【1438】岐阜造園

2026/09/12

企業分析

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岐阜県岐阜市を拠点に造園緑化工事を手がける岐阜造園(証券コード1438)について、2025年9月期有価証券報告書、2026年9月期半期報告書、および2026年9月期第3四半期決算短信をもとに、ファンダメンタルズ(企業の実力を示す基礎的な情報)を初心者向けに解説します。

1. 企業概要

株式会社岐阜造園(証券コード:1438、東京証券取引所スタンダード市場・名古屋証券取引所メイン市場に重複上場)は、岐阜県岐阜市に本社を置く造園緑化工事の専業企業です。1927年、創業者・小栗弥一氏が「植弥」として創業し、1966年に株式会社岐阜造園として改組されました。2027年9月期(第62期)には創業100年の節目を迎えるとしており、老舗企業ならではの技術の蓄積を強みとしています。

事業は「造園緑化事業」の単一セグメントですが、対象物件によって2つの領域に分かれています。1つは戸建・集合住宅の外構(門・塀・庭園など)を手がける「ガーデンエクステリア」で、住宅メーカーの新築案件を中心に、富裕層向けの高級案件も多く手がけています。もう1つは、商業施設・公共施設・公園などの緑化を手がける「ランドスケープ」で、公共工事(国土交通省・地方自治体発注)や民間工事(商業施設・リゾートホテルなど)、緑地メンテナンス、公共公園の指定管理事業(岐阜市内6か所の公園)などを含みます。

同社の特徴として特筆すべきは、大手住宅メーカーの積水ハウス株式会社との資本・業務提携関係です。2020年5月に業務提携、2020年6月・2023年2月に資本提携を行っており、2025年9月30日現在で積水ハウスは同社発行済株式(自己株式除く)の20.20%を保有する筆頭株主かつ「その他の関係会社」となっています。積水ハウスの中期経営計画では「日本一の外構設計施工会社になる」ことが掲げられており、岐阜造園はその協業体制の一角を担う位置づけです。

一方で、売上面では積水ハウス・積水ハウス建設中部・大和ハウス工業の3社合計で売上高の約37.3%(2025年9月期)を占めており、大手住宅メーカーへの高い依存度も同時に持ち合わせています。

2. 業績・財務情報

2025年9月期(第60期)通期実績

項目2024年9月期2025年9月期増減率
売上高51.99億円62.71億円+20.6%
営業利益―5.38億円+20.4%(会社公表)
経常利益4.56億円5.49億円+20.4%
親会社株主に帰属する当期純利益3.40億円3.85億円+12.9%
自己資本比率72.2%71.7%▲0.5pt
ROE(自己資本利益率)9.3%9.7%+0.4pt

※ROE(自己資本利益率)とは、株主が出資したお金(自己資本)を使ってどれだけ効率よく利益を生み出したかを示す指標です。

2025年9月期は、ガーデンエクステリア(売上高33.57億円、前期比+15.8%)とランドスケープ(売上高29.14億円、前期比+26.8%)がともに増収となりました。ランドスケープでは、富士山を望む高級旅館の大型造園工事や大阪・関西万博関連の造園工事の完工が寄与し、計画を上回る水準で推移したとされています。なお、純利益の伸び率(+12.9%)が売上高・経常利益の伸び率(+20%超)を下回っていますが、これは特別損失(減損損失4.4百万円)や法人税等調整額の影響によるもので、本業の実力を示す経常利益ベースでは前期比+20.4%の高い伸びとなっています。

2026年9月期第3四半期(累計、2025年10月~2026年6月)

項目前年同四半期累計当第3四半期累計増減率
売上高46.01億円49.40億円+7.4%
営業利益4.89億円5.62億円+14.9%
経常利益4.97億円5.76億円+15.8%
親会社株主に帰属する四半期純利益3.38億円3.98億円+18.0%

第3四半期累計時点で、自己資本比率は76.4%まで上昇しており、2025年9月期末(71.7%)や2026年9月期中間期末(76.5%)と比べても高水準の財務健全性を維持しています。前期の減益要因だった特別損失も当第3四半期累計では発生しておらず、増収率よりも増益率が高い、質の良い利益成長となっている点が特徴です。

会社側は通期業績予想を据え置いており、2026年9月期通期は売上高65.00億円(前期比+3.6%)、営業利益6.90億円(+28.2%)、経常利益7.00億円(+27.6%)、親会社株主に帰属する当期純利益4.69億円(+22.0%)を見込んでいます。第3四半期累計だけで通期経常利益予想の約82%(5.76億円/7.00億円)に達しており、例年、下期(特に第4四半期)に工事の完工が集中する傾向があることを踏まえても、順調な進捗ペースといえます。

キャッシュ・フローについては、2025年9月期の営業活動によるキャッシュ・フローは3.17億円のプラス(前期は7.16億円のプラス)となり、売上債権の増加等により前期より減少したものの、引き続き安定的にプラスを確保しています。同社は重い設備投資を必要としないビジネスモデルであり、投資活動によるキャッシュ・フローの支出額も小さく抑えられています。

3. 成長戦略・将来性

同社は2030年に向けた成長戦略を掲げ、創業100年(2027年9月期)を節目に「造園業」から「景観産業会社」へ、さらに「環境創造企業」(景観産業+環境保全の役割を果たす企業)への進化を目指すとしています。具体的な施策としては以下が挙げられています。

積水ハウスグループとの連携強化が最大の成長ドライバーの一つです。積水ハウスの中期経営計画で掲げる「日本一の外構設計施工会社」の実現に向け、鳳コンサルタント株式会社・株式会社鴻池組と共に協業する体制が示されており、大型ランドスケープ案件や大規模プロジェクトへの参画機会が期待されています。また、積水ハウスがすでに複数のPFI(Private Finance Initiative、公共施設の整備・運営に民間の資金・ノウハウを活用する事業手法)事業を受注していることから、同社の公園指定管理のノウハウと組み合わせたPFI事業の拡大も視野に入れています。

関東地区への事業拡大も重点戦略です。現在は東京・大阪・名古屋の三大都市圏が拠点ですが、福岡営業所の開設を計画するなど、四大都市を中心とした営業基盤強化を進めています。2024年3月には関東を拠点とする老舗造園会社・株式会社埼玉植物園との業務提携(資本提携を視野)も行っており、関東エリアでの施工拠点・ショールーム展開を進めています。

このほか、造園業界の後継者不足・職人の高齢化を背景とした戦略的M&Aの推進や、中国・カナダでの実績を踏まえた海外事業の展開も掲げられています。もっとも、これらの成長戦略が同業他社と比較してどの程度先進的か、業界内での位置づけについては、他データとの比較が必要な点にご留意ください。

4. 株主還元

配当政策については、「経営基盤の強化、将来の事業展開に必要な内部留保を確保しつつ、安定した配当を継続する」ことを基本方針とし、中間・期末の年2回の配当を実施しています。

2025年9月期の年間配当は36円(中間18円・期末18円、前期比+6円の増配)で、会社公表の連結配当性向は30.4%でした。2026年9月期の配当予想は40円(中間20円・期末20円)とさらなる増配が見込まれており、有価証券報告書公表時点で会社が示した連結配当性向の見通しは33.7%でした。

なお、決算短信(2026年8月公表)時点では通期の当期純利益予想が有価証券報告書公表時点よりも上振れているため、この上振れ後の予想利益(4.69億円)に対して単純計算すると、配当性向はこれよりもやや低い水準になる可能性があります。配当額自体は増額が予定されている点は確かですが、配当性向の最終的な数値は今後の決算発表を通じて確認する必要があります。

5. ガバナンス・リスク

同社は監査役会設置会社の体制を採っています。有価証券報告書提出日(2025年12月24日)現在の取締役会は取締役9名(うち社外取締役2名)で構成され、監査役会は監査役4名(うち社外監査役3名)で構成されています。2025年9月期の取締役会は年15回開催され、全取締役が出席率100%(15/15)という高い出席率を維持しています。また、取締役・監査役の過半数を独立役員が占める任意の指名・報酬委員会も設置されています。

なお、2025年12月25日開催予定の定時株主総会では、取締役を9名から5名(うち社外取締役2名)に減員するとともに、経営の意思決定・監督と業務執行を分離する執行役員制度を導入する議案が付議される予定であり、ガバナンス体制の見直しが進行中です。

事業等のリスクとしては、①経済情勢による官公庁・法人・個人の投資動向の影響、②特定の取引先への依存(積水ハウス16.7%、積水ハウス建設中部11.8%、大和ハウス工業8.8%、合計約37.3%を売上高が依存)、③材料価格・外注コストの変動、④建設業法等の法的規制、⑤人材の確保・育成、⑥労働災害、⑦天候・自然災害、が挙げられています。

このうち特定の取引先への依存については、前述の積水ハウスとの資本提携関係という強固なパートナーシップの裏返しでもあり、一概にネガティブな要因とは言い切れませんが、大手住宅メーカー3社の発注動向が業績に与える影響力の大きさは投資判断上、認識しておく価値があります。同社自身も「これら3社との取引も引き続き拡大していく方針」としつつ、リスクとして開示している点は率直な姿勢といえます。

6. 株主構成・株価情報

2025年9月30日現在の大株主は以下のとおりです(自己株式を除く発行済株式数に対する割合)。

株主名持株比率
積水ハウス株式会社20.20%
合同会社小栗達弘オフィス14.19%
小栗 洋行9.58%
岐阜造園社員持株会5.02%
小栗 博文3.39%
小栗 栄一3.35%
大橋 美智子3.21%
上位10名合計66.14%

筆頭株主は前述の通り積水ハウス株式会社(20.20%)です。これに続き、代表取締役会長・小栗達弘氏の資産管理会社とみられる「合同会社小栗達弘オフィス」(14.19%)や、創業家である小栗姓の個人株主が複数名連なっており、小栗家関連の保有比率を合算すると約35.0%に達します。積水ハウスという事業会社の戦略的出資と、創業家による一定の保有継続が併存する株主構成が特徴です。

株価情報(Yahoo!ファイナンス表示、2026年8月14日時点)は以下のとおりです。

項目数値
株価2,187円
時価総額約71.1億円
PER(会社予想ベース)15.13倍
PBR(実績ベース)1.56倍
配当利回り(会社予想ベース)1.83%
ROE(実績)9.64%
自己資本比率(実績)71.7%

※PER(株価収益率)は株価が1株当たり利益の何倍かを示す指標、PBR(株価純資産倍率)は株価が1株当たり純資産の何倍かを示す指標です。なお、上記の自己資本比率71.7%は2025年9月期末時点の数値であり、前述の通り2026年9月期第3四半期末には76.4%まで上昇しているため、財務体質は表内の数値よりもさらに改善している点にご留意ください。株価は変動するため、最新の数値は証券会社のサイト等でご自身にてご確認ください。

7. まとめ

岐阜造園(1438)は、1927年創業・造園緑化事業一筋の老舗企業でありながら、大手住宅メーカーの積水ハウスとの資本・業務提携という現代的な成長エンジンを併せ持つユニークな企業です。2025年9月期は増収増益を達成し、続く2026年9月期第3四半期累計もそれを上回るペースの増益(経常利益+15.8%、純利益+18.0%)となっており、自己資本比率も76%台まで上昇するなど、財務健全性の高さが際立ちます。

一方で、積水ハウスグループ・大和ハウス工業という大手住宅メーカー3社への売上依存度が約37%に達している点は、成長機会であると同時に業績変動要因としても認識しておく必要があります。創業100年を迎える2027年9月期に向けて、関東エリアでの事業拡大やM&A、積水ハウスとの協業深化がどこまで進むか、今後の開示に注目していく価値があります。


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