【1450】TANAKEN

2026/09/21

企業分析

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企業概要

TANAKEN株式会社(証券コード:1450、東京証券取引所スタンダード市場)は、東京都港区に本社を置く建築物の解体工事の専業会社です。1982年に創業し、旧社名は田中建設工業株式会社で、2025年4月に現在の社名へ変更しました。2018年12月に東証JASDAQ(スタンダード)市場へ上場し、2022年4月の市場再編でスタンダード市場に移行しています。決算期は3月で、2026年3月期が第45期にあたります。子会社はなく、単体決算のみを開示しています。従業員は110名(2026年3月末)、平均年齢44.6歳、平均年間給与は約722万円です。

事業は「解体事業」の単一セグメントです。ビルやマンションなどの建物の解体を中心に、現況調査、工法の提案、設計、施工計画、協力会社の手配、施工管理、安全管理、近隣対応までを一貫して手がけます。アスベスト(石綿)やPCBなどの有害物質の除去、地下水の浄化、土壌改良、杭抜き工事といった付随工事も扱います。

同社の特徴は次の2点です。

  • 「持たざる経営」:解体重機や作業員を自社で抱えず、実際の作業は協力会社に任せ、自社は施工管理・安全管理・顧客対応に集中します。有価証券報告書は「自社で重機を保有せず、協力会社が使用する重機について…」と明記しています。設備投資の負担が小さく、2026年3月期の設備投資額は約1,744万円にとどまります。
  • 元請工事が中心:顧客から直接工事を請け負う「元請」を重視し、これを「良好な収益基盤を支える」と位置づけています。顧客はデベロッパー(不動産開発会社)、ゼネコン(総合建設会社)、一般法人、再開発組合などです。

2026年3月期の売上高を顧客区分別に見ると、デベロッパー42.4%、再開発等24.4%、エンドユーザー23.6%、ゼネコン9.6%でした。前期(デベロッパー36.7%、再開発等16.4%、ゼネコン20.9%)と比べて、デベロッパーと再開発案件の比重が高まり、ゼネコンの比重が下がっています。最大の取引先は三井不動産株式会社で、売上高に占める割合は7.7%です。特定の1社に極端に依存する構造ではありません。

業績・財務情報

直近5年間の業績(3月期)

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高(億円) 98.24 112.46 106.76 122.86 148.20
経常利益(億円) 14.35 16.00 16.40 23.42 22.11
当期純利益(億円) 9.67 10.87 10.90 15.76 15.02
1株当たり当期純利益(円) 111.21 124.93 125.33 181.21 172.67
1株当たり純資産(円) 625.27 714.70 803.57 945.32 1,072.04
自己資本比率 77.1% 77.5% 76.7% 72.2% 76.6%
ROE(自己資本利益率) 18.9% 18.6% 16.5% 20.7% 17.1%
従業員数(名) 107 101 105 102 110

※億円表記は、有価証券報告書の千円単位の実数を小数第3位で四捨五入したものです(例:売上高14,820,418千円=148.20億円)。1株当たり指標は、2025年2月の株式分割(1株→2株)を反映した数値です。

売上高は4年間で98.24億円から148.20億円へ約1.5倍になり、年平均では約10.8%の成長です。純利益も年平均約11.6%で伸びています。自己資本比率は一貫して70%台の高さを保ち、ROEも16~21%の水準です。ROEとは、株主の出資分(自己資本)に対して1年間でどれだけ利益が出たかを示す指標で、一般に10%を超えると高い水準とされます。

2026年3月期(第45期)の内訳

項目 2025年3月期 2026年3月期 増減
売上高 122.86億円 148.20億円 +20.6%
売上原価 89.76億円 116.26億円 +29.5%
売上総利益 33.10億円 31.95億円 ▲3.5%
(売上総利益率) 26.9% 21.6% ▲5.4ポイント
販売費及び一般管理費 9.82億円 10.09億円 +2.8%
営業利益 23.28億円 21.86億円 ▲6.1%
(営業利益率) 19.0% 14.7% ▲4.2ポイント
経常利益 23.42億円 22.11億円 ▲5.6%
当期純利益 15.76億円 15.02億円 ▲4.7%

売上が2割伸びたにもかかわらず、営業利益は6.1%の減益でした。原因は売上原価が売上を上回るペース(+29.5%)で増えたことで、売上総利益率が26.9%から21.6%へ約5.4ポイント下がったためです(計算は当レポートによる)。会社は「施工難易度の高い工事の増加に伴い、安全対策費等の売上原価が増加した」と説明しています。一方、販管費は微増にとどまり、売上高に対する販管費の比率は8.0%から6.8%へ低下しました。利益率が下がったのは販管費ではなく、工事の原価が重くなったことが主因です。

原価の中身を、有価証券報告書の「完成工事原価明細書」で確認します(当レポートの計算を含む)。

項目 2025年3月期 2026年3月期 増減 売上高に対する比率(前期→当期)
外注費(協力会社への支払い) 76.39億円 98.35億円 +28.7% 62.2% → 66.4%(+4.2ポイント)
経費 13.37億円 17.90億円 +33.9% 10.9% → 12.1%(+1.2ポイント)
(うち人件費) 9.23億円 11.42億円 +23.8% 7.5% → 7.7%(+0.2ポイント)
完成工事原価 89.76億円 116.26億円 +29.5% 73.1% → 78.4%(+5.4ポイント)

売上総利益率の低下5.4ポイントのうち、約4.2ポイントは外注費の比率上昇、約1.2ポイントは経費(うち自社の人件費は約0.2ポイント)の比率上昇で説明できます。原価の約85%を協力会社への外注費が占める「持たざる経営」では、外注費の動きがそのまま利益率を左右します。

外注費が売上を上回って増えた理由を、開示資料だけで内訳(工事の中身の変化か、協力会社への支払い単価の上昇か)に切り分けることはできません。考えられる要因は次の3つで、いずれも当レポートの仮説です。

  • 工事の中身の変化:会社は「施工難易度の高い工事の増加に伴い、安全対策費等の売上原価が増加した」と説明しています。大型の元請工事や、地下解体・杭抜きなどの難度の高い工事が増えると、外注費や安全対策費の比率が高まりやすくなります。
  • 協力会社の単価上昇:有価証券報告書は経営環境として「建築資材価格の上昇や建設技能労働者の需給の逼迫により、コスト面で不安が募る」と記載しています。職人の確保が難しくなると、外注単価は上がりやすくなります。ただし、その影響がどの程度含まれているかは、開示資料からは分かりません。
  • 受注時の価格設定:大型案件の獲得を優先し、利益率をある程度犠牲にして受注した可能性もあります。会社は、この点について説明していません。

2027年3月期の第1四半期は、売上総利益率が22.4%と前期通期(21.6%)を上回り、前年同期(22.3%)とほぼ同水準でした。原価率の悪化が続いているわけではなさそうですが、1四半期だけでは判断できません。

特別損益はほぼなく、税負担も約32%と通常の水準です。前期・当期とも、特別な要因で利益が押し上げられたり押し下げられたりした形跡はありません。営業利益の減益は、そのまま本業の実力の変化と読めます。ただし、大型工事の比重が増えると利益率が下がりやすい構造がある点は、後述のリスクと合わせて見ておく必要があります。

受注の状況――過去最高の受注と、積み上がった繰越工事

項目 2025年3月期 2026年3月期 前期比
期首の繰越工事高(億円) 70.7 81.60 +15.4%
当期受注工事高(億円) 133.8 185.92 +39.0%
当期完成工事高=売上高(億円) 122.86 148.20 +20.6%
期末の繰越工事高(億円) 81.60 119.31 +46.2%

※2025年3月期の期首繰越と受注は、前期比の数値から逆算した概算です。2026年3月期の数値は有価証券報告書の実数です。

2026年3月期の受注高は185.92億円と過去最高で、売上高の約1.25倍(受注が売上を上回る状態)です。期末の繰越工事高(受注済みでまだ売上になっていない工事)は119.31億円まで積み上がりました。これは2027年3月期の売上高予想(160億円)の約75%に相当します(当レポートの計算。ただし繰越工事の一部は2028年3月期以降に売上になる可能性があります)。

受注の先行きが見える点は、この会社の大きな強みです。会社は、受注が増えた理由として、地方案件を含む新規受注の増加と、大型工事の受注増加を挙げています。

キャッシュフローと財務の状況

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
営業活動によるCF(億円) 19.03 ▲2.22 5.11 21.42 ▲5.78
投資活動によるCF(億円) ▲0.42 ▲1.54 ▲0.44 ▲0.78 ▲0.81
財務活動によるCF(億円) ▲5.96 ▲3.17 ▲3.48 ▲3.48 ▲4.78
現金及び現金同等物の期末残高(億円) 27.96 21.02 22.21 39.36 27.98

CF=キャッシュフロー(お金の出入り)のことです。2026年3月期は、純利益15.02億円を計上しながら、営業CFは5.78億円のマイナスでした。現金は39.36億円から27.98億円へ約11.4億円減っています。

原因は、売上債権(完成工事未収入金)の増加です。完成工事未収入金は54.58億円から72.47億円へ17.89億円(+32.8%)増え、売上高の伸び(+20.6%)を上回りました。この内訳は、請求済みの債権8.79億円と、工事の進み具合に応じて売上に計上したものの、まだ代金を請求していない「契約資産」63.68億円です。このほか、未成工事受入金(前受金)が5.22億円減ったこと、法人税等の支払い8.66億円も響いています。

会社自身も、「元請工事の維持・拡大には大きな資金需要が伴う。回収条件と支払い条件の差から生じる運転資金(立替資金)需要」があり、「大型工事ほど資金需要が多く発生する」と説明しています。工事を増やすほど、先に協力会社への支払いが出て、代金の回収は後になるという構造です。

貸借対照表(2026年3月末)では、総資産121.79億円、純資産93.25億円、自己資本比率76.6%です。総資産のうち完成工事未収入金が59.5%を占めます(当レポートの計算)。当座貸越契約の極度額(借入枠)は、前期の40億円から140億円へ拡大されました。2026年3月末の借入実行残高はゼロです。

2027年3月期 第1四半期(2026年4~6月)の状況

項目 前年同期 当第1四半期 増減
売上高 33.80億円 40.43億円 +19.6%
売上総利益 7.53億円 9.07億円 +20.5%
(売上総利益率) 22.3% 22.4% ほぼ横ばい
販売費及び一般管理費 2.59億円 2.87億円 +11.1%
営業利益 4.94億円 6.20億円 +25.5%
(営業利益率) 14.6% 15.3% +0.7ポイント
四半期純利益 3.12億円 3.82億円 +22.6%

第1四半期は増収増益で、売上総利益率も前期通期の21.6%を上回る22.4%を維持しました。利益率の低下に歯止めがかかっている可能性がうかがえます。

一方、貸借対照表(2026年6月末)では、完成工事未収入金が72.47億円から89.77億円へ、わずか3か月で17.30億円増加しました。現金は29.79億円から21.16億円に減り、短期借入金10億円が新たに発生しています。配当金4.78億円の支払いもあり、純資産は99百万円減の92.25億円、自己資本比率は71.1%(2026年3月末は76.6%)に低下しました。四半期のキャッシュフロー計算書は作成されていないため、営業CFの実数は確認できません。

資金繰りの余裕度――当座貸越枠140億円との関係

2026年3月期に、当座貸越契約の極度額(銀行から借りられる上限)が40億円から140億円へ3.5倍に拡大されました。会社はこの拡大について、「大型案件の増加に対応すべく金融機関に信用枠を設けており、必要に応じて信用枠を利用している」と説明しています。売上債権が増えることを前提に、あらかじめ借入枠を広げたとみることができます(当レポートの解釈です)。

項目 2026年3月末 2026年6月末 増減
現金及び預金 29.79億円 21.16億円 ▲8.63億円
短期借入金 0円 10.00億円 +10.00億円
現金及び預金-短期借入金(実質的な手元資金) 29.79億円 11.16億円 ▲18.63億円
完成工事未収入金(契約資産を含む) 72.47億円 89.77億円 +17.30億円
当座貸越枠(極度額) 140億円 ― ―

※2026年6月末の当座貸越枠の数値は、四半期決算短信には記載がありません。

わずか3か月で、現金と借入を差し引いた実質的な手元資金は約18.6億円減りました。ほぼ同額(17.3億円)だけ、未収入金が増えています。この四半期は、増えた売上債権をほぼそのまま現金と借入で賄った格好です。ただし、借入額の10億円は、2026年3月末に設定された枠140億円の約7%にとどまります。

余裕度を見るため、極端な仮定を置いて試算してみます(当レポートの試算であり、予想ではありません)。仮に、今後の3四半期も第1四半期と同じペース(+17.3億円ずつ)で未収入金が増え続け、しかも利益による現金の流入がまったくないとすると、追加の資金需要は約52億円です。手元資金11.2億円を使い切ったうえで、借入枠の余力(最大約130億円)の約3分の1を使う計算で、枠の範囲内には収まります。実際には、四半期ごとに約4億円の純利益が現金を押し上げ、工事が完成すれば債権が回収されます。

ただし、注意点が2つあります。第一に、有価証券報告書に記載されているのは「当座貸越契約」で、銀行が融資を約束する「コミットメントライン」(貸出を確約する契約)かどうかは記載されていません。第二に、取引先の入金が遅れたり、大型工事で原価が想定を超えたりした場合には、借入が想定以上に膨らむ可能性があります。自己資本比率は71.1%と高く、財務の安定性は当面問題ない水準ですが、借入残高と未収入金の推移は、四半期ごとに確認したい項目です。

成長戦略・将来性

中期経営計画「TANAKEN“Vision NEXT 10”Secondary Phase」(2026~2028年度)

2026年5月8日に発表された新中期経営計画は、10年後のあるべき姿を描く長期ビジョン「Vision NEXT 10」の第2段階です。前の3か年計画(Primary Phase)が「基盤構築」だったのに対し、今回は「成長戦略」と位置づけられています。同社の決算説明資料などによると、最終年度(2029年3月期)の数値目標は次のとおりです。

項目 2026年3月期(実績) 2027年3月期(会社予想) 2029年3月期(計画目標)
売上高 148.20億円 160億円 200億円
営業利益 21.86億円 21億円 26億円
(営業利益率) 14.7% 13.1% 13.0%
ROE 17.1% ― 15%以上
配当性向 31.9% ― 30%以上
施工管理者数 53名 ― 80名

※計画目標は、同社の中期経営計画資料・決算説明資料による数値です。施工管理者数は有価証券報告書にも記載があります。

計画に沿って計算すると(当レポートの計算)、売上高は2026年3月期から3年間で年平均約10.5%の成長、営業利益は年平均約6%の成長が必要です。売上を伸ばしつつも、営業利益率は13%前後で横ばいという計画で、2026年3月期の14.7%からは低い水準を前提としています。これは、原価の上昇や、採用・広告への投資を織り込んだ保守的な計画とも、大型工事が増えるほど利益率が下がる構造を前提にした計画とも読めます。

施工管理者は53名(2026年3月期の目標55名に届かず)から、2029年3月期までに80名へ約5割増やす計画です。現場を任せられる人材の確保が、売上拡大の最大のボトルネックになる可能性があり、この点は会社自身も「人財の確保」をリスクとして挙げています。

営業戦略の重点

有価証券報告書は、営業戦略として次の5点を挙げています。

  • 都市再生案件の取り込み:再開発、物流倉庫、データセンターなどの需要を背景にした大型案件。
  • 顧客基盤の充実:相談を起点とした営業の好循環で、リピート顧客を増やす。
  • 地下関連工事の受注拡大:杭抜き工事、地中障害の撤去など、付加価値の高い工事。
  • 環境改善関連工事の受注:アスベスト除去、土壌改良など。
  • 人財育成と生産性向上:初任給の引上げ、研修制度の拡充、現場ITサポートシステムの強化など。

設備投資は、有価証券報告書の時点で「重要な設備の新設等の計画はない」とされ、研究開発活動も「該当事項なし」です。M&A(企業買収)の方針も記載されていません。資本を大きく投じず、人と施工管理の質を高めることで成長を狙うという姿勢です。

2027年3月期の会社予想

項目 2026年3月期(実績) 2027年3月期(会社予想) 増減率
売上高 148.20億円 160.00億円 +8.0%
営業利益 21.86億円 21.00億円 ▲3.9%
経常利益 22.11億円 21.00億円 ▲5.0%
当期純利益 15.02億円 14.00億円 ▲6.8%
1株当たり当期純利益 172.67円 160.94円 ―

会社は、増収でも減益を予想しています。理由は、人財確保と施工力強化のための「成長投資」を実施するためです。2026年7月31日の第1四半期決算でも、予想は据え置かれました。

第1四半期の実績を予想と比べると、進み具合は次のとおりです(当レポートの計算)。

項目 2027年3月期 通期予想 第1四半期の実績 進捗率 参考:前期の同時期の進捗率
売上高 160.00億円 40.43億円 25.3% 22.8%
営業利益 21.00億円 6.20億円 29.5% 22.6%
当期純利益 14.00億円 3.82億円 27.3% 20.7%

利益の進捗率は、前期の同じ時期を大きく上回っています。通期予想から第1四半期実績を引くと、残り9か月の営業利益は約14.8億円、売上高は約119.6億円で、営業利益率は約12.4%です(第1四半期の15.3%より低い)。

この予想がどのくらい保守的かを、売上総利益率の前提を変えて試算してみます(当レポートの試算であり、会社予想ではありません)。売上高は会社予想の160億円、販管費は第1四半期の伸び(前年同期比+11%)で前期の10.09億円から約11.2億円に増えると仮定しています。

通期の売上総利益率 営業利益(試算) 会社予想(21億円)との差
19.0% 約19.2億円 約▲1.8億円
20.0% 約20.8億円 ほぼ予想どおり
21.6%(前期通期) 約23.4億円 約+2.4億円
22.4%(第1四半期) 約24.6億円 約+3.6億円

会社予想は、売上総利益率が約20%まで下がる前提とほぼ整合します。前期通期(21.6%)や第1四半期(22.4%)の水準を維持できれば、予想を上回る余地があります。逆に、大型工事の追加原価などで利益率が19%台まで下がれば、予想に届かない可能性もあります。売上総利益率が1ポイント動くと、営業利益が約1.6億円動く(売上160億円の場合)計算です。

株主還元

配当方針:継続的な成長のための財務体質の強化と、株主への継続的かつ安定的な利益還元のバランスを勘案する方針です。「配当性向30%以上」を目標に掲げています。配当は年1回の期末配当が基本で、基準日は3月31日です。

配当の推移:

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期 2027年3月期(予想)
1株当たり配当額(各期に実際に支払った金額) 73円 80円 80円 55円 55円 55円
現在の株数基準に換算した配当額 36.5円 40円 40円 55円 55円 55円
配当性向 32.8% 32.0% 31.9% 30.4% 31.9% 約34.2%

※各期の配当額は、有価証券報告書の記載どおり、その期に実際に支払った金額です。2025年2月1日付で1株を2株に分割したため、分割前の2022年3月期~2024年3月期(73円・80円・80円)は、2で割って現在の株数基準(36.5円・40円・40円)に換算して比較しています(当レポートの計算)。2025年3月期以降の55円は分割後の金額のため、換算していません。2022年3月期の73円には、設立40周年の記念配当5円を含みます。一方、1株当たり当期純利益(EPS)と1株当たり純資産(BPS)は、有価証券報告書が分割後の株式数に修正済みの数値を記載しています。2027年3月期の配当性向は、予想配当55円÷予想EPS160.94円で算出しています。

配当性向とは、純利益のうち配当に回した割合です。5期連続で30%台前半を維持しており、目標の「30%以上」を守る姿勢が実績に表れています。2026年3月期は、1株当たり55円、総額4.78億円の期末配当を、2026年5月8日の取締役会で決議しました。2027年3月期も55円の予想で、減益予想でも増配・減配せず据え置く計画です。

株価1,495円(2026年9月18日)での配当利回りは約3.68%(55円÷1,495円)です。

自己株式の取得:単元未満株式の買取り(2株)を除き、実績はありません。自己株式は850株(発行済株式の約0.01%)で、消却や自己株取得の方針は記載されていません。株主優待制度は、有価証券報告書の記載からは確認できません。

ガバナンス・リスク

役員構成

2026年6月19日(有価証券報告書の提出日)現在、取締役は5名で、うち社外取締役が2名(40%)です。監査役は3名で、全員が社外監査役です。社外役員5名のうち4名(社外取締役2名、社外監査役のうち2名)は、東京証券取引所に独立役員として届け出られています。執行役員制度を導入して、経営の監督と業務執行を分離しています。役員は全員男性です。

経営陣の経歴には特徴があります。代表取締役社長執行役員の中尾安志氏(1962年生まれ)は、旧埼玉銀行(現・埼玉りそな銀行)の出身で、埼玉りそな銀行の副社長、富士倉庫運輸の社長を経て、2021年に就任しました。専務執行役員の内田政美氏も、りそな銀行の出身です。有価証券報告書の経歴上は、銀行出身者が経営の中核を担う体制で、社外取締役の中目隆夫氏も埼玉銀行の出身です。事業面では、施工本部長の白石憲治氏が、五洋建設の出身です。

役員報酬は、取締役(社外を除く3名)が9,456万円、社外役員(5名)が2,883万円でした。報酬が1億円以上の役員はいません。役員の持株数は合計で75,284株(発行済株式の約0.9%)です。

政策保有株式

保有目的が純投資以外の株式(政策保有株式)は、株式会社長谷工コーポレーション1銘柄(127,849株、貸借対照表計上額3.69億円)のみです。保有理由は「安定受注先の確保・取引拡大」で、取引先が運営する「協力会社持株会」を通じて毎月購入しています。純資産に占める割合は約4.0%(当レポートの計算)で、大きな割合ではありません。保有の意義は、毎年5月の取締役会で、受注・売上の状況と合わせて検証されています。政策保有株式とは、取引関係の維持・強化を目的に持つ株式のことです。純投資目的の株式はありません。

主なリスク

  • 運転資金の増加:大型の元請工事が増えるほど、代金回収の前に協力会社への支払いが先行します。営業CFは2026年3月期にマイナスとなり、2027年第1四半期にも短期借入金が10億円発生しました。借入枠は140億円ありますが、成長のペースが速いほど資金を先に使う構造です。
  • 取引先の信用リスク:売上債権と契約資産が総資産の約6割(2026年3月末)を占めます。会社は与信管理を厳格に行っているとしていますが、取引先の信用不安が生じた場合の影響は大きくなります。取引先はデベロッパーやゼネコンなど大手が中心です。
  • 不採算工事:工事の進み具合を「見積総原価に対する発生原価の割合」で売上計上(インプット法)しています。大型工事で原価が想定を大きく超えると、損失が発生するおそれがあります。2026年3月期の売上総利益率の低下は、その兆候とも読めます。
  • 人財・協力会社の確保:主任技術者の配置が必須で、優秀な資格者の採用・育成が事業拡大の前提です。また、地方現場の増加に伴い、協力会社の確保が難しくなる可能性があります。
  • 労働災害・近隣トラブル:解体現場での重大な事故や、騒音・振動・粉塵に関する苦情は、受注活動の制約や損害賠償につながるおそれがあります。
  • 建設需要・資材価格の変動:会社は、米国の通商政策、地政学リスク、ホルムズ海峡封鎖に伴うエネルギー・資材価格の上昇を、経営環境の不透明要因として挙げています。
  • 法的規制:建設業法、建設リサイクル法、廃棄物処理法、労働安全衛生法、土壌汚染対策法、大気汚染防止法などの規制を受けます。特定建設業の許可(有効期間は2030年11月20日)を維持できなくなった場合の影響は大きくなります。
  • 支配株主の存在:後述のとおり、1社が議決権の約6割を保有しています。

株主構成・株価情報

大株主の状況(2026年3月31日現在)

順位 株主名 持株数(株) 持株比率
1 スリーハンドレッドホールディングス株式会社 5,180,800 59.56%
2 富士倉庫運輸株式会社 222,800 2.56%
3 田中 俊昭 222,400 2.56%
4 大栄不動産株式会社 132,000 1.52%
5 吉岡 和利 115,000 1.32%
6 株式会社日本カストディ銀行(信託口) 112,400 1.29%
7 光通信KK投資事業有限責任組合 99,200 1.14%
8 鈴木 徹 91,800 1.06%
9~11 田中 俊恒、松野 洋子、鬼塚 麻紀子 各88,800 各1.02%
― 上位11名の合計 6,442,800 74.07%

スリーハンドレッドホールディングス株式会社が、発行済株式の59.56%を保有する筆頭株主です。有価証券報告書は、当社に「金融商品取引法第24条の7第1項に規定する親会社等はない」としており、関連当事者取引も「重要性が乏しい」として記載されていません。IRページには、「支配株主に関する報告書」(2026年6月15日付)が掲載されています。第3位の田中俊昭氏は創業者(1982年の設立者)で、持株比率は2.56%です。

所有者別では、その他の法人が66.23%、個人その他が28.98%、金融機関1.75%、外国法人等1.75%、金融商品取引業者1.22%です。個人株主の比率が約3割、機関投資家の比率は小さい構成です。株主数は2,016名です。

株価指標(2026年9月18日時点・Yahoo!ファイナンス)

指標 数値 算出の根拠
株価 1,495円 2026年9月18日終値
時価総額 約130億円 1,495円×8,699,600株
予想PER 約9.3倍 会社予想EPS 160.94円(2027年3月期)で計算
実績PER 約8.7倍 2026年3月期の実績EPS 172.67円で計算(当レポートの計算)
PBR 約1.41倍 2026年6月末のBPS 1,060.50円で計算(Yahoo!ファイナンスの表示値)
配当利回り 約3.68% 会社予想の配当55円で計算
ROE(実績) 17.12% 2026年3月期の実績
2026年の高値/安値(1月~9月18日) 1,870円(3/16)/1,300円(6/16) Yahoo!ファイナンス(暦年の年初来)
最低投資金額 約14.95万円 100株単位

PER(株価収益率)は、株価が1株当たり利益の何倍かを示す指標で、低いほど「利益に対して株価が割安」とされます。PBR(株価純資産倍率)は、株価が1株当たり純資産の何倍かを示します。PERが1桁台である一方、ROEは17%と高い組み合わせは、市場が同社の利益の持続性や、成長の質を慎重に見ていることの表れとも考えられますが、業界内での位置づけは、他社データとの比較が必要です。

現在の株価(1,495円)は、2026年(1月~9月18日)の高値(1,870円)から約20%低く、安値(1,300円)から約15%高い水準にあります。なお、有価証券報告書に記載された2026年3月期(2025年4月~2026年3月)の株価レンジは1,125~1,870円で、期間が異なるため安値は一致しません(高値の1,870円は3月16日で、両方の期間に含まれます)。株主総利回り(配当込み)は132.9%で、比較指標の配当込みTOPIX(202.2%)を下回りました。

株式分割・単元株

2025年2月1日付で、普通株式1株を2株に分割しました(発行済株式総数は4,349,800株から8,699,600株)。売買単位(単元株式数)は100株です。新株予約権などの潜在株式は存在しません。

まとめ

TANAKEN(1450)は、ビルやマンションなどの解体工事を、協力会社を活用した「持たざる経営」で手がける専業会社です。過去4年間で売上高が約1.5倍に成長し、ROE 17%、自己資本比率77%、配当性向30%以上の継続と、財務の安定性・収益性・株主還元がそろっている点が特徴です。2026年3月期の受注高は過去最高の185.92億円、繰越工事高は119.31億円と、先の売上に見通しが立っています。

一方で、注意すべき点もあります。2026年3月期は、売上が2割伸びたのに営業利益は6.1%減り、売上総利益率が26.9%から21.6%へ下がりました。また、代金回収が後ろにずれる構造から、営業CFは純利益を計上しながらマイナスとなり、2027年第1四半期には短期借入金10億円が発生しています。株主面では、1社が59.56%を保有する構造で、市場に流通する株式は限られます。

会社は2027年3月期に増収減益を予想していますが、第1四半期の利益進捗率は29.5%と高く、売上総利益率が20%を上回って推移すれば、予想を超える余地があります。今後の四半期決算では、次の3点を確認することがポイントになります。

【今後のチェックポイント】

  • 売上総利益率が20%台前半を維持できるか:2026年3月期は21.6%、2027年3月期第1四半期は22.4%。会社予想が前提とする約20%を下回らないかが、利益の分かれ目です。
  • 営業CFの改善と売上債権の回収:完成工事未収入金(2026年6月末は89.77億円)の増加ペースが鈍り、短期借入金(同10億円)が減少に転じるか。営業CFがプラスに戻るかも確認したい点です。
  • 施工管理者数の増加:2026年3月期の53名から、2029年3月期までに80名へ。採用の進み具合が、売上200億円の目標を左右します。

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