士2名と税理士1名で、5名全員が東京証券取引所の定める独立役員(一般株主と利益相反が生じるおそれのない役員)です。会計監査人への報酬は年2,800万円です。

役員の報酬は、取締役(社外を除く6名)が総額5,800万円、監査役(社外を除く1名)が1,500万円、社外役員(6名)が2,520万円で、全員が固定報酬です。業績連動報酬と退職慰労金はありません。取締役の報酬限度額は月額2,500万円以内です。

人的資本の指標としては、管理的地位にある労働者に占める女性の割合が23.3%(2030年3月までに30%程度が目標)、男性労働者の育児休業等取得率が100.0%です。

リスク

有価証券報告書に記載されている主なリスクは、次の4つです。

  • 製品等の価格変動:貴金属地金は国際市況商品であり、価格は国際商品市況と為替相場の影響を大きく受けます。ダイヤモンドなどの商品も同様です。
  • 金利動向の変動:不動産事業の購買者の需要が、金利の影響を受けます。
  • 法的規制:環境関連法令、鉱山保安法(休廃止鉱山の坑廃水の処理、堆積場の安全管理)、宅地建物取引業法などの規制があり、法改正で新たな設備投資や費用が発生する可能性があります。
  • 財務制限条項:借入金の一部に、純資産の下限などが定められています(前述)。

これらに加えて、当レポートの読み取りとして、次の点にも注意が必要です(いずれも当レポートの整理です)。

1. 販売先が2社に集中している

2026年3月期の売上のうち、三菱商事RtMジャパン株式会社が46.9%(1,320.86億円)、アサヒプリテック株式会社が40.9%(1,152.91億円)で、2社の合計は87.8%です(前期は47.6%と33.0%で合計80.6%)。ともに貴金属事業の販売先です。地金は市況商品で、売り先を切り替えやすい面もあると考えられますが、この2社との取引条件や関係に変化があれば、売上と在庫の回転に影響する可能性があります。

2. 利益率が薄く、在庫評価損の影響を受けやすい

営業利益率は約0.87%、売上総利益率は約1.8%で、売上総利益(50.80億円)の約5割が、販管費(26.34億円)で消える構造です(当レポートの計算)。この薄い利益のなかで、棚卸資産評価損が2.46億円あり、第1四半期は評価損の影響で営業赤字となりました。相場の下落局面では、評価損の負担が大きくなる可能性があります。

3. 在庫と前受金、借入で運転資本が大きく動く

第1四半期に在庫が34.6億円増え、前受金が19.5億円増え、短期借入金が6.1億円増えました。運転資本の動きが大きいと、期中のキャッシュと自己資本比率が、大きく上下します。財務制限条項がついた借入があるため、純資産の水準(前年同期比75%以上)を維持できるかも、継続的に見ておく必要があります。

4. 休止鉱山の管理費用が、毎年発生している

営業外費用の休山管理費は、当期0.93億円で、第1四半期も0.21億円でした。資産除去債務として、ダイオキシン類対策特別措置法に基づく既存設備の撤去費用2.19億円も計上されています。

5. 決算短信の第1四半期数値は、公認会計士等のレビューを受けていない

決算短信には、「四半期連結財務諸表に対する公認会計士又は監査法人によるレビュー:無」と記載されています。また、第1四半期の四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成されていません。

株主構成・株価情報

大株主の状況(2026年3月31日現在)

株主名 所有株式数 持株比率
有限会社マイネン 908,000株 6.32%
株式会社フェンテ 725,700株 5.05%
有限会社メティス 675,800株 4.70%
株式会社プレサージュ 609,300株 4.24%
有限会社ライデンシャフト 597,700株 4.16%
株式会社Collco 552,000株 3.84%
東京産業株式会社 509,800株 3.55%
BOOCSダイエット株式会社 503,700株 3.51%
株式会社ムーンズティア 494,700株 3.44%
有限会社プラフィット 490,600株 3.41%
上位10名の合計 6,067,900株 42.22%

※持株比率は、発行済株式(自己株式を除く)の総数に対する割合です。上位株主の会社について、有価証券報告書に、その実態や役員との関係の記載はありません。

所有者別の状況(2026年3月末)は、個人その他が48.05%、その他の法人が45.51%、外国法人等が5.02%(個人以外4.71%、個人0.31%)、金融商品取引業者(証券会社)が1.36%、金融機関が0.06%です。株主数は10,000人です。

最大の株主でも持株比率は6.32%で、親会社や支配株主にあたる株主は、上位に見当たりません。上位10名で42.22%と、株式は比較的分散しています。なお、代表取締役社長の所有株式数は2,428株にとどまります。大量保有報告書では、株式会社SBI証券が0.99%(143,200株)、楽天証券株式会社が0.77%(111,800株)を保有していると記載されていますが、有価証券報告書は、実質所有数が確認できないとして、株主名簿上の数値を記載しています。

株式の情報は次のとおりです。

  • 発行済株式総数:14,487,399株(うち自己株式121,583株、2026年6月末)
  • 単元株数:100株
  • 株式併合:2025年10月1日付で、普通株式20株を1株に併合しました。
  • 上場市場:東京証券取引所スタンダード市場(2022年4月に市場第二部から移行)
  • 最高・最低株価(2026年3月期、併合後):最高1,271円、最低697円(有価証券報告書の記載)。2025年10月の併合前の期間の株価は、併合前の水準(最高74円、最低44円)で記載されているため、併合後の株価とは比較できません。過去4期の株価は同様に併合前の数値のため、本レポートでは使用していません。

株価と投資指標

2026年9月18日の終値761円での指標です。予想EPSは会社予想(2027年3月期、69.46円)、BPSは実績(2026年3月末と2026年6月末)の値を使っています。株価の変動により、数値は変わります。

項目 数値
株価(2026年9月18日終値) 761円
時価総額 約109.3億円(自己株式を除く発行済株式14,365,816株)
PER(会社予想) 約11.0倍(2027年3月期の予想EPS 69.46円)
PER(実績) 約7.2倍(2026年3月期のEPS 105.14円)
PBR(2026年3月末BPS) 約1.17倍(BPS 651.86円)
PBR(2026年6月末BPS) 約1.31倍(BPS 579.13円)
配当利回り(実績) 約4.47%(2026年3月期の配当34円)
出来高(2026年9月18日) 28,500株(約2,169万円)
最低購入額 約7.6万円(100株)

※PERは「株価÷1株当たり純利益(EPS)」、PBRは「株価÷1株当たり純資産(BPS)」です。時価総額、PER、PBR、利回り、出来高の金額換算は、当レポートの計算です。2026年6月末のBPS(579.13円)は、第1四半期の赤字と期末配当の支払い分が反映された後の数値です。配当利回りは、実績配当が今後も続くことを示すものではありません(2027年3月期の配当予想は未定です)。

参考指標:

  • 予想EPSの前提:会社予想のEPS(69.46円)は、実績(105.14円)を約34%下回ります。予想PERの約11.0倍は、この予想が達成されることを前提とした数字です。第2四半期(7~9月)に営業利益約7.86億円が必要な計画のため、進捗次第で、予想の見直しがありえます。
  • 2026年3月期のPERの見方:実績PER 約7.2倍の元になるEPS(105.14円)は、税負担が33.8%と標準的な水準に戻った後の数字です。前期(税負担1.6%)のEPS 84.57円は、税金が軽かった分だけ大きく見えていました。
  • 業績が変動しやすい点:この会社のEPSは、2022年3月期の37.88円から、2024年3月期の15.17円、2026年3月期の105.14円へと、上下に大きく変動してきました(有価証券報告書)。PERの水準は、EPSの変動が大きい会社では、参考程度にとどまります。
  • 株価の位置:2026年3月期の株価は、併合後の最高1,271円、最低697円でした(有価証券報告書)。761円は、この最低値より約9%高く、最高値より約40%低い水準です(当レポートの計算)。なお、有価証券報告書の記載から逆算した2026年3月31日の終値は約980円で、そこからは約22%低くなっています(当レポートの計算)。
  • 時価総額と純資産:時価総額(約109.3億円)は、2026年6月末の純資産(83.20億円)の約1.3倍です(当レポートの計算)。

PERが約7.2倍(実績)、約11.0倍(会社予想)、PBRが約1.2~1.3倍という数字は、営業利益率が1%未満の薄利の事業で、相場と在庫評価によって利益が大きく変動することを踏まえて見る必要があります。同業他社との比較データがないため、割高・割安の判断は本レポートでは行いません。業界内での位置づけは、他社のデータとの比較が必要です。

なお、2026年9月18日の出来高は28,500株(発行済株式の約0.2%)でした。時価総額が約109億円の会社としては、1日の売買代金は約2,200万円で、大きな金額を売買する場合には、流動性(売買のしやすさ)に注意が必要です(当レポートの計算)。

まとめ

中外鉱業は、金・プラチナのリサイクルと販売を中心に、中古工作機械、キャラクターグッズなどを手がける、1932年創立の老舗です。2026年3月期は、売上2,816.92億円(+73.5%)、営業利益24.46億円(+72.5%)、経常利益22.90億円(+84.9%)と、大幅な増収増益でした。ROEは17.3%で、配当は前期より増配の34円(併合後換算)です。

一方で、見ておきたい点もあります。

  • 営業利益率は0.87%と薄い:利益の増加は、「利益率の上昇」ではなく、金などの相場を背景にした「売上規模の拡大」によるものです。売上総利益率は、2.42%から1.80%へ下がっています。
  • 2027年3月期の第1四半期は、営業赤字(▲5.26億円):貴金属相場の下落で、貴金属事業とコンテンツ事業に棚卸資産評価損が出ました。会社は、通期の営業利益を17.70億円(▲27.6%)に修正しており、残りの9か月で営業利益約22.96億円(前年同期間は約22.46億円)が必要です。
  • 販売先が2社に集中:三菱商事RtMジャパンとアサヒプリテックで、売上の87.8%を占めます。
  • 運転資本と財務:在庫が第1四半期に34.6億円増え、簡易的なネットキャッシュは▲9.34億円(借入超過)に転じました。自己資本比率は44.4%です。借入の一部には、純資産の下限などの財務制限条項があり、2026年6月末の連結純資産は、その水準を約12.9億円上回っています。
  • 利益の質:税負担が前期の1.6%から当期33.8%へ戻ったため、純利益の伸び(+24.2%)は営業利益(+72.5%)を大きく下回りました。
  • 配当は「未定」:2027年3月期の予想は未定で、34円を会社予想EPSで割ると、配当性向は約49%です。

今後のチェックポイントとして、次の3点が挙げられます。

  • 第2四半期(7~9月)の1四半期で、営業利益約7.86億円を出せるか。あわせて、貴金属相場の動きと、棚卸資産評価損の金額、売上総利益率の回復。
  • 在庫、前受金、借入金の残高と、簡易ネットキャッシュの推移。あわせて、財務制限条項に対する純資産の余裕。
  • コンテンツ事業の回復(第1四半期は▲0.02億円)と、貴金属事業の販売先の分散、ハワイへの出資の事業内容。

本レポートは、企業の開示資料(有価証券報告書、決算短信)に基づく情報整理であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資の最終判断は、ご自身の責任で行ってください。

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