【155A】情報戦略テクノロジー

2026/09/26

企業分析

t f B! P L

大手企業向けのシステム開発内製支援「0次DX」を手がける情報戦略テクノロジー(証券コード155A)について、2026年8月13日発表の2026年12月期中間期決算短信・決算説明資料、同日提出の半期報告書、および2026年3月提出の2025年12月期有価証券報告書をもとに、ファンダメンタルズ(企業の実力を示す基礎的な情報)を初心者向けに解説します。

1. 企業概要

情報戦略テクノロジーは、2009年1月に設立された、大手企業を主な顧客とするシステム開発の「内製支援」企業です。
2024年3月に東京証券取引所グロース市場へ上場しました。
本社は東京都渋谷区の恵比寿ガーデンプレイスタワーで、2024年11月に福岡県北九州市に九州支店を開設しています。
2026年6月末時点の従業員数は463名で、うちエンジニアは386名です。

同社は、日本のシステム開発に根強く残る多重下請け構造(顧客から仕事を受けた1次請けが、2次請け・3次請けへと業務を流していくピラミッド型の商流)を変えることを理念に掲げています。
企業理念は「すべてを、なくしていく。」
で、顧客に直接営業して直接契約を結び、顧客の社員と自社のエンジニアが相談・提案を短いサイクルで繰り返しながら開発を進める形を、1次請けよりも顧客に近いという意味で「0次DX」と呼んでいます。
顧客が自ら主導してシステムを開発することを「内製」と呼び、その支援を担うのが同社の役割です。

事業は「DX関連事業」の単一セグメントで、サービスは次の4つで構成されています。

  1. 0次システム開発(主力)
    顧客の社員と同社のエンジニア・パートナー(協力会社)のエンジニアが一緒に開発するサービスです。
    アジャイル開発(小さな単位で開発とテストを繰り返す手法)を中心に、企画から運用・保守まで一気通貫で支援します。
    契約は主に準委任契約(成果物の完成ではなく、業務の遂行に対して対価が支払われる契約)です。
  2. 0次ラボ(成長事業)
    生成AI、セキュリティ、データサイエンスなど特定分野に強い専属チームが、顧客のIT組織として入り込む「ラボ型」のサービスです。
    稼働した人数と時間(人月)ではなく、提供した価値を基準に対価を得るため、高い粗利率を狙えるとされています。
  3. 0次コンサル(成長事業)
    戦略立案の段階から、その後の開発・実装までを見据えて支援するコンサルティングです。
  4. WhiteBox(プラットフォーム)
    システム開発企業やフリーランスが、エンジニアのスキルシートを登録し、案件とパートナーを探せるマッチングサービスです。
    総会員数は3,424社(2026年6月末、2025年12月末は3,188社)、登録エンジニアは3万人超です。

顧客は年商1,000億円以上の大手企業グループが中心で、決算説明資料によれば売上の約8割を占めます(年商1兆円以上の企業が46.5%)。
業種別の売上構成は、金融業28.0%、ITサービス21.2%、製造13.0%、人材サービス8.6%、通信・放送7.2%などです。
有価証券報告書では、既存顧客との取引の継続率は約95%とされており、売上が積み重なる「ミルフィーユ状」のモデルだと説明されています。
2025年12月期には、売上高の10%を超える単一の取引先はありませんでした。

グループ会社は、連結子会社の株式会社WhiteBox(プラットフォーム運営)、株式会社エー・ケー・プラス(2025年2月に株式取得、SES・クラウドSIなど)、株式会社ピープルドット(2026年4月に株式取得、データ・AI人材の研修とコンサルティング)です。
さらに、2026年8月13日には、株式会社Flybyなどの取得も決議しました。
IR情報は同社公式サイト(https://www.is-tech.co.jp/ir_top/)で公開されています。

2. 業績・財務情報

業績の推移

決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益 EPS 自己資本比率 ROE
2023年12月期(単体) 52.98億円 3.88億円 3.85億円 2.75億円 32.41円 38.8% 47.8%
2024年12月期(単体) 58.48億円 4.13億円 3.97億円 2.73億円 27.73円 62.2% 22.2%
2025年12月期(連結) 80.20億円 5.53億円 5.33億円 3.04億円 29.56円 42.7% 17.4%
(参考)2025年12月期(単体) 69.94億円 ― 5.31億円 3.38億円 32.80円 45.9% 19.2%
2026年12月期 中間期(連結) 48.41億円 3.52億円 3.38億円 1.87億円 18.20円 39.2% ―
2026年12月期(会社予想、連結) 107.02億円 7.57億円 7.31億円 4.31億円 42.20円 ― ―

※2023年12月期・2024年12月期は単体決算(有価証券報告書の提出会社の経営指標)で、営業利益は決算説明資料に掲載された数値です。
※同社は2025年12月期から連結決算に移行しており、連結子会社が加わったため、2024年12月期以前との単純な比較はできません。
※ROE(自己資本利益率)は、株主が出した資金でどれだけ効率よく利益を稼いだかを示す指標です。

2025年12月期の連結売上高は80.20億円、営業利益は5.53億円で、連結の売上総利益率は26.4%、営業利益率は6.9%でした。
単体ベースでは、売上高は58.48億円から69.94億円へと約19.6%増でした。
連結の80.20億円との差の約10億円は、2025年2月に子会社化したエー・ケー・プラスなどの売上によるものです。
エー・ケー・プラスの2025年12月期の売上高は8.03億円、当期純利益は0.41億円でした。
決算説明資料では、単体と連結を並べて表示しているため、「16期連続増収」は、M&Aによる連結範囲の拡大を含む数字である点を理解しておく必要があります。

2026年12月期の中間期(1〜6月)は、売上高48.41億円(前年同期比33.1%増)、営業利益3.52億円(同119.5%増)、経常利益3.38億円(同120.7%増)、親会社株主に帰属する中間純利益1.87億円(同131.1%増)と、大幅な増収増益でした。
売上総利益は13.43億円(同35.7%増)、売上総利益率は27.7%(前年同期27.2%)に上昇し、営業利益率は7.3%(同4.4%)に改善しています。
販売費及び一般管理費は9.91億円(同19.5%増)で、売上高の伸びよりも緩やかでした。
会社は、ピープルドットの研修事業・データコンサルティング事業の取り込みなどが粗利率の向上に寄与したと説明しています。
なお、売上高の伸びには、2026年4月に連結子会社となったピープルドットの3か月分と、前年同期には取得後の期間分しか含まれていなかったエー・ケー・プラスの寄与が含まれます。

四半期 売上高 売上総利益率 営業利益 営業利益率
2025年12月期 1Q 1,628百万円 27.7% 48百万円 3.0%
2025年12月期 2Q 2,006百万円 26.8% 111百万円 5.6%
2025年12月期 3Q 2,155百万円 25.6% 207百万円 9.6%
2025年12月期 4Q 2,227百万円 26.0% 185百万円 8.3%
2026年12月期 1Q 2,348百万円 26.9% 222百万円 9.5%
2026年12月期 2Q 2,492百万円 28.5% 128百万円 5.2%

※出典は決算説明資料の四半期実績です。

第2四半期(4〜6月)の営業利益は1.28億円で、前年同期比では15.3%増でしたが、第1四半期の2.22億円からは大きく減少しています。
会社は、新卒社員の受け入れなどの季節的な要因によるものと説明しています。
2026年4月には、エンジニア職の新卒社員32名が入社しました。
このほか、4月からピープルドットの連結に伴うのれん償却費(買収時に支払った上乗せ分を費用として配分するもの)の計上が始まっています。
中間期ののれん等償却費は0.64億円、採用費は0.85億円でした。
四半期の利益を評価する際は、年間で均等に積み上がるのではなく、採用コストや償却費の発生時期によって振れる点を踏まえる必要があります。

純利益は、営業利益ほどには伸びていません。
第2四半期単独の純利益は0.57億円で、前年同期比7.1%減でした。
会社は「M&Aに伴う一時的な税率変動の影響」と説明しています。
中間期の法人税等(1.57億円)を税金等調整前中間純利益(3.39億円)で割った負担率は約46%と高く、前年同期の約47%と同水準です。
実際の税率が法定実効税率(約30%)を大きく上回っている理由として、のれん償却費の扱いが考えられます。
株式を取得して子会社化したときに生じるのれんは、連結決算上の資産であり、その償却費は税務上の費用(損金)に算入されないのが一般的です。
このため、会計上の利益は減るのに課税される所得は減らず、税負担率が高く見えます(会計と税務の間に恒久的な差が残るため「永久差額」と呼ばれます)。
ただし、前年同期にも同水準の負担率だったため、これが主因かどうかを含めて、詳細な内訳は開示されていません。

収益構造の内訳(2026年12月期 中間期)

決算説明資料によれば、中間期の売上高48.41億円の内訳は、パートナー(協力会社)のエンジニア分が27.13億円、社員エンジニア分が20.26億円、その他が1.00億円です。
売上原価は、パートナー分が21.56億円、社員分が13.07億円、その他が0.34億円でした。
これをもとに本レポートで計算すると、粗利率はパートナー分が約20.5%、社員分が約35.5%と、大きな差があります。
売上の56%を占めるパートナー分の粗利率が低いため、全体の粗利率は27.7%にとどまっています。
社員エンジニアの比率を高めることと、ラボ型・コンサル型など高付加価値のサービスを増やすことが、収益性を高める鍵になります。
ただし、この内訳は決算説明資料に基づく数値で、決算短信や半期報告書には記載がありません。

主要KPI(重要業績評価指標)

指標 数値 補足
社員エンジニア数 386名(2026年6月末) 2025年12月末は339名、2026年12月末の計画は423名
社員エンジニアの平均月単価 121万円 新卒入社者(実務習熟期間)を除く。2025年12月末は120万円
WhiteBox総会員数 3,424社(2026年6月末) 2025年12月末は3,188社
0次ラボの売上高(2026年12月期 2Q) 6.25億円 前年同期(4.29億円)の約1.45倍
新規顧客との接点数(2Q) 79社 前年同期は61社
新規顧客の受注社数(2Q) 6社 前年同期に続き高水準
受注案件に占める0次コンサル・0次ラボの割合(2Q) 43% 0次システム開発57.1%、0次ラボ34.3%、0次コンサル8.6%
エンジニアの離職率 約8% 会社は業界平均を下回る水準と説明

※新卒採用は、2027年入社予定の計画40名に対して、2026年6月末時点で44名の内定を出しています。
※中途採用は、2026年上期累計で24名(うちPM・PL・コンサルが8名)でした。

売上の伸びを支える最大の要因は、エンジニアの増員です。
社員エンジニア数は、2025年12月末の339名から2026年6月末の386名へ、半年で47名増えました。
その一方で、会社は受注の増加に対するリソース不足を、WhiteBoxを通じたパートナーの活用で補う方針です。

財務指標とキャッシュフロー

2026年6月末の総資産は49.51億円で、自己資本比率(返済不要の自己資本が総資産に占める割合)は39.2%です。
2025年12月末の42.7%から低下しました。
主な要因は、ピープルドットの取得に伴うのれんの増加(4.68億円から10.83億円へ)と、借入金の増加です。
のれんは総資産の約22%に達し、自己資本(19.42億円)の約56%に相当します。
のれんは、買収先の将来の収益力に対して支払った上乗せ分ですが、買収先の業績が想定を下回ると減損損失(資産価値の切り下げ)として一括で費用計上されるリスクがあります。

有利子負債は、2025年12月末の12.70億円から18.89億円(短期借入金3.00億円、1年内返済予定の長期借入金4.31億円、長期借入金11.59億円)へ増えています。
2026年上期は、短期借入れ3.00億円と長期借入れ4.50億円を実行し、長期借入金を2.44億円返済しました。
支払利息は0.11億円(1,129万円)で、前年同期の0.05億円(465万円)から増加しています。
現金及び預金は20.17億円あり、うち現金同等物は16.97億円です。

キャッシュフローは、2026年上期の営業活動によるキャッシュフローが1.56億円のプラス(前年同期は0.99億円)でした。
これは中間純利益1.87億円の約0.84倍にあたり、法人税等の支払1.66億円や、その他の資産の増加0.63億円などが押し下げ要因です。
投資活動は、ピープルドット取得のための子会社株式取得5.94億円と投資有価証券の取得0.30億円などで、6.49億円のマイナスでした。
財務活動は、借入金による資金調達などで5.22億円のプラスでした。
2025年12月期は、営業活動が4.17億円のプラス、投資活動が11.91億円のマイナス(エー・ケー・プラスの取得5.53億円、投資有価証券3.10億円、定期預金3.00億円など)、財務活動が6.26億円のプラス(長期借入れ14.50億円、自己株式の取得3.80億円、長期借入金の返済3.54億円など)でした。

3. 成長戦略・将来性

決算説明資料で示されているのは、最終年度の売上高・利益目標を掲げた中期経営計画ではなく、2026年12月期の計画と成長戦略の方向性です。
2026年12月期の会社予想は、売上高107.02億円(前期比33.5%増)、営業利益7.57億円(同37.0%増)、経常利益7.31億円(同37.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益4.31億円(同41.9%増)、EPS42.20円です。
2026年8月13日の中間期決算発表では、この予想は変更されていません。
中間期の進捗率は、売上高45.2%、営業利益46.4%(決算説明資料)で、会社は計画を上回る進捗としています。
通期予想から中間期実績を差し引いた下期の売上高は約58.6億円で、前年下期(約43.8億円)に対して約34%の増加が必要です。
ただし、下期にはピープルドットの6か月分が含まれるため、M&Aによる押し上げも寄与します。

成長戦略の柱は、「人月ビジネス」から「ソリューションビジネス」への転換と、M&Aによる「DXの総合商社」化です。
決算説明資料では、2026年12月期の戦略を次の3つに整理しています。

  1. ソリューションサービスの強化
    オーダーメイドの開発を中心としたサービスから、専門性と再現性を両立したソリューション型(0次ラボ、0次コンサル、プラットフォーム)へ、事業の重心を移す方針です。
    0次システム開発以外のソリューション売上の比率を高めることで、全社の粗利率と生産性の向上を目指しています。
  2. テクノロジーの実装(AI・セキュリティ)
    社内向けにはAIリーダーの認定制度や、セキュリティ人材の育成を進めます。
    顧客向けにはAIエージェント、エージェント型のAI駆動開発、ペネトレーションテスト(疑似攻撃による脆弱性診断)などを提供します。
    有価証券報告書によれば、全エンジニアに「Claude for Enterprise」を提供し、社内にAI専門組織「AI CoE」を設置しています。
  3. 出資・M&Aの活用
    目的は、未開拓の顧客接点とソリューションの獲得、専門人材(エンジニア)の獲得です。
    ターゲットは、現状のチャネルではアプローチが難しい顧客層や、専門領域に特化したエンジニアを持つ企業などです。

サービス面の取り組みとして、2026年上期には、AI人材育成を手がけるDXHR社との業務提携、Miro社とのパートナー契約、新開発手法「0次ACE」の提供開始が発表されています。
「0次ACE」は、アジャイル開発とMiro(ホワイトボード型の共同作業ツール)、AI駆動開発を組み合わせ、最短3〜10営業日で動くプロトタイプを提示できるとされています。
また、子会社WhiteBoxのチームが、AWS主催のハッカソンで2年連続の最優秀賞を受賞しました。

M&Aの実績と計画は次のとおりです。
2025年2月にエー・ケー・プラスを子会社化し、2026年4月にはピープルドット(議決権の80.0%)を取得原価7.20億円で取得しました。
ピープルドットの取得で生じたのれんは6.77億円(暫定的な金額)で、7年間で均等に償却します。
本レポートで計算すると、年間の償却額は約0.97億円で、営業利益の押し下げ要因になります。
さらに、2026年8月13日の取締役会では、株式会社Flybyと、その親会社である株式会社Flyby Managementの全株式を、2027年1月に取得する予定であることを決議しました。
取得原価は、Flyby Managementが6.71億円、Flybyの残余株式(19.1%)が1.58億円で、合計8.29億円です。
これは、2026年6月末の自己資本(19.42億円)の約43%にあたります(本レポートによる計算)。
Flybyの2025年11月期の業績は、売上高3.93億円、営業利益1.20億円、当期純利益0.85億円で、取得原価は直近期の当期純利益の約9.8倍にあたります(本レポートによる単純計算)。
Flybyの今後の決算に応じて取得価額が変わる条件付対価の合意があり、のれんの金額も確定していません。
2026年12月期の業績への影響はなく、連結子会社となるのは2027年12月期第1四半期からの予定です。

設備投資は、2025年12月期で0.16億円と小さく、人材が中心の事業です。
有価証券報告書の「研究開発活動」には、該当事項はありません。
成長投資の中心は、採用費・人件費とM&Aです。

今後の成長を左右するポイント

今後の成長を左右するポイントとして、次の3点が考えられます。

  1. エンジニアの増員ペースと稼働の確保
    2026年12月末に423名(グループ全体)という計画に対し、2026年6月末は386名です。
    新卒が戦力化するまでの実務習熟期間の費用が先行するため、採用が進むほど短期的には利益率が下がりやすい構造です。
  2. ソリューション型の売上比率の上昇
    0次ラボの売上は前年同期の約1.45倍と伸びており、受注案件の43%が0次ラボ・0次コンサルです。
    このシフトが進めば粗利率の改善が期待できますが、全体の売上に占める割合はまだ限定的です。
  3. M&Aの統合効果と財務負担
    ピープルドットとFlybyの統合で、のれんの償却費と借入金の利息が増える一方、新たな顧客接点と専門人材を獲得できます。
    統合が計画どおり進むかどうかが、通期予想の達成にも関わってきます。

4. 株主還元

同社は創業以来、配当を実施しておらず、2026年12月期の配当予想も0円です。
配当政策として、「財務基盤の強化と成長過程にある事業の持続的な拡充のため、内部留保の充実と事業推進に必要な投資活動を積極的に行うことが重要」としています。
そのうえで、株主還元を重要な経営課題と位置づけ、今後の経営成績や財政状態を踏まえて、配当を検討していく方針です。
したがって、配当利回りは0%で、インカムゲイン(配当収入)を期待する銘柄ではありません。

一方、自己株式取得は実施しています。
2025年9月4日の取締役会で、上限40万株・4億円の自己株式取得(取得期間2025年9月5日〜12月31日)を決議し、期間内に40万株(取得額約3.77億円、平均取得単価は約942円)を取得しました。
残りの取得枠は約0.23億円で、未使用のまま期間が終了しています。
自己株式は消却されておらず、2026年6月末時点で40万株(発行済株式総数の3.73%)を保有しています。
2025年12月期のキャッシュフロー計算書上の自己株式取得による支出は3.80億円で、同期の親会社株主に帰属する当期純利益(3.04億円)を上回りました。
決算短信・決算説明資料では、この2025年9月決議分以降の新たな取得枠には触れられていません。

配当性向(純利益のうち配当に回した割合)は、無配のため算出できません。
成長投資とM&Aを優先しており、株主還元の姿勢は「配当より成長投資・M&A優先」と整理できます。

5. ガバナンス・リスク

ガバナンス

同社は監査役会設置会社(取締役の職務執行を、独立した監査役が監査する形態)です。
有価証券報告書の提出時点(2026年3月25日)の取締役会は、代表取締役社長の髙井淳氏を議長とする取締役3名(うち社外取締役2名)で構成され、監査役3名は全員が社外監査役です。
2026年3月26日の定時株主総会には、取締役を5名(うち社外取締役2名、社外取締役比率40%)とする議案が付議されており、2026年8月の決算説明資料の役員欄にも、取締役5名(社外の非常勤取締役2名を含む)と監査役3名が記載されています。
2025年12月期の取締役会は20回開催され、髙井氏・社外取締役2名・常勤監査役は全回に出席しました。
非常勤の社外監査役の出席率は、95%と90%でした。
男性労働者の育児休業取得率は53.8%、管理職に占める女性の割合は8.3%(いずれも提出会社、2027年12月までに60%・10%とする目標)です。

政策保有株式(取引関係の維持などを目的とする持ち合い株式)は、上場株式は保有しておらず、非上場株式が1銘柄・1.50億円(2025年12月期に取得、関係強化によるシナジー創出のため)のみです。
このほか、2025年12月期には2件のファンドに出資しており、投資有価証券(2025年12月末2.98億円)に含まれています。

代表取締役社長の髙井淳氏は、設立以来の代表者で、資産管理会社を通じた保有分を含めて発行済株式(自己株式を除く)の約69.6%を保有しています。
有価証券報告書のリスク項目でも「特定人物への依存」が挙げられ、取締役会と経営会議を通じて情報を共有し、依存度を下げる方針が示されています。

主なリスク要因

有価証券報告書に記載された主なリスクと、決算資料から読み取れる留意点は次のとおりです。

  1. エンジニアの採用・育成(発生可能性「中」、影響度「大」)
    事業の中核が人材のため、採用や育成が計画どおり進まない場合や、離職が想定を超えた場合に業績へ影響します。
    会社は、人材紹介会社の活用、リファラル採用(社員の紹介による採用)、研修や評価制度の整備、離職率の低減に取り組んでいます。
  2. 外注委託先(パートナー)への依存(発生可能性「中」、影響度「大」)
    前述のとおり、売上の約56%がパートナーのエンジニアによるものです。
    必要なタイミングで適切なパートナーを確保できない場合や、パートナーの契約違反が起きた場合に、品質保持のコストや損害賠償が発生する可能性があります。
  3. 競合と景気変動(いずれも発生可能性「中」、影響度「中」)
    主な競合は、大手のシステム開発会社やITコンサルティング会社です。
    同社と同様の内製支援に専門特化する企業が増えた場合や、主要顧客がIT投資を抑制した場合に、価格の下落や失注が起こり得ます。
  4. 法的規制(発生可能性「低」、影響度「大」)
    0次システム開発は主に準委任契約で行われており、労働者派遣との区分に関する基準に従っています。
    法令の改定や行政処分があった場合に、事業が制約を受ける可能性があります。
  5. M&Aに伴うのれん・借入の負担
    有価証券報告書のリスク項目には個別に掲げられていませんが、2026年6月末ののれんは10.83億円、有利子負債は18.89億円に増えています。
    Flybyの取得(取得原価8.29億円)も予定されており、買収先の業績が計画を下回る場合は、減損損失や利息負担が業績に影響します。
  6. 株式の希薄化と流動性
    2025年12月末のストック・オプション(新株予約権)による潜在株式は582,771株で、発行済株式総数の5.5%に相当します。
    流通株式比率は26.8%(2025年12月末)で、創業者側の持株が多いため流動性が低下する可能性があると、会社自身が挙げています。

6. 株主構成・株価情報

大株主の状況

半期報告書(2026年6月30日現在)に記載された大株主は次のとおりです。

株主名 持株比率
髙井 淳(代表取締役社長) 35.64%
株式会社ISTホールディングス(髙井氏の資産管理会社) 33.93%
情報戦略テクノロジー社員持株会 2.90%
礒谷 幸始 2.56%
株式会社SBI証券 1.35%
瀧本 崇(取締役) 1.05%
川原 翔太(取締役) 1.02%
廣田 重徳 0.92%
小沼 滋紀 0.68%
楽天証券株式会社共有口 0.66%

※持株比率は自己株式(400,000株)を除く発行済株式数に対する割合で、上位10名の合計は80.71%です。

髙井氏本人と資産管理会社(株式会社ISTホールディングス)を合算すると持株比率は約69.6%で、創業者が3分の2超を保有するオーナー経営の会社です。
経営判断の速さは強みになる一方、少数株主にとっては議決権の影響力が限られ、流通株式比率も26.8%と低めで、売買が細りやすい点に留意が必要です。

株式に関する情報

発行済株式総数は10,713,882株(2026年6月30日現在、うち自己株式400,000株)、単元株式数は100株、上場市場は東京証券取引所グロース市場です。
2026年6月末以降の新株予約権の行使により、株価情報サイトに表示される発行済株式数は10,748,825株に増えています。

株価指標

Yahoo!ファイナンス(2026年9月25日時点の表示データ)によると、株価は800円(前日比▲10円)、時価総額は約86億円です。
年初来高値は1,507円(2026年2月2日)、年初来安値は727円(2026年5月14日)で、現在の株価は年初来高値から約47%低い水準です。
上場来高値は1,750円(2025年11月27日)、上場来安値は302円(2025年4月7日)です。
指標は次のとおりです。

指標 数値 算定根拠
PER(株価収益率、会社予想ベース) 約19.1倍 Yahoo!ファイナンス表示。会社予想EPS 41.92円(自己株式を除く株式数ベース)
PER(参考:会社発表EPSベース) 約19.0倍 800円 ÷ 決算短信の2026年12月期予想EPS 42.20円(本レポートによる計算)
PER(参考:実績ベース) 約27.1倍 800円 ÷ 2025年12月期の実績EPS 29.56円(本レポートによる計算)
PBR(株価純資産倍率) 約4.25倍 Yahoo!ファイナンス表示。BPS 188.29円(2026年6月末の自己資本1,942百万円 ÷ 自己株式を除く発行済株式数10,313,882株で、本レポートでも一致を確認)
配当利回り 0.00% 無配
最低購入代金 約8.0万円 800円 × 100株

株価水準の背景と留意点

PERは約19倍、PBRは約4.3倍です。
会社予想では純利益が前期比41.9%増と、増益ペースの高い計画です。
PBRが高い背景として、次の3点が考えられます。

  1. 人材サービス型の事業で、純資産が小さい
    事業の主体が設備ではなく人材のため、自己資本に対して利益が大きく出やすい構造です。
    ROEは2025年12月期に17.4%でした。
  2. 成長期待の織り込み
    売上は16期連続で増加し、直近は2桁の増収が続いています。
  3. のれんを含む純資産
    自己資本の約56%がのれんに相当し、有形の資産価値に対するPBRは表面上の数値より高い水準になります。

一方で、年初来高値から約47%下がっている点は、株価が不安定であることを示しています。
時価総額が約86億円と小さく、創業者側が約7割を保有しているため、需給によって株価が振れやすいと考えられます。
同業他社のバリュエーション(株価の割高・割安の度合い)との比較には他データが必要であり、本レポートでは断定を避けます。
株価情報は日々変動するため、最新の数値は証券会社のサイト等でご確認ください。

7. まとめ

情報戦略テクノロジー(155A)は、大手企業に直接営業してシステム開発の内製を支援する「0次DX」を軸に、16期連続の増収を続ける企業です。
2026年12月期の中間期は、売上高が33.1%増、営業利益が119.5%増となり、会社は通期計画(売上高107億円、営業利益7.57億円)を上回る進捗としています。
0次ラボ・0次コンサルなど高付加価値サービスの拡大と、M&Aによる「DXの総合商社」化が、今後の成長の焦点です。

一方で、注意すべき点もあります。

  1. 売上の約56%をパートナーのエンジニアが占め、この部分の粗利率は約20%台と低めです。
  2. 2026年6月末ののれんは10.83億円(自己資本の約56%)、有利子負債は18.89億円に増えています。
  3. 2027年1月に取得予定のFlyby(取得原価8.29億円、業績連動の条件付対価あり)は、現有の自己資本(19.42億円)の約43%に相当する規模です。
    資金の調達方法は開示されておらず、下期のキャッシュ・フローと追加借入の動向が最優先の注視項目です。
  4. 第2四半期の営業利益は、新卒受け入れとのれん償却で第1四半期から大きく減少し、四半期ごとに利益が振れやすい構造です。
  5. 創業者側が約69.6%を保有し、流通株式比率は26.8%と低めで、無配です。
  6. 株価は年初来高値から約47%下落しており、値動きが大きい銘柄です。

今後は、社員エンジニア数と平均単価の推移、ソリューション型の売上比率、ピープルドット・Flybyの統合状況とのれんの動向を中心に見ていく必要があります。

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