【1447】SAAFホールディングス

2026/09/21

企業分析

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企業概要

SAAFホールディングス株式会社(証券コード:1447、東京証券取引所グロース市場)は、東京都江東区に本社を置く企業グループの持株会社です。決算期は3月で、2026年3月期が第8期にあたります。2018年10月に、ITbook株式会社とサムシングホールディングス株式会社の共同株式移転によって設立され、同時に東証マザーズ(現グロース市場)に上場しました。2024年9月に「ITbookホールディングス」から現在の社名に変更しています。連結子会社は17社、連結従業員数は1,315名(2026年3月末)です。

パーパス(存在意義)には「様々な社会課題に対してソリューションを提供する企業」を、経営理念には「ICT技術・DXにより社会インフラの効率的、効果的付加価値の向上及び社会貢献を目指す」を掲げています。2026年3月期は、事業を次の4つの報告セグメントで開示しています(売上構成比は2026年3月期)。

  • 建設土木事業(構成比58.1%):戸建て・マンション・ビル等の地盤調査・地盤改良工事、鉄道関連の土木基礎工事、土質調査、地盤保証・住宅検査などを手がける最大の事業です。子会社の株式会社サムシングが中核で、連結売上高の約4割を1社で占めます。
  • システム開発事業(同19.2%):ニアショア開発(地方拠点でのシステム開発)、ソフトウェア開発、IoT機器・環境計測製品の開発販売、ハードウェア販売などを行います。NXTech株式会社などが担います。
  • 人材事業(同14.9%):教育分野を中心とした人材派遣・紹介事業です。
  • コンサルティング事業(同7.7%):官公庁・地方自治体・民間企業向けに、業務や情報システムの整理・再構築、DX支援などを提供します。

同社は、自ら建設土木の施工現場を持つ強みを、デジタル人材とDXに結び付ける「現場デジタルプロバイダー」を長期ビジョンに掲げています。過去にM&Aで事業を広げた経緯があり、直近では2024年12月に株式会社ユーシンを子会社化(取得資金はシンジケートローン18億円)した一方、2026年3月には人材事業の株式会社アイニードを株式会社富士ロジテックホールディングスへ譲渡するなど、事業ポートフォリオ(事業の組み合わせ)の見直しも進めています。なお「その他事業」は、各社の清算手続きが終わり次第、セグメント自体を廃止する予定です。

業績・財務情報

直近5年間の連結業績(3月期)

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高(億円) 263.47 305.28 292.70 288.56 295.81
経常利益(億円) 1.57 7.08 7.68 1.43 10.02
親会社株主に帰属する当期純利益(億円) ▲7.66 1.62 1.83 ▲1.29 4.60
1株当たり当期純利益(円) ▲35.59 6.93 7.59 ▲5.28 18.87
自己資本比率 10.1% 15.7% 16.0% 15.6% 14.2%
ROE(自己資本利益率) ― 7.3% 6.6% ― 18.1%

※億円表記は、有価証券報告書の千円単位の実数を小数第3位で四捨五入したものです(例:経常利益1,001,811千円=10.02億円、営業利益1,093,865千円=10.94億円、売上高29,580,675千円=295.81億円)。

売上高は年間290億円前後でほぼ横ばいですが、利益は年ごとの振れが大きいのが特徴です。2026年3月期は経常利益が前期の約7倍の10.02億円に増え、純利益も赤字から4.60億円の黒字に転換しました。一方で自己資本比率は14%台と低い水準にとどまっています。

2026年3月期(第8期)の内訳

項目 2025年3月期 2026年3月期 増減率
売上高 288.56億円 295.81億円 +2.5%
売上総利益 71.63億円 75.70億円 +5.7%
販売費及び一般管理費 68.29億円 64.76億円 ▲5.2%
営業利益 3.34億円 10.94億円 +327.5%
経常利益 1.43億円 10.02億円 +701.5%
親会社株主に帰属する当期純利益 ▲1.29億円 4.60億円 黒字転換

営業利益が大きく増えた最大の理由は費用の圧縮です。売上総利益率は24.8%から25.6%へ改善し、売上高に対する販管費の比率は23.7%から21.9%へ低下しました。会社は、社内DXによる管理部門コストの最適化と、不採算事業の縮小・清算を要因に挙げています。営業利益率は3.7%で、会社が中長期的に掲げる「5%以上」にはまだ届いていません。

経常利益から純利益に至る過程では、特別利益2.61億円(子会社株式売却益1.88億円、事業譲渡益0.49億円など)と、特別損失3.16億円(特別調査費用等1.89億円、事業撤退損0.66億円、固定資産除却損0.42億円など)が発生しています。さらに、税金等調整前当期純利益9.47億円に対して法人税等が4.89億円と、税負担率が約52%に達しました。純利益が経常利益の半分以下(4.60億円)にとどまったのは、この特別損益と税負担の重さによるものです。赤字の子会社の損失が税金の計算上うまく相殺できていない可能性がありますが、詳細は資料からは読み取れません。

セグメント別の状況(2026年3月期)

セグメント 売上高 前期比 セグメント利益 前期比
建設土木事業 171.80億円 +1.2% 2.38億円 前期は▲0.54億円の損失
システム開発事業 56.81億円 +4.5% 1.96億円 ▲4.0%
人材事業 44.28億円 +5.1% 1.50億円 +6.0%
コンサルティング事業 22.76億円 +14.1% 2.55億円 +2.1%
その他事業 0.16億円 ▲93.2% ▲0.06億円 前期は▲1.02億円の損失

主力の建設土木事業が前期の赤字から黒字に転換したことが利益改善の柱です。新設住宅着工戸数が前年から14.3%減少する厳しい環境でも、拠点の再編(九州・東北)によるコスト見直しや、海外(ベトナム)事業の赤字縮小が寄与しました。コンサルティング事業は、防災・教育分野のDX需要を取り込んで+14.1%の増収でした。

キャッシュフローと財務体質

項目 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
営業活動によるキャッシュフロー 5.72億円 3.05億円 20.69億円
投資活動によるキャッシュフロー ▲0.05億円 ▲16.47億円 ▲18.81億円
財務活動によるキャッシュフロー 9.25億円 ▲4.05億円 0.29億円
現金及び現金同等物の期末残高 47.95億円 30.44億円 32.64億円

2026年3月期は、営業キャッシュフロー(本業で稼いだ現金)が20.69億円と大きく伸びました。ただし、投資活動では投資有価証券の取得に1,680,693千円(約16.81億円)を支出しており、稼いだ現金の大半が株式投資に回った形です(詳細は後述)。

貸借対照表(2026年3月末)では、総資産171.69億円に対し、純資産は25.96億円、自己資本比率は14.2%です。借入金とリース債務を含む有利子負債は99.57億円で、総資産の57.9%を占めます。売上債権(受取手形・売掛金・契約資産)も総資産の32.4%を占めており、資金繰りは銀行借入と売上代金の回収に大きく依存する構造です。なお、自己資本比率とは、総資産のうち返済不要の自己資本が占める割合で、低いほど借入に頼った経営であることを示します。

2027年3月期第1四半期(2026年4~6月)――営業は好調、最終は13億円の赤字

項目 前年同期 当第1四半期 増減率
売上高 71.72億円 66.69億円 ▲7.0%
売上総利益 18.58億円 18.54億円 ▲0.2%
販売費及び一般管理費 17.78億円 16.13億円 ▲9.2%
営業利益 0.80億円 2.41億円 +198.9%
経常利益 0.93億円 1.96億円 +110.7%
特別損失 0.06億円 13.88億円 ―
親会社株主に帰属する四半期純損益 ▲0.15億円 ▲12.99億円 赤字拡大
1株当たり四半期純損益 ▲0.60円 ▲53.34円 ―

本業の利益(営業利益・経常利益)は大きく改善しました。売上総利益率は25.9%から27.8%へ、営業利益率は1.1%から3.6%へ上昇しています。売上高が減ったのは、2026年3月に譲渡したアイニードが前年同期の人材事業の売上に含まれているためで(人材事業は前年同期比43.5%)、建設土木事業は+7.2%と伸びています。セグメント利益も、建設土木事業が前年同期の▲0.28億円から3.31億円へ、システム開発事業が▲0.22億円から0.49億円へ黒字化しました。

一方で、特別損失が13.88億円に膨らみ、最終損益は12.99億円の赤字になりました。内訳は、投資有価証券評価損10.19億円、特別調査費用等3.40億円、固定資産除却損0.30億円などです。

  • 投資有価証券評価損(10.19億円):保有する株式の時価が大きく下がったため、損失として計上したものです。決算短信には銘柄は明記されていません。有価証券報告書によると、保有株式のうち最大の銘柄は、2026年3月に資本業務提携を公表した株式会社Schoo(取得価額16.46億円)で、2026年3月末時点の貸借対照表計上額は9.98億円と、すでに取得価額を約6.5億円下回っていました。なお、この評価損の一部は、もともと純資産の「その他有価証券評価差額金」(未実現の評価損を純資産に反映する科目)に計上されていた損失を、損益計算書に振り替えたものとみられます。実際、第1四半期に純損失が12.95億円(非支配株主分を含む)発生した一方で、評価差額金の戻り(約6.4億円)があったため、純資産の減少幅は7.68億円(25.96億円→18.28億円、配当の未払計上1.10億円を含む)にとどまっています。
  • 特別調査費用等(3.40億円):2026年3月期にも1.89億円が計上されており、2期連続の特別損失です。決算短信には内容の説明がありません。有価証券報告書では、経営課題として「過年度に発生した連結子会社における不適切な会計処理事案」の再発防止に取り組んでいると記載されています。

税金等調整前で約12億円の損失なのに、法人税等が1.05億円計上されている点も目を引きます。特別損失の税務上の効果が認められていないなど、損失に見合った税金の軽減が受けられていない可能性がありますが、詳細は開示されていません。

財務状況(2026年6月末)と通期予想の読み方

項目 2026年3月末 2026年6月末
総資産 171.69億円 160.62億円
純資産 25.96億円 18.28億円
自己資本比率 14.2% 10.4%
現金及び預金 34.37億円 44.79億円
受取手形・売掛金・契約資産 55.76億円 40.38億円
借入金合計(短期+1年内返済予定+長期) 94.41億円 92.12億円
のれん 14.67億円 14.19億円

自己資本比率は10.4%まで低下しました。売上債権の回収が進み、現金が10億円増えて借入金も減っていますが、最終赤字によって純資産が薄くなったことが原因です。なお、のれん(買収時に上乗せして支払った差額を資産計上したもの)が純資産の約78%に相当する規模になっている点にも注意が必要です(2026年3月末は約56%)。

2027年3月期の通期予想(売上高283.27億円、営業利益12.00億円、経常利益10.50億円、純利益4.41億円、1株当たり純利益18.10円)は、2026年5月11日公表から据え置かれています。 第1四半期の実績と比較すると、次の点に留意が必要です。

  • 純利益は、第1四半期が▲12.99億円だったため、通期予想(4.41億円)を達成するには、残りの3四半期で約17.4億円の純利益が必要となります。ただし、この通期予想が第1四半期の特別損失をあらかじめ織り込んでいたかどうかは、決算短信からは判断できません。
  • 営業利益は、通期予想12.00億円に対し第1四半期が2.41億円で、残り3四半期の平均は約3.2億円と、第1四半期の水準を上回る必要があります。売上高も、残り3四半期の平均は約72.2億円で、第1四半期の66.7億円を上回る想定です。
  • 通期予想の売上高は前期比▲4.2%の減収ですが、これはアイニード譲渡の影響が大きいとみられます。

通期予想と第1四半期の特別損失の関係(当レポートの整理):2026年4月28日に同社が開示した「通期業績予想の修正および特別損失の計上に関するお知らせ」は、報道の見出し(「前期経常を28%上方修正」)から、決算期末前の2026年3月期の予想を引き上げる内容だったとみられます(開示本文は取得できず、見出しベースの確認です)。2026年3月期に計上された特別調査費用等1.89億円は、この時点で織り込まれていたと考えられます。一方、2027年3月期の予想は2026年5月11日に公表されており、第1四半期の特別損失13.88億円(投資有価証券評価損10.19億円、特別調査費用等3.40億円)は、その後に発生したものです。

2027年3月期予想は経常利益10.50億円に対して純利益4.41億円と、前期の実績(経常10.02億円→純利益4.60億円)とほぼ同じ比率になっており、10億円規模の特別損失を見込んだ形ではありません。決算短信は「5月11日公表から変更なし」としていますので、通期予想は第1四半期の特別損失を織り込んでいない可能性が高いと当レポートでは整理しています(会社の説明が確認できたわけではありません)。この場合、通期純利益は予想(4.41億円)を大きく下回るか、損失を回収するだけの利益上積みが必要になります。今後の四半期決算で、予想の修正の有無を確認することが重要です。

成長戦略・将来性

有価証券報告書によると、同社は前中期経営計画の未達を受けて事業ポートフォリオを見直し、2027年3月期を初年度とする新中期経営計画「MTG2028」を策定しました。前中計の未達要因は、事業環境の変化への対応の遅れに加え、「グループガバナンス機能の不全による経営判断および業務執行の停滞」があったと自ら分析しています。基本方針は、建設土木・コンサルティング・システム開発・人材の4事業を連携させ、「現場デジタルプロバイダー」へ進化することです。重点施策は次の3つです。

  • デジタルプロバイダーへの進化:DX構想の策定から、システム開発、運用支援、人材提供までを一貫して提供できる体制をつくります。
  • 人材プラットフォームの構築:2026年3月に公表した株式会社Schooとの資本業務提携を活用し、既存SES人材(客先常駐のエンジニア)のリスキリング(学び直し)、AI・DX人材の育成、自治体向けDX支援人材の拡充を進めます。
  • 建設DXの推進:地盤関連サービスで培った技術力や顧客基盤を生かし、ICT・AI・IoTを活用した施工現場の効率化やインフラ維持管理サービスを展開します。老朽化した社会インフラの維持管理・更新需要の拡大も追い風と位置付けています。

収益性の目標としては、売上高営業利益率5%以上の安定的な達成を中長期で目指しています。2027年3月期予想の営業利益率は約4.2%(12.00億円÷283.27億円)で、目標に近づく計画です。また、2027年3月期より事業持株会社体制へ移行する予定で、グループ経営管理機能の高度化を進めています。設備投資では、2026年3月期に6.47億円を投じ、うち4.81億円が建設土木事業の地盤改良機などの機械装置とリース資産です。研究開発費は0.31億円と小規模です。MTG2028の売上高・利益の数値目標そのものは、今回確認できた有価証券報告書・決算短信には記載がありません。

分析上の視点として、建設土木事業は売上の約6割を占める一方で、セグメント利益率は1%台(2026年3月期のセグメント利益2.38億円÷売上高171.80億円)と低く、少しの原価上昇でも利益が振れやすい構造です。DX関連事業や人材事業で高い収益性を実現できるかが、営業利益率5%の達成の鍵となりそうです。同業他社と比較した競争優位性や、業界内での位置づけについては、他データとの比較が必要です。

株主還元

項目 2026年3月期 2027年3月期(予想)
1株当たり配当金(期末のみ) 4.50円(普通配当2.00円+記念配当2.50円) 4.80円
配当性向(配当金÷1株当たり純利益) 26.24% 約26.5%
配当金総額 1.10億円 ―
配当利回り(株価343円ベース) ― 約1.40%

配当は期末の年1回が基本方針です。有価証券報告書の「配当政策」には、2026年3月期の配当について「普通配当(1株当たり2円)に加え、2018年設立以来過去最高益達成を踏まえた記念配当(2円50銭)」をあわせた1株当たり4円50銭(配当金総額109,636千円=約1.10億円)とすると記載されています。2027年3月期の予想は4.8円で、記念配当を含む前期実績を上回る計画ですが、前期の普通配当(2円)と比べると2.8円の増額、記念配当を含む前期実績(4.5円)との比較でも0.3円の増配です。会社の予想する配当性向は約26.5%ですが、前述のとおり第1四半期が大幅な赤字であるため、通期の純利益が予想を下回った場合は、配当性向の数値は変わる可能性があります。なお、期末配当は2026年6月29日の定時株主総会で決議済みで、第1四半期の貸借対照表には未払配当金1.10億円が計上されています。

自己株式の取得を目的とした具体的な方針や大規模な実績は、資料上は確認できません。2026年6月末の自己株式は9万4,698株(発行済株式総数の約0.4%)にとどまります。

ガバナンス・リスク

同社は監査役会設置会社で、取締役は7名(社内取締役3名、社外取締役4名)、これに監査役を加えた役員は10名(男性8名、女性2名)です。社外取締役の比率は約57%と高く、上場企業の経営者や人材業界出身者などを含む構成です。また、「経営監督機能」と「業務執行機能」を分離するため執行役員制度を見直し、任意の「指名・報酬委員会」を新設するとしています。2025年6月には経営陣が刷新され、左奈田直幸氏が代表取締役社長執行役員に就任しました。

政策保有株式(取引関係の維持などを目的に保有する株式)は2銘柄、貸借対照表計上額の合計は11.74億円(2026年3月末)です。内訳は、株式会社Schoo(9.98億円)と、サンネクスタグループ株式会社(1.76億円)です。この11.74億円は純資産(25.96億円)の約45%に相当し、無視できない大きさです。同社は、保有の意義が薄れた政策保有株式は速やかに処分・縮減する方針ですが、Schoo株式は2026年3月期中に約16.5億円で取得したばかりで、前述のとおり取得から1四半期で10億円規模の評価損を計上しました。なお、サンネクスタグループは同社の大株主(1.91%)でもあり、持ち合いの関係にあります。

特に注目したいリスク

1つ目は、支配権をめぐる株主との対立です。同社の開示や報道によると、経緯は次のとおりです。

  • 2026年2月19日:株主による臨時株主総会の招集請求に対して、取締役会が意見を開示。
  • 2026年2月25日:当社株式の20%以上の取得を対象とする「買収への対応方針」(いわゆる買収防衛策)を導入。
  • 2026年3月:会社側が、複数の株主が連携して株式を取得している可能性(いわゆる「ウルフパック」)を認定したと報じられた。
  • 2026年5月7日:株主による臨時株主総会の株主提案に対し、取締役会が反対の意見を開示。
  • 2026年8月3日:会社が、共同協調行為の対象を19名(既認定16名に3名追加)に拡大し、同グループの議決権割合が25.97%に達しているにもかかわらず対応方針の手続を守っていないとして、新株予約権の無償割当て(対抗措置)を決定。2026年8月25日の臨時株主総会で、対象株主を除いた少数株主の多数決(MoM方式)により承認を求め、割当ての基準日は2026年9月24日と設定。

報道によると、この対立の相手方には、創業者で元代表取締役の前俊守氏(大株主2位、持株比率5.82%)が含まれるとされ、前氏側は会社側の認定や主張に反論しており、両者の主張は対立しています。株主提案では、現取締役全員の解任と新取締役の選任が求められているとの報道もあります。臨時株主総会の結果や、その後の展開は本稿の作成時点で確認できておらず、最新の状況は同社の適時開示でご確認ください。 この対立が続く間は、株価が業績よりも支配権をめぐる思惑で動く可能性や、対応にかかる費用が業績に影響する可能性があります。

2つ目は、財務の脆弱性と財務制限条項です。有利子負債が総資産の57.9%を占め、自己資本比率は10.4%まで低下しています。同社は2024年12月に組成した18億円のシンジケートローン(担保あり)に、次の財務制限条項が付されています。

  • ① 各決算期末の連結純資産を、「直前の決算期末」と「2024年3月期末」のいずれか大きい方の75%以上に維持する。
  • ② 経常損益を2期連続で損失としない。
  • ③ 有形固定資産と投資有価証券の取得による支出の合計を10億円以内に収める(貸付人の事前承諾があれば除く)。

条項①の基準額は、2024年3月期末の純資産31.21億円の75%にあたる約23.4億円(当レポートによる計算)です。2026年3月末の純資産25.96億円は、これを約2.6億円上回っていました。一方、2026年6月末の純資産18.28億円は、この基準を下回る水準です。条項は決算期末に判定されるため、第1四半期末の数字がただちに抵触を意味するわけではありませんが、2027年3月期末に基準を満たすには、残り3四半期で少なくとも約5.1億円の純資産の積み増し(純利益ベース)が必要になる計算です。また、条項③について、2026年3月期は投資有価証券の取得だけで16.81億円を支出しており、この水準を上回っています(例外規定あり)。

3つ目は、過去の不適切な会計処理事案と内部統制です。有価証券報告書は、過年度に連結子会社で発生した不適切な会計処理事案の再発防止に取り組んでいるとしており、2025年6月の経営陣刷新後にグループ管理と内部監査機能の強化を進めています。特別調査費用等が2期連続で計上されている点は、引き続き注視が必要です。

4つ目は、のれんの減損リスクと人材確保です。のれん14.19億円(2026年6月末)は純資産の約78%に相当し、買収先の業績が想定を下回れば、減損で純資産が一段と薄くなる可能性があります。また、ITコンサルタントやシステムエンジニア、建設現場の技術者の確保は事業成長の前提であり、人材の獲得競争が激しくなっている点も事業等のリスクに挙げられています。

このほか、売上債権(総資産の32.4%)の未回収リスク、原材料(セメント・鋼材)の価格変動、地盤調査・施工の瑕疵による損害賠償リスク、システム開発の検収時期の遅れによる売上計上のずれ、情報セキュリティ、金利上昇による負担増(有利子負債依存度が高いため)などが開示されています。

株主構成・株価情報

2026年3月31日現在の大株主は以下のとおりです(自己株式を除く発行済株式総数24,363,672株に対する割合)。

株主名 持株比率
FP成長支援F号投資事業有限責任組合 7.47%
前 俊守 5.82%
合同会社YN企画 4.39%
株式会社TMフィナンシャルストラテジー 3.24%
ミツワ樹脂工業株式会社 2.55%
松井証券株式会社 2.44%
イーグルファンドSP4号有限責任事業組合 2.24%
広田証券株式会社 2.05%
サンネクスタグループ株式会社 1.91%
楽天証券株式会社共有口 1.76%
上位10名合計 33.90%

大株主が1桁台の持株比率で分散しており、筆頭株主でも7.47%にとどまるのが特徴です。上位10名の合計も33.90%と、特定の親会社や創業家が過半を握る構造ではなく、支配権をめぐる動きが起きやすい株主構成といえます。なお、前述の対応方針に関する会社側の開示では、共同協調行為の対象とされた株主グループ全体の議決権割合は25.97%とされています(2026年8月3日時点の会社の認定であり、上表とは基準日や対象が異なります)。

発行済株式総数は2,444万6,958株(うち自己株式9万4,698株、2026年6月末)、単元株式数は100株です。

株価指標(Yahoo!ファイナンス掲載値、株価は2026年9月15日終値時点)

項目 数値 算出根拠
株価 343円 2026年9月15日時点の表示
時価総額 約83.9億円 発行済株式総数(自己株式含む)ベース
PER(株価収益率) 約19.0倍 会社予想EPS 18.10円(2027年3月期)ベース
PBR(株価純資産倍率) 約5.0倍 実績BPS 68.66円(2026年6月末時点の自己資本ベース)ベース
配当利回り 1.40% 会社予想配当4.80円ベース
ROE(自己資本利益率) 18.07% 実績(2026年3月期)
自己資本比率 10.4% 決算短信(2026年6月末)※Yahoo!ファイナンス表示は14.2%(2026年3月末)
52週高値/安値 475円(2026年2月12日)/251円(2026年6月25日) Yahoo!ファイナンス掲載値

PER(株価収益率)は株価が1株当たり利益の何倍かを示す指標ですが、同社の2027年3月期の会社予想は第1四半期の大幅な赤字を含んだうえで据え置かれているため、達成できるかを見極める必要があります。PBR(株価純資産倍率)は株価が1株当たり純資産の何倍かを示し、約5倍と高い水準にあるのは、自己資本が薄い(自己資本比率10.4%)ことに加え、支配権をめぐる株主間の動きが株価に影響している可能性がありますが、要因の特定はできません。ROE(自己資本利益率)18.07%は、分母である自己資本が小さいことで高く出やすい点に留意が必要です。株価は変動するため、最新の数値は証券会社のサイト等でご自身にてご確認ください。同業他社との比較(業界内での位置づけ)には、他データとの比較が必要です。

PBRと1株当たり純資産(BPS)の関係――評価損・のれん減損のインパクト

PBR約5倍の水準は、分母であるBPSが小さいことが一因です。2026年6月末の自己資本は16.72億円、自己株式を除く発行済株式数は約2,435万株で、BPSは約68.7円(343円÷68.66円=約5.0倍)です。追加の損失が出た場合の影響を、当レポートで単純に試算すると次のとおりです(税効果は考慮せず、他の条件は一定とします)。

ケース 自己資本 BPS 343円でのPBR
2026年6月末(実績) 16.72億円 約68.7円 約5.0倍
追加損失10億円が発生 6.72億円 約27.6円 約12.4倍
のれん14.19億円を全額減損 2.53億円 約10.4円 約33.0倍

のれんを全額減損する極端なケースでは、自己資本比率は約1.7%(2.53億円÷のれん控除後の総資産146.4億円)、純資産(非支配株主持分1.56億円を含む)は4.09億円まで縮小します。損失10億円は1株当たり約41円に相当し、BPS(約68.7円)の約6割にあたります。これは減損が実際に起きるという予測ではなく、財務の薄さを数字で示すための機械的な試算です。

財務制限条項のシナリオ(純資産条項①)

条項①の基準額は約23.40億円(2024年3月期末の純資産31.21億円×75%。2026年3月末の25.96億円より2024年3月期末の方が大きいため、こちらが基準)です。判定は決算期末(2027年3月末)の連結純資産で行われます。2026年6月末の純資産は18.28億円で、配当(1.10億円)はすでに未払配当金として差し引かれています。第2~第4四半期に必要な純資産の積み増しは約5.12億円です。

第2~第4四半期の純利益(評価差額金の変動を含む) 2027年3月末の純資産(概算) 基準(23.40億円)との差
会社予想どおり(約17.4億円) 約35.7億円 約12.3億円の余裕
約5.1億円 約23.4億円 ほぼ基準ぎりぎり
0円(利益なし) 約18.3億円 約5.1億円の不足

通期予想を達成できなくても、約5.1億円を積み上げれば条項①は満たせる計算です。第1四半期の営業利益は2.41億円ですから、営業段階の稼ぐ力から見ればハードルは高くありませんが、追加の評価損や特別調査費用、税負担(前期の税負担率は約52%)が重なると、利益の上積みが目減りする点に注意が必要です。また、保有株の時価が回復すれば純資産に戻る効果(評価差額金)も働きます。抵触した場合の取り扱いは、有価証券報告書に具体的な記載がありません(一般に、貸付人との協議や、条項の免除・見直しが行われることがあります)。条項②(経常損失の2期連続)は、2026年3月期・2027年3月期第1四半期とも経常黒字のため、現時点では抵触していません。

なお、対抗措置(新株予約権の無償割当て)が実行された場合の株式の希薄化については、割当比率や行使条件などの条件が確認できていないため、当レポートでは定量的な試算を行っていません。

まとめ

SAAFホールディングス(1447)は、地盤調査・改良を主力とする建設土木事業を中核に、システム開発・人材・コンサルティングを組み合わせ、「現場デジタルプロバイダー」を目指す企業グループです。2026年3月期は、費用の圧縮と建設土木事業の黒字化によって営業利益が約3.3倍、純利益も黒字転換し、2027年3月期の第1四半期も営業利益・経常利益が大幅に改善するなど、本業の収益力は着実に回復しています。

一方で、注意すべき点も多く残ります。第1四半期は投資有価証券評価損と特別調査費用等で最終損益が12.99億円の赤字となり、自己資本比率は10.4%まで低下しました。有利子負債が総資産の約6割を占め、借入契約には純資産に関する財務制限条項が付されています。さらに、創業者を含む株主グループとの間で支配権をめぐる対立が続いており、対抗措置(新株予約権の無償割当て)の行方や、通期予想(純利益4.41億円)を据え置いたまま達成できるかが、今後の最大の注目点となりそうです。業績の改善と、株主対立や財務体質のリスクの両面を、開示資料で継続的に確認することが大切です。

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