【1444】ニッソウ

2026/09/12

企業分析

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企業概要

株式会社ニッソウ(証券コード:1444、東京証券取引所グロース市場および名古屋証券取引所ネクスト市場に重複上場)は、東京都世田谷区に本社を置くリフォーム会社です。1987年に代表取締役社長である前田浩氏が個人事業として創業し、1988年に法人化しました。2018年に東証TOKYO PRO Marketへ上場した後、2020年に名古屋証券取引所セントレックス、2022年に東証グロース市場へと段階的に上場市場を移してきました。

事業は3つのセグメントで構成されています。

  • リフォーム事業:一戸建て・集合住宅・賃貸住宅等の原状回復工事やリノベーション工事を、主に首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)で展開する中核事業です。連結売上高の9割超を占めます。
  • 不動産流通事業:不動産の売買・仲介・買取再販を、神奈川県の湘南エリアを中心に展開する事業で、子会社の日本リゾートバンク株式会社が主に手がけています。
  • 不動産建設事業:注文住宅・建売住宅・住宅用土地の提供を、栃木県を中心に展開する事業で、2024年10月に子会社化した株式会社平成ハウジングが中心です。

同社の特徴は、積極的なM&A(企業買収)によって事業領域を拡大してきた点にあります。2023年7月期に日本リゾートバンク株式会社および株式会社ヤナ・コーポレーションを、2024年7月期に株式会社ささきを、2025年7月期には株式会社平成ハウジングを相次いで子会社化し、リフォーム一本足の事業構造から不動産流通・不動産建設へと領域を広げてきました。有価証券報告書でも「積極的なM&Aを実施し、収益基盤の安定化、多様化に取り組んでおります」と、M&Aを成長戦略の柱として明記しています。

業績・財務情報

2025年7月期(第37期)連結業績

項目2024年7月期2025年7月期増減率
売上高46.79億円52.80億円+12.8%
営業利益0.56億円0.73億円+28.9%
経常利益0.63億円0.70億円+9.6%
親会社株主に帰属する当期純利益0.25億円2.03億円+705.8%
自己資本比率54.2%49.3%▲4.9pt
ROE(自己資本利益率)1.7%12.6%+10.9pt

2025年7月期は増収増益となりましたが、純利益の大幅な伸びには一時的な特殊要因が含まれている点に注意が必要です。同期には、保有していた株式会社安江工務店の株式を譲渡したことに伴う関係会社株式売却益2.68億円を特別利益として計上しており、純利益の急増(前期比+705.8%)は主にこの一過性の売却益によるものです。本業の実力を示す経常利益ベースでは、前期比9.6%増の0.70億円にとどまっています。

セグメント別の状況は次のとおりです。

セグメント売上高増減率セグメント利益(△は損失)
リフォーム事業47.88億円+8.7%0.83億円(+96.5%)
不動産流通事業1.97億円▲28.2%0.11億円(+0.9%)
不動産建設事業2.95億円―△0.23億円

主力のリフォーム事業は、子会社である株式会社ささきの通期連結化もあって完成工事高が伸び、セグメント利益もほぼ倍増しました。一方、2024年10月に子会社化したばかりの不動産建設事業は、注文住宅・分譲住宅の受注・販売が計画を下回り、セグメント損失を計上しています。

過去3年間の業績推移

連結決算を開始した2023年7月期以降の推移は次のとおりです。

項目2023年7月期2024年7月期2025年7月期
売上高(億円)41.6746.7952.80
経常利益(億円)1.430.630.70
純利益(億円)0.690.252.03
自己資本比率59.4%54.2%49.3%

売上高はM&Aによる連結範囲拡大もあって3年間で約26.7%増加した一方、経常利益は2024年7月期に大きく落ち込み、その後も本格回復には至っていません。自己資本比率も59.4%から49.3%へと3年連続で低下しており、M&Aや事業拡大に伴う借入金の増加などにより、財務レバレッジが高まる傾向がうかがえます。

2026年7月期第3四半期(2025年8月~2026年4月)の状況

項目前年同期当第3四半期累計増減率
売上高39.51億円39.57億円+0.1%
営業利益(△は損失)0.59億円△0.21億円赤字転落
経常利益(△は損失)0.59億円△0.24億円赤字転落
親会社株主に帰属する四半期純利益(△は損失)1.97億円△0.75億円赤字転落

2026年7月期は、9カ月累計で営業損益・経常損益・純損益のいずれもが赤字に転落しました。 主力のリフォーム事業は増収(完成工事高+4.8%)を確保したものの、工事受注件数の減少や原価率・人件費の増加により営業利益は前年同期比64.3%減にとどまりました。不動産流通事業は主力の「海を望むリゾート物件」で投資採算基準を満たす仕入案件が少なく販売が計画未達となり、不動産建設事業も受注・販売が想定を下回るなど、リフォーム以外の2事業がいずれも営業損失を計上したことが響いています。なお、前年同期の大幅な純利益(1.97億円)には前述の関係会社株式売却益が含まれていたため、その反動も純損益の悪化幅を大きく見せている点は留意が必要です。

会社側は通期業績予想を据え置いており、2026年7月期通期は売上高55.15億円(前期比+4.5%)に対し、営業損失0.16億円、経常損失0.23億円、純損失0.91億円(1株当たり当期純損失83.75円)と、通期での赤字転落を見込んでいます。なお、2025年8月~2026年1月の中間期は純損失0.90億円でしたが、第3四半期累計(9カ月)では純損失0.75億円と、直近の第3四半期単独では損失幅がやや縮小しており、下期にかけての改善の兆しも見られます。

成長戦略・将来性

同社の成長戦略の柱は、既存事業エリアの拡大とM&Aによる事業領域の多様化です。リフォーム事業では首都圏近郊への依存度が高いことを課題と認識し、神奈川・埼玉・千葉・仙台などへ営業所を展開してきました。不動産流通事業・不動産建設事業についても、M&Aによる新エリア展開を今後の方針として掲げています。

特に注目されるのは、2026年7月期第3四半期決算短信で開示された重要な後発事象です。同社は2026年4月16日、首都圏を中心にマンション・ビル等の大規模修繕工事を展開する株式会社第一技研の全株式(議決権比率100%)を取得価額4.03億円で取得し、2026年5月7日付で子会社化を完了しました。同社は大手デベロッパー各社との長年の取引関係を有しており、会社側はこの買収を「マンション長寿命化・再生市場」における事業プレゼンス強化の機会と位置付けています。既存3事業に加え、マンション大規模修繕という新たな成長領域への布石といえますが、のれんの金額や取得資産・負債の内訳は本レポート作成時点では確定していません。

一方で、直近9カ月は本業の収益性が悪化しており、M&Aによる事業拡大のペースと、既存事業の収益改善とのバランスをどう取っていくかが今後の焦点になります。同業他社と比較した競争優位性や、業界内での位置づけについては他データとの比較が必要です。

なお、株式会社第一技研の取得(取得価額4.03億円、現金対価)は、本業が9カ月累計で赤字となっている局面での実施である点にも留意が必要です。自己資本比率は2025年7月期末で49.3%まで低下しており、今回の買収資金や今後の借入増加によって財務レバレッジがさらに高まる可能性があります。また、有価証券報告書のM&Aリスクの項目でも「取得した資産やのれんの減損損失発生などにより当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性」が明記されているとおり、買収に伴い発生するのれんの償却負担(発生額・償却方法は本レポート作成時点で未確定)が、今後の営業利益を下押しする要因になり得ます。M&Aによる事業拡大にはシナジー期待という側面がある一方、財務健全性への影響という両面から見ていく必要があります。

株主還元

同社は会社設立以来、一度も配当を実施していません。有価証券報告書では、「獲得した資金については優先的に人材の採用育成等の事業投資に充て、当社の競争力強化による将来の収益向上や効率的な体制整備に有効に活用するため」と、成長投資を優先する方針を明記しています。2026年7月期についても、会社予想の配当額は0円としています。

期末配当を年1回行うことを基本方針としつつ、内部留保の充実状況や業績、事業環境を勘案して配当を検討していくとしていますが、直近は業績が赤字局面にあることもあり、当面は無配が続く可能性が高いとみられます。積極的なM&Aによる成長投資を優先する、成長初期段階の企業に典型的な株主還元方針です。

ガバナンス・リスク

同社は監査等委員会設置会社の体制を採っています。有価証券報告書提出日(2025年10月28日)現在の取締役会は、監査等委員である取締役を除く取締役7名と、監査等委員である取締役4名(全員社外取締役)の計11名で構成されています。なお、2025年10月29日開催の定時株主総会において、監査等委員を除く取締役を8名とする議案が上程されており、可決されれば取締役は計12名体制となる予定です。社外取締役は5名(監査等委員4名+その他1名)で、取締役会の過半数近くを占めています。

事業等のリスクとしては、多岐にわたる項目が開示されていますが、特に注目すべき点は以下の3つです。

1つ目は代表取締役社長・前田浩氏への依存リスクです。同氏は創業者であり、経営方針・営業戦略の立案から遂行まで幅広く関与しており、有価証券報告書でも「同氏が何らかの理由により当社の経営に携わることが困難になった場合、当社グループの業務の停滞等」につながる可能性が明記されています。

2つ目はM&A(投資等)に伴うリスクです。「新規案件への投資が遅れたり、買収した会社の業績が悪化するなどして、計画していた利益水準を確保できない場合、取得した資産やのれんの減損損失発生などにより当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります」と明記されており、積極的なM&A戦略の裏返しとして、のれん(買収時に生じる無形の資産計上額)の減損リスクを会社自身が認識しています。実際、2026年7月期第3四半期には不動産建設事業においてのれんの減損損失2,131万円を計上しています。

3つ目は当社株式の流通株式時価総額についてのリスクです。有価証券報告書では「本報告書提出日現在において想定する流通株式時価総額は、同取引所が定める形式要件に近接しております」と明記されており、東証グロース市場での上場維持基準への抵触可能性が会社自身によって開示されています。なお、東証での上場が仮に廃止となった場合でも、名古屋証券取引所での取引は継続可能とされています。後述のとおり創業者関連で発行済株式の過半を大きく超える比率を保有していることも、市場に流通する株式(流通株式)の規模を小さくする一因となっており、両者は表裏一体の関係にあります。

このほか、リフォーム業界は参入障壁が低く競合が多いこと、外注先の技能労働者確保、資材価格の高騰、特定地域(首都圏・栃木県)への事業集中など、成長途上の中小型企業に典型的なリスク要因が並んでいます。

株主構成・株価情報

2025年7月31日現在の大株主は以下のとおりです(自己株式を除く発行済株式数に対する割合)。

株主名持株比率
前田 浩(代表取締役社長)51.20%
前田 供子5.34%
遠藤 裕三0.60%
チェスナットヒルズ合同会社0.48%
野澤 清晴0.35%
上位10名合計59.55%

代表取締役社長の前田浩氏が単独で発行済株式の過半数(51.20%)を保有しており、同氏と同姓同住所の前田供子氏(5.34%)を合わせると、創業者関連の保有比率は約56.5%に達します。オーナー経営企業として経営の一貫性が保たれやすい一方、株式の流動性という観点では前述のリスクとも関連する構造です。

株価情報(Yahoo!ファイナンス表示、2026年8月14日時点)は以下のとおりです。

項目数値
株価2,675円
時価総額約29.1億円
PER(会社予想ベース)算出不可(会社予想が最終赤字のため)
PBR(実績ベース)1.77倍
配当利回り0.00%(無配)
ROE(実績)12.61%
自己資本比率49.3%

PER(株価収益率)は株価が1株当たり利益の何倍かを示す指標ですが、同社は2026年7月期の会社予想が最終赤字であるため算出できません。PBR(株価純資産倍率)は株価が1株当たり純資産の何倍かを示す指標で、1.77倍は同社の資産内容に対して一定の成長期待が織り込まれた水準と考えられます。なお、ROE12.61%は2025年7月期実績値であり、前述の一時的な株式売却益を含んだ数値である点に留意が必要です。株価は変動するため、最新の数値は証券会社のサイト等でご自身にてご確認ください。

まとめ

ニッソウ(1444)は、首都圏を地盤とするリフォーム会社を中核に、M&Aによって不動産流通・不動産建設へと事業領域を広げてきた成長企業です。2025年7月期は増収増益となったものの、純利益の大幅増加は子会社株式売却に伴う一時的な利益によるところが大きく、2026年7月期は9カ月累計で営業損益・経常損益・純損益のいずれもが赤字に転落するなど、本業の収益性には課題が見られます。

一方で、2026年5月には首都圏でマンション大規模修繕工事を手がける株式会社第一技研を子会社化するなど、M&Aによる新市場開拓の動きは継続しています。創業者である前田浩氏が発行済株式の過半数を握るオーナー経営企業であり、会社設立以来無配を貫き成長投資を優先する姿勢が明確です。今後は、相次ぐM&Aによって拡大した事業ポートフォリオの収益化がどこまで進むか、そして新規参入したマンション大規模修繕市場での事業展開の成否が、注目すべきポイントとなりそうです。


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