【148A】ハッチ・ワーク

2026/09/21

企業分析

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企業概要

株式会社ハッチ・ワーク(証券コード:148A、東京証券取引所グロース市場)は、月極駐車場の管理をオンラインで支援するサービス「アットパーキングクラウド」と、都市部の貸会議室・レンタルオフィスの運営を二本柱とする会社です。2000年6月に賃貸オフィスのデータを扱うマーケティング会社として創業し、2018年4月に現在の社名になりました。2024年3月26日に東京証券取引所グロース市場に上場しています。本社は東京都港区南青山で、子会社はなく、単体(連結ではない)の決算を開示しています。

経営理念は「CREATE FUTURE BASE」、パーパス(存在意義)は「社会に可能性の卵を。」です。「遊休資産(使われていない資産)に新しい価値を生み出す」ことを事業の軸に置いており、月極駐車場の空き区画、貸会議室の空き時間などがその対象です。代表取締役社長は増田知平氏、取締役会長は大竹弘氏です。従業員は73名(2025年12月末、臨時雇用の平均人員は別に117名)で、平均年齢は34.9歳、平均年間給与は633万円です。

事業は次の2つの報告セグメント(会社が業績を分けて開示する事業区分)に、システムの受託開発を集めた「その他」を加えた構成です。2025年12月期の売上高27.59億円の内訳は次のとおりです(構成比は当レポートの計算です)。

セグメント サービス 売上高(億円) 売上構成比
月極イノベーション事業 APクラウドサービス(管理会社向けのクラウド管理システムと、利用者向けの決済・保証) 13.02 47.2%
月極イノベーション事業 APソリューションサービス(駐車場検索サイト「アットパーキング」、仲介、サブリース) 4.58 16.6%
ビルディングイノベーション事業 会議室サービス(貸会議室「アットビジネスセンター」、シェア会議室) 8.61 31.2%
ビルディングイノベーション事業 オフィスサービス(レンタルオフィス「インスクエア」、ビル管理) 1.28 4.6%
その他 システム受託開発 0.10 0.4%

月極イノベーション事業(売上の約64%、2025年12月期)が中心です。ここでの主力「アットパーキングクラウド」は、不動産の管理会社が、月極駐車場の募集、審査、契約、集金、解約といった手続きをオンラインでまとめて行えるサービスです。駐車場を借りたい人は、検索サイト「アットパーキング」で空き状況を調べ、オンラインで契約でき、来店や書類の郵送は不要になります。

収益の仕組みには、次のような特徴があります。

  • 管理会社からの利用料は、月額1.5万円または無料と低く設定されています。導入のハードルを下げる設計です。
  • 主な収益は、駐車場を利用する人から受け取る手数料と保証料です。決済手数料(決済1件ごとの定額)、再請求手数料(引き落とし不能の場合)、滞納保証料(利用開始時に賃料1か月分の初回保証料、その後は毎月、月額賃料の5%)で構成されます。会社資料では、月極イノベーション事業の収益の95%超が駐車場利用者からの収益と説明されています。
  • 管理会社が導入する時点で、すでに利用している人からは保証料を受け取りません。利用者が入れ替わった区画から順に課金が始まるため、保証の対象となる台数が時間をかけて積み上がる仕組みです。
  • 利用者が家賃を滞納した場合は、当社が管理会社に立て替えて支払い、あとで利用者に請求します。このため、滞納が増えると当社の負担(貸倒れ)が増える構造です。

会社が最も重視するKPI(経営の進み具合を測る指標)は「APクラウド登録台数」です。当社の管理システムに登録された駐車場の台数を指し、2025年12月末は47.4万台、2026年6月末は50.8万台(前年同期比+21.8%)です。このうち実際に手数料を受け取っている「決済代行台数」は19.9万台、滞納保証の対象になっている「滞納保証台数」は9.9万台です(いずれも2026年6月末)。登録しただけでは売上にならず、決済や保証に進んだ台数が売上になります。

ビルディングイノベーション事業(売上の約36%)は、東京・神奈川・大阪で、貸会議室、シェア会議室、レンタルオフィスなど合計19か所(2026年6月末)を運営しています。貸会議室には、ビルのオーナーからフロアを借りて自社で運営する「直営方式」と、他社の会議室の運営を受託して収益を分け合う「委託方式」があります。新規出店では、内装などの費用が先に発生し、翌年以降に拠点の損益がプラスになる収益構造だと会社は説明しています。2026年4月には、AI・IoTで受付を無人化した「新モデル貸会議室」を南青山と新橋に同時に開設しました。

業績・財務情報

直近5年間の業績(12月期・単体)

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高(億円) 14.19 16.48 20.56 23.68 27.59
経常利益(億円) ▲3.79 ▲3.95 0.12 1.55 2.60
当期純利益(億円) ▲3.68 ▲3.72 0.78 1.31 2.47
1株当たり当期純利益(円) ▲266.57 ▲225.78 47.02 72.70 129.04
1株当たり純資産(円) ▲318.05 ▲535.15 151.88 406.41 535.59
自己資本比率 23.3% 9.9% 13.7% 32.0% 35.6%
ROE(自己資本利益率) - - 36.6% 25.5% 27.4%
営業活動によるCF(億円) ▲1.87 ▲1.90 0.72 0.21 2.95
従業員数(名) 44 59 67 67 73

※億円表記は千円単位の実数を小数第3位で四捨五入したものです。1株当たり指標は、2023年12月の株式分割(1株→100株)を反映した数値です。ROEは、株主の出資分(自己資本)に対して1年間でどれだけ利益が出たかを示す指標で、一般に10%を超えると高い水準とされます。2023年12月期のROEは、自己資本が小さかったため高く出ています。

新型コロナウイルスの影響(貸会議室の需要減)と、月極駐車場サービスの新規顧客獲得に伴う費用で、2021年12月期と2022年12月期は赤字でした。2023年12月期に黒字化し、その後は売上、利益とも拡大しています。売上高は4年間(2021年→2025年)で約1.9倍、年平均では約18%の成長です(当レポートの計算)。

自己資本比率は、2022年12月期の9.9%から2025年12月期の35.6%へと改善しました。上場時の増資(2024年)と、黒字による利益の積み上げが主な要因です。ただし、この比率は「預り金」を含んだ資産で計算されている点に注意が必要です(後述)。

2025年12月期(第26期)の内訳

項目 2024年12月期 2025年12月期 増減率
売上高(百万円) 2,367 2,759 +16.5%
売上総利益(百万円) 1,378 1,631 +18.4%
(売上総利益率) 58.2% 59.1% +0.9ポイント
販売費及び一般管理費(百万円) 1,195 1,389 +16.3%
営業利益(百万円) 183 242 +32.1%
(営業利益率) 7.7% 8.8% +1.1ポイント
営業外収益(百万円) 2 28 -
営業外費用(百万円) 30 10 -
経常利益(百万円) 155 260 +67.9%
当期純利益(百万円) 131 247 +88.6%

※売上総利益、売上総利益率、販管費の増減率は、当レポートの計算です。

セグメント別では、月極イノベーション事業の売上高が17.60億円(+25.2%)、セグメント利益が5.12億円(+39.7%)と、成長を牽引しました。ビルディングイノベーション事業は、売上高が9.89億円(+3.4%)と小幅な増収で、セグメント利益は2.16億円(▲17.4%)と減益でした。2025年10月の五反田の新規出店や、南青山・新橋の出店準備の費用が先行したためです。なお、どちらのセグメントにも配分しない本社部門などの「全社費用」は4.47億円から4.91億円へ増えています。

この決算では、次の3点に注意して読む必要があります。

1. 利益の伸びのうち、「営業外」の寄与が大きい

経常利益は+67.9%と、営業利益(+32.1%)より大きく伸びました。前期は上場に伴う費用(上場関連費用0.93億円、株式交付費0.59億円)が営業外費用に入っていましたが、当期はなくなりました。さらに当期は、補助金収入0.20億円と営業債務消滅益0.06億円が営業外収益に入っています。営業外損益の合計は、前期の▲0.28億円から+0.18億円へ改善しており、経常利益の増加額(1.05億円)のうち、約44%が営業外損益の改善によるものです(当レポートの計算)。事業の実力を示す数字は営業利益(+32.1%)と見るのが適切です。

2. 法人税等の負担が、税引前利益の2.7%と、とても小さい

税引前当期純利益は2.54億円で、法人税、住民税及び事業税は0.07億円、法人税等調整額を含めた法人税等の合計も0.07億円(負担率2.70%)でした。標準的な税率(法定実効税率34.59%)より大幅に低い理由は、有価証券報告書の税効果の注記によると、過去の赤字で生じた「税務上の繰越欠損金」が課税所得から差し引かれ、評価性引当額(繰延税金資産の一部を計上しない処理)の見直しも進んだためです。

繰越欠損金とは、過去の赤字を将来の黒字から差し引ける制度で、当期は税金を抑える効果があります。2025年12月末の繰越欠損金は、税額に換算して約1.76億円(前期末は約2.68億円)です。仮に標準的な税率で課税された場合、当期の純利益は約1.66億円、1株当たり当期純利益は約87円、ROEは約18%となる計算です。これは、実効税率を機械的に当てはめた当レポートの試算にすぎず、会社の見通しや実際の税額を示すものではありません(前提として、前期末と当期末の平均自己資本9.02億円を使用しています)。実績のEPS(129.04円)とROE(27.4%)には、税金の低さが含まれている点を踏まえて見る必要があります。

3. 預り金と預け金が、貸借対照表を大きく見せている

貸借対照表には、預り金9.18億円(2025年12月末)と、預け金6.18億円が計上されています。預り金の内訳は、月極イノベーション事業7.82億円と、ビルディングイノベーション事業1.21億円などで、利用者から集めた駐車場利用料や家賃を、翌月に管理会社やオーナーに支払うまでの間、一時的に預かっているお金です。預け金(相手先はみずほ信託銀行)は、その資金を信託銀行に預けているものです。これらは当社の自己資金ではなく、収納代行業務(利用者に代わって集金し、支払う業務)から生じるものです。

2026年12月期 上期(1~6月)の状況

項目 2025年上期 2026年上期 増減率
売上高(百万円) 1,338 1,581 +18.1%
売上総利益(百万円) 810 943 +16.4%
(売上総利益率) 60.5% 59.7% ▲0.9ポイント
販売費及び一般管理費(百万円) 638 876 +37.2%
(売上高に対する販管費率) 47.7% 55.4% +7.7ポイント
営業利益(百万円) 171 67 ▲60.7%
(営業利益率) 12.8% 4.3% ▲8.5ポイント
経常利益(百万円) 187 75 ▲59.9%
中間純利益(百万円) 122 49 ▲59.9%
1株当たり中間純利益(円) 64.07 25.62 ▲60.0%

※売上総利益率、販管費率、営業利益率、売上総利益・販管費の増減率は、当レポートの計算です。

上期は、売上が+18.1%と伸びた一方、営業利益は▲60.7%と大きく減りました。売上原価の伸び(+20.7%)は売上を上回りましたが、売上総利益率の低下は0.9ポイントにとどまります。減益の主因は、販売費及び一般管理費の増加(+2.38億円、+37.2%)です。

会社は、これを「2030年に向けた成長投資を実行したことによるもので、通期業績予想に対する進捗は概ね計画どおり」と説明しています。決算説明資料は、四半期ごとの経常利益に影響した費用として、第1四半期に「本社移転、LLMO対策(生成AIが回答を作るときに自社サービスが参照されやすくする施策)、広告宣伝、システム関連費、新規出店として約90百万円」、第2四半期に「広告宣伝・新規出店として約73百万円」を挙げています。

セグメント別の上期は、次のとおりです。

セグメント 売上高(百万円) 前年同期比 セグメント利益(百万円) 前年同期比
月極イノベーション事業 1,063 +27.2% 302 +12.6%
ビルディングイノベーション事業 515 +3.8% 89 ▲30.9%
その他 1 ▲70.0% 1 ▲49.1%
全社費用(調整額) - - ▲324 前年同期は▲227
営業利益 1,581 +18.1% 67 ▲60.7%

ここで注目したいのは、各セグメントの利益の合計は、前年同期の3.99億円から3.92億円へと、ほぼ横ばいという点です。営業利益が1.71億円から0.68億円へ減った差(▲1.04億円)の大半は、どのセグメントにも配分しない「全社費用」が2.28億円から3.25億円へ、約0.97億円(+42.6%)増えたことで説明できます(当レポートの計算)。全社費用は、主に報告セグメントに帰属しない一般管理費と、半期報告書に記載されています。本社移転(2026年2月)や、広告宣伝、システム関連費などが含まれると見られますが、内訳は開示されていません。

月極イノベーション事業は、売上が+27.2%、利益が+12.6%と、増収増益を保っています。APクラウドサービスの売上は8.15億円(+31.8%)に伸びています(当レポートの計算)。ただし、売上の伸びに対して利益の伸びが小さく、人員の増強や業務委託費(上期の販管費の内訳で1.28億円→1.83億円)が先行しているとみられます。

ビルディングイノベーション事業は、新規出店(2026年4月)の費用が先行し、利益が減っています。会社は、下期以降に新規出店の売上が加わることを見込んでいます。

通期予想に対する進捗

会社は、2026年12月期の予想を変更せず、次のとおり据え置いています(2026年2月12日公表)。

項目 2025年12月期(実績) 2026年12月期(予想) 増減率 上期の進捗率
売上高(百万円) 2,759 3,385 +22.7% 46.7%
営業利益(百万円) 242 204 ▲15.6% 33.1%
経常利益(百万円) 260 200 ▲23.0% 37.6%
当期純利益(百万円) 246 216 ▲12.2% 22.8%
1株当たり当期純利益(円) 129.04 112.87 ▲12.5% -

※進捗率は、上期の実績を通期予想で割った、当レポートの計算です。

通期予想の営業利益は、前期より減る計画(▲15.6%)です。上期の営業利益(0.68億円)は、通期予想(2.04億円)の33.1%であり、下期に求められる営業利益は約1.36億円です(当レポートの計算)。これは、上期の実績(0.68億円)の2倍にあたる金額を、下期の半年間だけで稼ぐ必要があることを意味し、前年の下期(0.70億円)と比べても約1.9倍です。売上高も、下期は約18.04億円(前年下期比で約+27%)が必要です。上期の増収率(+18.1%)、第2四半期の増収率(+20.5%)より高い伸びとなります。

会社は、下期の見通しについて「ストック型ビジネスモデルであるため、下期も着実な積み上がりを予定」「4月にオープンした新モデル貸会議室の本格稼働によるプラス要因も寄与」と説明しています。下期に営業利益が大きく増える計画に対し、上期の第2四半期(4~6月)の営業利益は0.54億円であり、下期に必要な四半期平均(約0.68億円)は、これを上回る水準です(当レポートの計算)。第2四半期は、第1四半期の0.13億円から回復しています。下期の増収の勢い、費用の増え方、新規出店の立ち上がりを、次の決算で確認したい点です。

なお、通期予想では当期純利益(2.16億円)が経常利益(2.00億円)を上回っています。税金費用がマイナス(税金の戻り)になる前提ですが、その理由は、今回確認した資料には記載がありません。上期の税金費用は、税引前利益の34.6%(0.26億円)で計算されています(第一種中間財務諸表の処理として、見積実効税率を使う旨が注記されています)。前年も、上期は34.6%(0.65億円)で計上され、通期では2.7%に下がりました(当レポートの計算)。上期の純利益(0.49億円)だけを見て通期を判断しにくい理由の一つです。

キャッシュフローと財務の状態

項目(億円) 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期 2026年上期
営業活動によるCF 0.72 0.21 2.95 ▲0.26
投資活動によるCF 0.12 ▲0.56 ▲1.67 ▲1.31
財務活動によるCF ▲1.85 3.75 ▲0.81 ▲0.67
現金及び現金同等物の期末残高 10.04 13.44 13.91 11.68

営業CFは、営業活動で得た現金の増減です。2025年12月期は2.95億円の収入でしたが、この中には、預り金の増加(+1.76億円)と、預け金の増加(▲2.32億円)が含まれます。差し引きでは約0.57億円のマイナスです。2026年上期の営業CFは0.26億円のマイナスでしたが、預け金の増加(▲1.67億円)と預り金の増加(+0.57億円)の差(約▲1.11億円)を除くと、約+0.85億円のプラスです(当レポートの計算)。営業CFの見た目は、預り金・預け金の増減で大きく動きます。

投資CFは、2025年12月期は貸会議室の出店に伴う敷金の差入(1.31億円)が主で、2026年上期は本社移転や新規出店の設備投資(有形固定資産の取得1.22億円)が主です。2026年上期は、営業CFと投資CFを合わせた「フリーキャッシュフロー」がマイナス(約▲1.57億円)でした(当レポートの計算)。

貸借対照表(2026年6月末)は次のとおりです。

項目 金額(億円)
総資産 30.12
純資産 10.81
自己資本比率 35.8%
現金及び預金 12.98
預け金 7.86
預り金 9.74
借入金と社債(合計) 3.73

自己資本比率(総資産に対する自己資本の割合)は35.8%ですが、預り金9.74億円と預け金7.86億円が資産・負債の両方に載っている点に注意が必要です。預け金と同額を資産から除いた場合、自己資本比率は約48.5%になります(当レポートの参考計算)。

手元のお金の余裕は、簡易的に次のように考えられます。現金及び預金12.98億円のうち、預り金が預け金を上回る差額(約1.89億円)は、顧客に支払う資金の不足分を現金でまかなっている部分と考えられ、これを除いた約11.09億円が自由に使える現金の目安です。借入金と社債の合計3.73億円を引くと、実質的なネットキャッシュ(現金から有利子負債を引いた額)は約7.4億円です(当レポートの簡易計算)。有利子負債は、2024年末の約5.2億円から、2025年末の約4.4億円、2026年6月末の約3.7億円と減っています。

成長戦略・将来性

会社は、2026年3月26日に「事業計画及び成長可能性に関する説明資料」を開示しており、2030年度に向けた目標として、次の数値を掲げています。

項目 2025年度(実績) 2030年度の目標・ビジョン 2031年度以降
売上高 28億円 65~70億円 100億円超
営業利益 2億円 10億円(M&Aによる増益は含まず) 20億円超
時価総額 41億円(2025年度末) 150億円超 250億円超
配当 - 配当開始予定 継続的な配当の実施
M&A予算 - 10億円前後(2026~2030年度の累計) 新規事業を含め積極的に実施

売上高28億円(2025年度)から65~70億円(2030年度)への伸びは、年平均で約19~20%の成長にあたります。営業利益の10億円は、2025年度の2.42億円の約4倍で、売上高営業利益率は約14~15%となります(いずれも当レポートの計算で、2025年12月期の実績が基準)。2025年12月期の営業利益率は8.8%、2026年12月期の会社予想は6.0%(当レポートの計算)ですので、利益率の大幅な改善が前提です。

事業別の方針は次のとおりです。

月極イノベーション事業:登録台数を2030年度に125~130万台へ

  • APクラウド登録台数を、2025年度末の47万台から、2030年度に125~130万台(年平均+23%)へ増やす計画です。会社は、月極駐車場の台数を4,870万台程度、そのうち管理会社が管理する台数を2,500万台程度と推計し、現在の登録台数は「管理会社が管理する台数の約2%」としています。
  • 拡大のために、管理者に選ばれる機能の強化(UI/UX向上、価格の提案機能)、利用者への認知度向上(サイトのリニューアル、ブランディング)、未利用地や商業施設の余白地の月極駐車場化などを進めるとしています。営業人員も増やします。
  • 業務の効率化(AI・自動化ツールの導入、業務フローの再設計)で、15%の業務工数削減を見込み、利益率の向上を目指すとしています。
  • 基幹システムの全面改修(内製化)も予定しており、有価証券報告書の設備計画には、APクラウドのシステム投資4,700万円(2026年4月着手、2026年10月完了予定)が記載されています。
  • 不動産業界団体(ハトマーク支援機構)との提携による営業展開、自治体との「災害ステーション」協定(松山市、神戸市など)、短期貸しサービス「アットパーキングウィークリー」など、周辺サービスも広げています。

ビルディングイノベーション事業:出店の再開

  • 会議室の面積(坪数)を、2025年度の3,210坪から、2030年度に4,500~5,000坪(年平均+8%)へ広げる計画です。専任の開発チームをつくり、新規出店を進めます。
  • 新モデルの貸会議室は、AI・IoTで受付を無人化し、レイアウトが自由な多目的空間とすることで、少ない人手で運営できるようにする設計です。築年数の古いビルのオーナーの収益改善提案を、出店のきっかけにする方針です。
  • 会社は、この事業を「新規出店の再開で、再び成長させる」位置づけとし、費用が先行するものの、2027年度以降の収益化を見込んでいます。

第3の柱と、M&A

  • 2031年度以降は、既存事業の継続拡大に加えて、「第3の柱」の構築を掲げています。
  • M&A(企業買収)には、2026~2030年度の累計で10億円前後の予算を置いています。具体的な案件は、今回確認した資料には記載がありません。
  • 月極駐車場に集まるデータ(車両、利用者、空き情報など)を活用した「ファーストワンマイルステーション構想」も掲げていますが、収益への寄与額は示されていません。

成長を評価する上で、注目したい点は次のとおりです。

  • 売上の質:APクラウドの売上は、前年同期比+31.8%(2026年上期)と伸びています。ARR(各期末月の月額収益を12倍した、年間の継続収益の目安)は、16.75億円(前年同期比+31.5%)です。決済代行台数(+24.8%)、滞納保証台数(+31.0%)が、登録台数(+21.8%)より速く増えており、登録台数が売上に転換する割合が上がっています。
  • 利益の伸び方:2030年度の営業利益10億円の目標に対し、2026年12月期の予想は2.04億円で、減益の計画です。投資が利益を押し下げる期間が、いつまで続くかは、開示資料からは分かりません。
  • ビルディングイノベーション事業:売上の伸びは+3~4%にとどまっており、2030年度の坪数の伸び(年+8%)が達成できるかどうかは、新モデルの収益性次第です。

株主還元

同社は創業以来、配当を実施していません。有価証券報告書には、「事業展開のスピードを高め、規模の拡大に伴って必要な資金を確保する観点から、当面は利益配当を実施せず、内部留保に努める方針」と記載されています。「将来、経営成績及び財政状態を勘案しながら利益配当を実施していく方針」とも述べていますが、配当の実施時期は「未定」です。2026年12月期の配当予想も0円(無配)です。

一方、2026年3月の説明資料には、2030年度までの間に「配当開始予定」と記載されています。時期や金額の具体的な方針は示されていません。

自己株式の取得の実績はありません。

株主優待についても、今回確認した資料には記載がありません。株主にとっての主な魅力は、業績成長を通じた株価の上昇にあり、現時点では、配当を目的とする投資には向かない銘柄です。

一方で、希薄化(株式の増加による1株の価値の低下)の可能性があります。有価証券報告書によると、新株予約権が全て行使された場合の潜在株式数は110,300株(発行済株式の5.7%、2026年3月時点)です。そのうえ、2026年4月に、取締役3名と従業員17名を対象に第7回新株予約権(45,000株、行使価額1,804円)が発行されました。合わせると約15.5万株で、発行済株式の約8%になる計算です(当レポートの概算で、2026年上期に行使された分は考慮していません)。

第7回新株予約権には、行使のための条件が付いています。2028年12月期から2030年12月期までのいずれかの期に、「のれん償却前営業利益が10億円を超える」ことと、「株価(終値)が5,213円を超える(時価総額約100億円に相当)」ことの両方を満たす必要があります。これは、前述の2030年度の営業利益目標(10億円)と、ほぼ同じ水準です。経営陣が、業績目標と株価の両方の達成にインセンティブ(報酬上の動機づけ)を持つ設計と見ることができます。

ガバナンス・リスク

ガバナンス体制は、監査役会設置会社です。取締役会は4名(うち社外取締役1名、社外比率25%)で、監査役は3名(全員が社外監査役)です。任意の指名報酬委員会を設置しており、役員報酬は取締役会の決議に基づいて決めています。会計監査人はみおぎ監査法人です。政策保有株式(取引先などとの関係維持のために持つ株式)の保有は、有価証券報告書上、該当がありません。

創業経営者への集中:取締役会長の大竹氏と、代表取締役社長の増田氏が、資産管理会社の分も含めて発行済株式の約50%を保有しています(2026年6月末の大株主の状況から、当レポートが合計。大竹氏側が約32.4%、増田氏側が約17.5%)。経営の意思決定が、この2名に大きく依存する構造で、有価証券報告書も「特定人物への依存」をリスクに挙げています。会社は、指名報酬委員会を通じた後継者の育成(サクセッションプラン)と、権限の委譲で対応するとしています。

主なリスクは、有価証券報告書の記載を中心に整理します。

1. 駐車場利用者の滞納と、貸倒れのリスク(会社の評価では、顕在化の可能性は「高」)

当社は、管理会社に対して家賃の滞納を保証しており、滞納が起きた場合は当社が立て替えます。景気や雇用の悪化で、利用者の支払い能力が下がれば、回収不能が増える可能性があります。当社は、過去の滞納実績に基づいて貸倒引当金(0.70億円、2026年6月末)と保証履行引当金(0.07億円)を計上していますが、実際の未回収が想定を上回れば、引当金が不足する可能性があると有価証券報告書に記載されています。上期の貸倒引当金繰入は0.17億円です。売上の伸びとともに、保証の対象となる台数が増えるため、この負担も増える構造です。

2. 競争環境(月極イノベーション事業)

オンラインの月極駐車場管理支援サービスには、競合企業が参入し始めており、他業種の大手企業から専門化した新興企業まで、新規参入の可能性があります。会社は、検索サイト「アットパーキング」の集客力や、リアルタイムの空き情報を強みとしていますが、競争が激しくなれば、優位性が失われる可能性があります(会社の評価は、顕在化の可能性「中」、影響度「大」)。

3. 貸会議室の出店と敷金(ビルディングイノベーション事業)

直営の貸会議室は、ビルのオーナーからフロアを借りて運営するため、新規出店には内装費と敷金が必要です。2025年12月末の敷金は2.16億円で、1年間で1.22億円増えました。これは純資産(10.28億円)の約21%にあたる規模です(当レポートの計算)。出店した拠点の収益が想定を下回った場合や、オーナーの経営状況が悪化した場合、敷金の回収に影響が出る可能性があります。また、有価証券報告書は、貸会議室の物件の確保や、同業他社との競合をリスクに挙げています。

4. 税務上の繰越欠損金

前述のとおり、当期までの利益に対する税負担は、繰越欠損金で大きく抑えられています。有価証券報告書は、計画どおりに課税所得が生じない場合は、通常の税率に基づく税負担が増え、当期純利益やキャッシュフローに影響する可能性があると記載しています。繰越欠損金が使い切られた後は、純利益の伸びが、営業利益の伸びより小さくなる可能性があります。

5. その他のリスク

  • 個人情報の管理:顧客企業の担当者や、駐車場利用者の個人情報を扱います(会社は、プライバシーマークとISMS認証を取得しています)。漏洩が起きた場合の影響は「大」と評価されています。
  • システムトラブル:サービスがシステムに依存しており、障害や不正アクセスで、サービスの提供に支障が出る可能性があります。
  • 人材の獲得・育成:事業拡大に伴い、営業やオペレーションの人員が必要で、人件費の増加も見込まれます。
  • 法規制:駐車場法や道路交通法、車庫法などの変更で、駐車場の需要が減る場合に、影響を受ける可能性があります。
  • 資金使途:上場で調達した資金は、システム投資、人件費、貸会議室の出店、新オフィスの設備投資に充てています。想定どおりの効果が得られない可能性があります。

株主構成・株価情報

大株主の状況(2026年6月30日現在)

株主名 所有株式数 持株比率
株式会社大竹アンドパートナーズ(大竹氏の資産管理会社) 465,000株 24.2%
株式会社ダイナエッグ(増田氏の資産管理会社) 276,600株 14.4%
大竹 弘(取締役会長) 156,500株 8.1%
株式会社SBI証券 103,112株 5.4%
五味 大輔 82,500株 4.3%
増田 知平(代表取締役社長) 60,000株 3.1%
IEファスト&エクセレント投資事業有限責任組合 50,700株 2.6%
楽天証券株式会社 46,100株 2.4%
マーキュリア・ビズテック投資事業有限責任組合 33,000株 1.7%
イノベーション・エンジンPOC第2号投資事業有限責任組合 32,100株 1.7%
上位10名の合計 1,305,612株 68.0%

※持株比率は、発行済株式(自己株式を除く)の総数に対する割合です。資産管理会社の位置づけは、有価証券報告書の役員の略歴(大竹氏が大竹アンドパートナーズ、増田氏がダイナエッグの代表取締役)と、役員の所有株式数に関する注記によるものです。

所有者別の状況(2025年12月末)は、個人その他が42.4%、その他の法人が42.0%、金融商品取引業者(証券会社)が12.5%、外国法人等が1.9%、金融機関が1.2%です。株主数は856人です。

創業経営者の2名側で約50%、上位10名で68.0%を占めています。市場で自由に売買されやすい株式(流通株式)は、この上位株主の分を除いた部分が中心となり、限られます。有価証券報告書には、流通株式比率(東京証券取引所の上場維持基準にかかわる指標)の記載はありません。

株式の情報は次のとおりです。

  • 発行済株式総数:1,920,600株(2026年6月末。発行可能株式総数は3,000,000株)
  • 単元株数:100株
  • 株式分割:2023年12月6日付で、1株を100株に分割しました。
  • 上場:2024年3月26日、東京証券取引所グロース市場(公募価格は2,160円)

株価と投資指標

2026年9月21日時点の株価1,745円での指標です。予想EPS、BPS、年初来高値・安値はYahoo!ファイナンスの掲載値です。株価の変動により、数値は変わります。

項目 数値
株価(2026年9月21日) 1,745円
時価総額 約33.51億円
PER(会社予想) 約15.5倍(予想EPS 112.52円)
PBR(実績) 約3.11倍(BPS 561.28円)
配当利回り 0.00%(無配)
年初来高値/安値 2,226円(2026年1月19日)/1,640円(2026年7月29日)
最低購入額 約17.5万円(100株)

※PERは「株価÷予想EPS(会社予想の1株当たり純利益)」、PBRは「株価÷実績の1株当たり純資産」です。BPS 561.28円は、2026年6月末の自己資本(10.78億円)を発行済株式数(1,920,600株)で割った値と一致しています。決算短信の予想EPSは112.87円で、Yahoo!ファイナンスの表示(112.52円)と異なります。

参考指標:

  • 実績EPSベースのPER:2025年12月期の実績EPS(129.04円)で計算すると、約13.5倍です(当レポートの計算)。有価証券報告書に記載された2025年12月期末の株価収益率は16.4倍です。
  • 税率を標準的とした場合のPER:会社予想の経常利益(2.00億円)に、標準的な税率(34.59%)を機械的に適用すると、1株当たり利益は約68円です。この場合のPERは約25.6倍となります(当レポートの機械的な参考計算で、会社の見通しではありません。会社は、税金費用がマイナスとなる前提の予想を出しています)。
  • 時価総額の推移:会社の説明資料では、2025年度末の時価総額は41億円です。今回の約33.5億円は、それより約18%低い水準です(当レポートの計算)。
  • 年初来安値との比較:直近の株価は、年初来安値(1,640円)より約6%高く、年初来高値(2,226円)より約22%低い位置にあります(当レポートの計算)。
  • 実質的な企業価値:時価総額から、前述の簡易ネットキャッシュ(約7.4億円)を引いた企業価値は約26.2億円で、2026年12月期の会社予想営業利益(2.04億円)に対する倍率は約12.8倍です(当レポートの参考計算)。

PERが約15.5倍、PBRが約3.1倍という数字は、営業利益が減益となる計画の中で、税金の低さが予想EPSに含まれている点や、時価総額が小さく、取引量が限られる点を踏まえて見る必要があります。同業他社との比較データがないため、割高・割安の判断は本レポートでは行いません。業界内での位置づけは、他社のデータとの比較が必要です。

なお、時価総額が約33.5億円と小さく、Yahoo!ファイナンスに表示されていた直近の取引日(2026年9月4日)の出来高は200株(約34万円)でした。流動性(売買のしやすさ)が低い点にも注意が必要です。

まとめ

ハッチ・ワークは、月極駐車場の管理をクラウド化し、利用者からの決済手数料と滞納保証料が積み上がるストック型の収益構造を持つ会社です。登録台数は50.8万台(+21.8%)、ARRは16.75億円(+31.5%)と伸びています。2025年12月期は、売上+16.5%、営業利益+32.1%と、増収増益でした。2030年度に売上65~70億円、営業利益10億円、配当開始を掲げています。

一方で、見ておきたい点もあります。

  • 上期の営業利益は▲60.7%:売上は+18.1%ですが、販管費が+37.2%増え、全社費用が約0.97億円増えたことが主因です。会社は「計画どおり」と説明しており、通期予想は据え置きです。下期に営業利益約1.36億円(上期実績の約2倍、前年下期の約1.9倍)が必要で、その実現が最初の確認点です。
  • 税金の低さ:2025年12月期の税負担率は2.7%で、EPS(129.04円)とROE(27.4%)は、標準的な税率なら約87円、約18%となる計算です。繰越欠損金は、税額換算で約1.76億円が残っています。
  • 貸倒れの負担:利用者の滞納を当社が保証しており、台数の増加に伴って、滞納・貸倒れの負担も増える構造です。
  • 預り金・預け金:貸借対照表と営業CFが、収納代行資金の増減で大きく動きます。
  • 株主構成と流動性:創業経営者側で約50%、上位10名で68.0%を保有しており、時価総額は約33.5億円と小さく、売買が少ない状況です。
  • 無配と希薄化:配当は「未定」ですが、2030年度までに開始予定とされています。新株予約権による潜在株式は、概算で発行済株式の約8%です。

今後のチェックポイントとして、次の3点が挙げられます。

  • 上期(0.68億円)の2倍にあたる下期の営業利益(約1.36億円)を達成できるか。あわせて、売上総利益率と、会社予想に対する進捗と、販管費・全社費用の増え方が落ち着くか。
  • APクラウド登録台数、決済代行台数、滞納保証台数、ARRの伸びと、貸倒引当金・保証履行引当金の動き。
  • 新モデル貸会議室(南青山・新橋)の稼働状況と、税金費用(法人税等)の実績。

本レポートは、企業の開示資料(有価証券報告書、半期報告書、決算短信、決算説明資料)に基づく情報整理であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資の最終判断は、ご自身の責任で行ってください。

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