【151A】ダイブグループ

2026/09/26

企業分析

t f B! P L

リゾートバイト(旅館・ホテル・スキー場などに住み込みで働く短期の仕事)に特化した人材サービスを主力とするダイブグループ(証券コード151A)について、2026年6月期決算短信・決算説明資料(いずれも2026年8月13日発表)、2025年6月期の有価証券報告書(2025年9月提出)、および2025年12月期中間の半期報告書(2026年2月提出)をもとに、ファンダメンタルズ(企業の実力を示す基礎的な情報)を初心者向けに解説します。

1. 企業概要

ダイブグループは、日本全国のリゾートホテル・旅館・スキー場・テーマパークなどの観光施設向けに、リゾートバイトに特化した人材派遣・有料職業紹介を行う企業です。
2002年3月に「有限会社ふらり」として設立され、2019年に「株式会社ダイブ」へ商号を変更、2024年3月に東京証券取引所グロース市場へ上場しました。
そして2026年7月1日付で持株会社体制へ移行し、商号を「株式会社ダイブグループ」に変更しています。
観光HR事業は新設の子会社「株式会社ダイブ」が、地方創生事業は同じく新設の「株式会社ダイブローカル」が承継し、当社は経営管理を担う持株会社として上場を維持しています。

事業は「観光HR事業」と「地方創生事業」の2本柱です。
観光HR事業は売上の94.6%(2026年6月期)を占める主力で、取引先の観光施設は6,882施設(2026年6月末)に上ります。
星野リゾート、共立メンテナンス、東急リゾーツ&ステイ、リゾートトラストなどの大手から地元密着型の小規模事業者まで幅広く、旅館の仲居、ホテルのフロント、レストラン、清掃、スキー場スタッフなどを供給しています。
年間の就業者数は15,726人、サービスサイトへの累計登録者数は45万人以上とされています。
ビジネスモデルは、営業担当者が観光施設から求人を集め、「リゾートバイトダイブ」などの求人サイトで求職者を募り、面談でマッチングするというものです。
観光HR事業の売上のうち約98%(2025年6月期実績)は人材派遣で、当社が雇用したスタッフを施設に派遣して派遣料金を受け取り、スタッフ給与などを差し引いた差額が利益になります。
一方の有料職業紹介は、紹介手数料のみが売上になるため、同じ1人の就業でも売上計上額は小さくなる性質があります。

地方創生事業は、観光地化されていない「非観光地」の遊休施設・遊休地を活用し、グランピング施設「ザランタン」やホテル業態「クラフトホテル」を企画・運営する事業です(2025年9月時点で全国8か所)。
自社運営のグランピング専門メディア「GLAMPICKS」で直接集客する(D2C=中間業者を通さず消費者に直接販売する形態)ため広告費を抑えられる点や、観光HR事業から運営スタッフを供給できる点が特徴で、地方創生事業の全アルバイトスタッフの約53.9%が観光HR事業経由の採用だと説明されています。

ミッションは「一生モノの『あの日』を創り出す」、ビジョンは「誰もがジブンの人生を愛せる世界へ」です。
なお、同社は現時点では連結財務諸表を作成しておらず(子会社の重要性が乏しいため。
2025年6月期の資産基準で0.64%)、本レポートの業績数値は特に断りがない限り単体決算です。
IR情報は同社公式サイト(https://dive.design/ir)で公開されています。

2. 業績・財務情報

直近の業績推移(単体)

決算期 売上高 経常利益 当期純利益 EPS 自己資本比率 ROE
2022年6月期 40.10億円 0.24億円 0.11億円 1.60円 34.0% 1.5%
2023年6月期 82.66億円 1.38億円 1.68億円 23.38円 30.6% 19.2%
2024年6月期 123.63億円 5.47億円 3.21億円 42.86円 43.9% 22.5%
2025年6月期 137.82億円 7.69億円 4.55億円 54.11円 51.2% 21.8%
2026年6月期 153.25億円 8.30億円 5.63億円 67.41円 55.5% 22.4%
2027年6月期(会社予想) 170.00億円 9.50億円 6.30億円 73.25円 ― ―

※2022年6月期〜2025年6月期は有価証券報告書(2025年6月期)の5期推移表、2026年6月期は決算短信より。
EPSは2025年1月1日の株式1株→3株の分割を考慮した数値です。
2027年6月期は会社予想で、会社は同期の事業計画を連結ベースで示しています。

2026年6月期は、売上高153.25億円(前期比11.2%増)、営業利益8.19億円(同8.4%増)、経常利益8.30億円(同8.0%増)、当期純利益5.63億円(同23.9%増)と、増収増益で営業・経常利益は過去最高を更新しました。
会社の期初計画と比べると、売上高は計画160億円に対して達成率95.8%と未達でしたが、営業利益は計画8.0億円に対して102.4%、経常利益は104.1%、当期純利益は104.2%と、利益面では計画を上回りました。
会社は売上未達の理由として、職業紹介の高止まりや地方創生事業の稼働率が想定を下回ったことを挙げています。
職業紹介は売上に紹介手数料しか計上されないため、就業者数が増えても売上高が伸びにくい構造です。

純利益の伸び(+23.9%)が営業・経常利益の伸び(+8%前後)を大きく上回った点には注意が必要です。
前期(2025年6月期)は、宿泊施設「クラフトホテル瀬戸内」の減損損失1.10億円などを含む特別損失1.84億円(特別利益との差し引きで約1.37億円の損失)を計上していましたが、当期の特別損失は固定資産除却損0.08億円のみでした。
この特別損益の改善が、税引前当期純利益の30.2%増(6.32億円→8.23億円)につながっています。
一方、法人税等の負担率(法人税等÷税引前利益)は前期の約28%から当期は約31.5%へ上昇しており、純利益の増益率は税引前利益の増益率よりやや低くなりました。
本業の実力は、営業利益・経常利益の+8%前後の増益ペースで測るのが実態に近いと考えられます。

利益率は横ばいから小幅な低下です。
売上総利益率は24.5%(前期25.2%)、営業利益率は5.3%(前期5.5%)でした。
会社は、観光HR事業でシェア拡大に向けた投資としてスタッフの時給を引き上げたことが売上総利益率を押し下げたと説明しています。
それでも売上総利益は前期比8.1%増の37.49億円と増えており、広告宣伝費を費用対効果重視で運用した結果、就業者数が8.0%増えたことで営業利益率は▲0.2ポイントにとどまりました。

セグメント別の業績(2026年6月期)

セグメント 売上高 前期比 営業利益 前期比 営業利益率
観光HR事業 145.05億円 +11.8% 13.60億円 +6.8% 9.4%
地方創生事業 8.18億円 +3.2% 0.17億円 +201.7% 2.1%
その他(子会社への経営指導料等) 0.03億円 ― 0.01億円 ― ―
全社費用(調整額) ― ― ▲5.59億円 ― ―
合計(損益計算書計上額) 153.25億円 +11.2% 8.19億円 +8.4% 5.3%

観光HR事業の営業利益は、全社費用(管理部門の一般管理費など)を差し引く前の数字です。
セグメント合計の営業利益13.78億円から全社費用5.59億円が引かれて、会社全体の営業利益8.19億円になる構造で、管理部門コストの負担が大きい点は把握しておきたいところです。
地方創生事業は前期の0.06億円から0.17億円へ改善したものの、売上の5.3%、利益の面ではまだ小さな存在です。

観光HR事業のKPI(重要業績評価指標)

観光HR事業の売上は、おおむね「就業者数×就業者1人あたり売上高+職業紹介」で決まります。
2026年6月期の実績は次のとおりです。

指標 2025年6月期 2026年6月期 前期比
就業者数(延べ人数) 51,192人 55,945人 +9.3%
うち人材派遣 47,276人 52,086人 +10.2%
うち職業紹介 3,916人 3,859人 ▲1.5%
就業者数(UU数=重複を除く実人数) 14,555人 15,726人 +8.0%
就業者1人あたり売上高(LTM) 134.4万円 134.0万円 ▲0.3%

※UU数は2026年6月期4Q時点の年間累計の実人数です。
延べ人数は同じ人が複数月働いた場合に月ごとに1名とカウントする指標で、2026年6月期から会社がKPIとして採用しています。

成長のエンジンは「就業者数の増加」で、1人あたり売上高(就業期間の長さなどを反映)はほぼ横ばいです。
観光HR事業の四半期売上の前年同期比は、1Q +6.5%、2Q +10.1%、3Q +14.6%、4Q +16.6%と右肩上がりに加速しており、下期にかけて勢いが強まった点は好材料です。

強い季節性(四半期の業績変動)

2026年6月期 1Q(7〜9月) 2Q(10〜12月) 3Q(1〜3月) 4Q(4〜6月)
売上高 40.62億円 36.85億円 38.71億円 37.05億円
営業利益 4.18億円 1.79億円 1.59億円 0.61億円
営業利益率 10.3% 4.9% 4.1% 1.6%

年間の営業利益の約51%(8.19億円のうち4.18億円)を夏の1Qで稼ぐ、強い季節性があります。
有価証券報告書でも「四半期ごとの業績変動」は発生可能性が最も高いリスクに分類されています。
また、地方創生事業は3Q・4Qが営業赤字(3Q ▲0.63億円、4Q ▲0.41億円)となる冬〜春の閑散期があり、通期では黒字でも四半期ごとには大きくブレます。
半期報告書によれば2025年7〜12月の中間期は売上高77.48億円(前年同期比8.3%増)、営業利益5.98億円(同8.1%増)、中間純利益3.80億円(同2.8%増)で、通期の純利益の伸びが中間より大きくなったのは、前期の下期に特別損失があった反動も影響しています。
四半期の進捗を評価する際は、単純に4分の1ずつで按分せず、この季節性を踏まえて読み解く必要があります。

財務指標とキャッシュフロー

自己資本比率(返済不要の自己資本が総資産に占める割合)は55.5%(前期51.2%)、ROE(自己資本利益率=株主が出した資金でどれだけ効率よく利益を稼いだかを示す指標)は22.4%と、高い資本効率が続いています。
総資産49.81億円のうち、現金及び預金が24.85億円と約半分を占め、有利子負債(短期借入金・1年内返済予定の長期借入金・長期借入金の合計)は3.17億円にとどまるため、差し引きで約21.7億円の実質的な手元資金(ネットキャッシュ)があります。
流動比率(流動資産÷流動負債)は約195%です。

キャッシュフローは、営業活動によるキャッシュフローが8.01億円のプラスと、前期の2.68億円から大きく増えました。
当期純利益5.63億円の約1.4倍にあたります。
前期は自己株式の買付代金を証券会社に先払いした「前渡金」の増加などが営業キャッシュフローを押し下げていた一方、当期はその反動(前渡金の減少1.01億円)や未払金・未払費用の増加が寄与しています。
売上債権は1.64億円増加しており、売上の伸びに伴う運転資金の増加要因になっています。
投資活動によるキャッシュフローは▲2.20億円で、内訳は新設子会社2社への出資(関係会社株式の取得)1.25億円、有形固定資産の取得0.53億円、無形固定資産の取得0.31億円などです。
財務活動によるキャッシュフローは▲1.61億円で、長期借入金の返済0.68億円と自己株式の取得0.84億円が主な内訳です。
営業キャッシュフローと投資キャッシュフローの合計は約5.8億円のプラスで、期末の現金及び現金同等物は24.85億円に積み上がりました。

3. 成長戦略・将来性

決算説明資料で示されているのは、最終年度の売上高・利益目標を掲げた中期経営計画ではなく、2027年6月期の事業計画と中期の戦略の方向性です。
2027年6月期の事業計画は、売上高170.0億円(前期比+10.9%)、営業利益9.5億円(+16.0%)、経常利益9.5億円(+14.4%)、当期純利益6.3億円(+11.8%)、EPS73.25円という内容です。
会社は、後述のM&Aや新規事業による売上・利益はこの計画に含めておらず、費用(一部の先行投資)のみを織り込んでいると明記しています。
つまり、M&Aが実現すれば上振れ要因になり得る一方、営業利益の増益率が売上の増益率を上回る計画になっている点は、生産性向上(AI活用による自動化など)の成果が問われる部分です。
なお会社は、令和8年熊本地震の一時的な影響を想定しつつ、観光HR事業は持続的に成長するとしています。

中長期の戦略の柱は「観光業界のプラットフォーマー」への進化です。
同社は自社を「Dive 1.0(観光業特化の人材サービス)」から、「Dive 2.0(観光業界のオペレーションDX化推進)」、さらに「Dive 3.0(観光業界のプラットフォーマー)」へと発展させる構想を掲げています。
背景には、取引先約6,800施設から得られる一次情報を通じて把握した、観光業界の人手不足・後継者問題・資本不足といった共通課題があります。
そのために2026年7月に持株会社体制へ移行し、M&Aや新規事業の創出を機動的に進める組織構造としました。

具体的な成長戦略は次の3つに整理されています。

  1. 観光HR事業の強化
    20〜30代の若手人材の85.5%が「リゾートバイトを知らない、または詳しくは知らない」という調査(2023年4月)を背景に、ブランドアンバサダーの起用、現役リゾートバイトのインフルエンサー(350名超)によるSNS発信、SEO・AIによる検索対策(AI OverView・LLMO)で認知拡大を図っています。
    また、50歳以上のシニア人材(全就業者の割合は2012年の0.78%から2026年6月期は7.1%へ上昇)や、ワーキングホリデー・特定技能の外国人材(支援施設数72施設)の獲得も強化します。
    さらに、AI面接・AIエージェントによる求職者対応の自動化、業界初のリゾートバイト専門アプリの公開など、生産性向上への投資を進めています。
  2. 地方創生事業の拡大
    ザランタンの規模拡大やクラフトホテルなど他業態への展開、将来的にはフランチャイズ展開も視野に入れています。
  3. 観光業のM&Aと新規事業
    M&Aの目的は「観光イノベーターの実現」と「EPS(1株当たり利益)の最大化」とされ、「方針との親和性」「取得価額の妥当性(過度なプレミアムは払わない)」「ファイナンス目線(資本効率重視、希薄化は極力回避)」の3原則を掲げています。
    実績としては、2024年7月に子会社化した株式会社宿屋塾(観光・宿泊業界向けの人材育成支援)で統合作業(PMI)が完了し、増収増益・過去最高の売上・利益を記録したと説明されています。
    新規事業では、観光業界特化のSaaS「ハッサク」(求人から就業管理までを一元化するシステムで、176施設に導入)、地方の人手不足対策としての「共同寮」プロジェクト、観光庁の事業などが挙げられています。

設備投資は、2026年6月期で有形・無形固定資産の取得が合計約0.84億円と小さく、人材サービスが中心の同社は大規模な設備投資を必要としない事業構造です。
研究開発活動としては、有価証券報告書に観光業界特化型SaaS「ハッサク」(特許出願中)の自社開発が記載されており、求人情報の公開から就業中のスタッフ管理までを一元化し、複数の派遣会社への依頼を一括管理できる点が特徴とされています。
システム開発への投資に伴い、貸借対照表上のソフトウェアは2.12億円(前期0.97億円)に増加しています。

今後の成長を左右するポイント

今後の成長を左右するポイントとして、次の3点が考えられます。

  1. 利益の質
    就業者数の増加という「量」による成長で、1人あたり売上高や売上総利益率は横ばいから小幅低下であるため、今後は賃金上昇(最低賃金の引き上げなど)を派遣料金に転嫁できるかが収益性を左右すると考えられます。
  2. マクロ環境との関係
    売上はインバウンド(訪日外国人旅行者)需要と連動して伸びてきたと会社は説明していますが、2026年6月の訪日外客数が前年同月比6.8%減となり、会社資料によれば中国人旅行者が半減する中でも、会社は取引先の宿泊施設への影響は「極めて軽微」としています。
    ただし延べ旅行者数の90%以上は日本人旅行者であり、国内旅行需要や地方の人手不足という構造要因が下支えになっていると見られます。
  3. M&A・新規事業
    成長の上振れ余地である一方、投資規律を守れなければのれんの減損や希薄化につながるため、実際の案件内容と取得価額の開示を確認していく必要があります。

4. 株主還元

同社は会社設立以来、配当を実施しておらず、現時点で配当の実施時期も「未定」です。
配当政策として、「現在は成長過程にあり、事業拡大や組織体制強化への投資のため内部留保の充実が重要」としつつ、「今後、事業基盤の整備等を進め、継続的かつ安定的な配当を行うことを検討していく」方針を示しています。
2027年6月期の配当予想も0円です。
配当を行う場合は、年1回の期末配当を基本とし、12月31日基準の中間配当も定款上可能とされています。
したがって、配当利回りは0%で、インカムゲイン(配当収入)を期待する銘柄ではありません。

一方、自己株式取得は実施しています。
2025年5月9日の取締役会で、上限20万株・2億円の自己株式取得(取得期間2025年5月12日〜11月28日)を決議し、2025年8月19日までに上限の20万株(取得総額約1.83億円)を取得して終了しました。
内訳は2025年6月期に10.86万株(約1.00億円)、2026年6月期に9.14万株(約0.83億円)です。
2026年6月期のキャッシュフロー計算書上の自己株式取得支出は0.84億円で、当期純利益の約15%に相当します。
自己株式の保有比率は発行済株式総数の2.33%です(2026年6月末時点の自己株式数200,000株÷発行済株式数8,600,775株)。
決算短信・決算説明資料では、この2025年5月決議分以降の新たな取得枠には触れられていません。

配当性向(純利益のうち配当に回した割合)は、無配のため算出できません。
現金を24.85億円積み上げており、M&A原資や成長投資に充てる方針が読み取れるため、株主還元の姿勢は「配当より成長投資・M&A優先」と整理できます。

5. ガバナンス・リスク

ガバナンス

同社は監査役会設置会社(取締役の職務執行を、独立した機関である監査役が監査する形態)で、取締役会は(2025年9月時点で)代表取締役社長の庄子潔氏を議長に、取締役6名(うち社外取締役2名、社外取締役比率約33%)で構成されています。
監査役3名は全員が社外監査役(弁護士2名・公認会計士1名)です。
2025年6月期の取締役会は20回開催され、取締役・監査役の全員が全回出席しています。
執行役員制度も導入されています。
役員9名のうち女性は1名(比率11.1%)です。
社外取締役の独立性に関する明確な基準は定められていませんが、東京証券取引所の独立役員の基準を勘案して選任していると記載されています。
なお、代表取締役社長の庄子潔氏は2012年から社長を務める創業期以来の経営の中心人物で、有価証券報告書のリスク項目でも「特定の人物への依存」が挙げられ、職務権限の委譲や合議制の推進で依存度を下げる方針が示されています。

政策保有株式(取引関係の維持などを目的とする持ち合い株式)については、2025年6月期末時点で上場株式の保有はなく、保有する非上場株式は3銘柄・2,190万円(経営戦略上の保有)のみです。
2026年6月期末の関係会社株式は1.47億円(前期0.22億円)に増えていますが、これは新設子会社2社への出資(1.25億円)によるものです。
同社は「合理性が認められない場合は縮減を検討する」という方針を掲げています。

主なリスク要因

有価証券報告書に記載された主なリスクと、決算資料から読み取れる留意点を整理します。

  1. 派遣スタッフ等の確保(発生可能性「中」、影響度「大」)
    雇用情勢の変化などで人材確保が進まなければ業績に直結するため、広告宣伝や採用施策の継続的な投資が必要で、人手不足による採用コストの上昇や賃上げ圧力が利益を圧迫する可能性を会社自身も認めています。
  2. 法的規制(影響度「大」)
    労働者派遣事業許可(有効期限2027年12月31日)、有料職業紹介事業許可(同2030年5月31日)に依存しており、法令違反による許可取消しや、労働者派遣法・職業安定法・労働基準法・個人情報保護法・旅館業法などの改正・強化が事業に影響する可能性があります。
    また、社会保険料の事業主負担が制度改定で増えるリスクも挙げられています。
  3. 四半期ごとの業績変動(発生可能性「高」)
    前述のとおり夏の繁忙期に利益が偏ります。
  4. 地方創生事業固有のリスク
    公共施設内で営業する施設は指定管理者との有期契約に依存し、契約更新ができない可能性があります。
    また新規施設の開業には1年〜1年半程度かかり、地元説明会の反対で頓挫する可能性もあります。
    半期報告書では、熊出没報道や民泊の台頭といった外部環境の変化に言及されています。
    固定資産の減損リスクについても、前期にクラフトホテル瀬戸内で減損損失1.10億円を計上した実績があります。
  5. ストック・オプション(新株予約権)による株式価値の希薄化
    潜在株式を考慮した2026年6月期のEPSは65.89円(通常のEPSは67.41円)と、約2%の希薄化があります。
    2025年9月に取締役1名へ付与された第4回新株予約権(17.55万株、行使価額984円)には、2028年6月期・2029年6月期の売上高がいずれも220億円を超えることや、2029年6月期の営業利益が14億円を下回った場合は半数が行使できないといった業績条件が付いており、この数値は会社の内部的な目標水準を示すヒントとも読めますが、あくまで新株予約権の行使条件であり、会社の公式な中期計画ではありません。
  6. 株式の流動性
    流通株式比率は30.7%(2025年6月末)で、後述のとおり創業者側への持株の集中が背景にあります。

リスク項目の総括として、同社はほぼ無借金で現金が潤沢なため、金利上昇や資金繰りに起因するリスクは小さい一方、事業の本質は「人材の確保」と「観光需要」に依存しています。
感染症や自然災害(令和8年熊本地震など)、訪日外国人旅行者数の変動の影響を受けやすい産業構造であるため、これらのイベントが観光施設の人材需要を通じて業績を左右する点に留意が必要です。

6. 株主構成・株価情報

大株主の状況

半期報告書(2025年12月31日現在)に記載された大株主は次のとおりです。

株主名 持株比率
庄子 潔(代表取締役社長) 41.09%
合同会社なかなか(庄子氏の資産管理会社) 25.61%
KGI ASIA LIMITED-CLIENT ACCOUNT 2.74%
株式会社SBI証券 2.62%
ダイブ従業員持株会 1.91%
NOMURA PB NOMINEES LIMITED OMNIBUS-MARGIN (CASHPB) 1.87%
SBI4&5投資事業有限責任組合 1.73%
阪田 和弘 1.67%
山本 拓嗣(取締役) 1.63%
楽天証券株式会社共有口 1.38%

※持株比率は自己株式を除く発行済株式数に対する割合です。
上位10名の合計は82.25%です。

庄子潔氏本人と資産管理会社の合同会社なかなかを合算すると持株比率は約66.7%に達し、創業者による強い支配となっています(有価証券報告書の2025年6月30日時点でも約66.6%)。
オーナー経営による意思決定の速さがメリットになる一方、少数株主にとっては経営への影響力が小さいこと、流通株式比率が30.7%と低めで株式の売買が細りやすいことに留意が必要です。
有価証券報告書のリスク項目でも、大株主による売出しや公募増資による流動性向上の方針が示されています。

株式分割・単元株情報

2025年1月1日付で普通株式1株につき3株の株式分割を実施しました。
発行済株式総数は2026年6月末時点で8,600,775株(うち自己株式200,000株)、単元株式数は100株です。
上場市場は東京証券取引所グロース市場です。

株価指標

Yahoo!ファイナンス(2026年9月18日更新時点の表示データ)によると、株価は630円、時価総額は約54.2億円です。
指標は次のとおりです。

指標 数値 算定根拠
PER(株価収益率) 約8.4倍 会社予想EPS 74.99円(2027年6月期、自己株式を除く株式数ベース)
PER(参考:会社発表EPSベース) 約8.6倍 決算短信の2027年6月期予想EPS 73.25円(本レポートによる計算)
PER(参考:実績ベース) 約9.3倍 2026年6月期実績EPS 67.41円(本レポートによる計算)
PBR(株価純資産倍率) 約1.91倍 実績BPS 329.11円(2026年6月末)
配当利回り 0.00% 無配
最低購入代金 約6.3万円 630円×100株

年初来高値は737円(2026年1月16日)、年初来安値は566円(2026年6月12日)で、現在の株価はこのレンジの下寄りです。
なお、株価情報は日々変動するため、最新の数値は証券会社のサイト等でご確認ください。

割安に見える背景と留意点

ROEが22%台でありながらPERが8倍台と、数字だけを見ると割安に見えますが、その背景として、①時価総額が約54億円と小さく、流通株式比率も約3割にとどまること、②派遣売上が中心のため売上総利益率が2割台前半と薄く、人材需給や景気の影響を受けやすいこと、③夏の繁忙期に利益が偏る季節性、④M&A・新規事業の成否が未知数であること、⑤2027年6月期から持株会社・連結ベースへ移行するため業績の比較可能性が変わること、などが市場に織り込まれている可能性があります。
ただし、同業他社のバリュエーションとの比較は他データとの比較が必要であり、ここでは断定を避けます。

7. まとめ

ダイブグループ(151A)は、リゾートバイトに特化した観光HR事業で約6,900施設の取引先を持ち、2026年6月期に売上153億円(+11.2%)、営業・経常利益で過去最高を更新した成長企業です。
ROE22%台、自己資本比率55.5%、実質ネットキャッシュ約22億円と財務の健全性も高く、営業キャッシュフローは純利益の約1.4倍と、利益の裏付けも確認できます。
2026年7月には持株会社体制へ移行し、「観光業界のプラットフォーマー」を掲げてM&A・新規事業に踏み出す局面に入りました。

一方で、注意すべき点もあります。

  1. 無配で、株主還元は自己株式取得が中心です。
  2. 創業者側が約67%を保有し、流通株式比率が低いため、株式の流動性に制約があります。
  3. 成長は就業者数の増加が担っており、利益率は横ばいから小幅低下で、賃金上昇を価格に転嫁できるかが今後の課題です。
  4. 営業利益の約半分を夏の1四半期で稼ぐ強い季節性があり、M&A・新規事業は会社計画に収益が織り込まれていないため、案件の中身と取得価額の妥当性を見極める必要があります。

2027年6月期は売上170億円・営業利益9.5億円の計画で、期初の計画に対する進捗を四半期ごとに確認していくことが重要です。

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