【1431】Lib Work

2026/09/12

企業分析

t f B! P L

熊本県山鹿市に本社を置く注文住宅・建売住宅メーカー、株式会社Lib Work(証券コード1431)について、2026年6月期決算短信および2026年2月提出の半期報告書をもとに、ファンダメンタルズ(企業の実力を示す基礎的な情報)を初心者向けに解説します。

1. 企業概要

Lib Workは1997年8月設立、熊本県山鹿市に本社を置く住宅会社です。「サステナブル&テクノロジーで住まいにイノベーションを起こす」をミッションに掲げ、従来の「住宅会社」から、テクノロジーを軸にした「HOUSE TECH COMPANY」への進化を目指している点が特徴です。東京証券取引所グロース市場と福岡証券取引所Q-Board市場の2市場に重複上場しています。

会計上の報告セグメントは、注文住宅・建売住宅・分譲地の請負・販売を行う「戸建住宅事業」(建築請負事業及び不動産販売事業の総称)の単一セグメントです。もっとも、事業運営上は次の3本柱で語られています。

  • 戸建住宅事業:熊本・福岡・大分・佐賀・千葉を中心に注文住宅・建売住宅・分譲地を展開する中核事業。2026年5月には鹿児島にも出店し、九州エリアでの営業基盤を拡充しました。
  • 3Dプリンター住宅事業:土を主原料とした3Dプリンター住宅の開発・販売。
  • プラットフォーム事業:AIを活用した住宅プラン提案サービスや、他社ブランドとのIPライセンス提携など、ストック型収益の育成を目指す事業。

デジタルマーケティングへの傾注も特徴で、自社運営のYouTubeチャンネル「Lib Work ch」は2025年12月に登録者数15万人を突破し、戸建住宅業界を代表する動画チャンネルに成長しています。継続的な情報発信によって住宅購入の検討前段階から顧客との接点を構築し、集客コストの削減にもつなげているとしています。また、2026年6月1日には完全子会社であったタクエーホーム株式会社を吸収合併し、関東圏における経営資源の集約と意思決定の迅速化を図りました。

2. 業績・財務情報

直近の業績推移

決算期売上高営業利益経常利益親会社株主帰属純利益EPS自己資本比率ROE
2025年6月期160.0億円8.33億円8.55億円4.95億円21.19円40.9%10.7%
2026年6月期156.8億円5.28億円2.85億円1.03億円4.43円34.7%2.2%
2027年6月期(会社予想)162.0億円5.80億円5.10億円2.80億円12.03円――

2026年6月期は、売上高156.8億円(前期比2.0%減)、営業利益5.28億円(同36.6%減)、経常利益2.85億円(同66.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益1.03億円(同79.2%減)と、増収基調から一転して大幅な減収減益となりました。 背景には複数の要因が重なっています。

第一に、2025年4月に施行された改正建築基準法により、木造住宅でも構造関係図書等の提出が新たに義務付けられ(いわゆる「4号特例」の縮小)、設計業務・建築確認審査に要する期間が長期化しました。これにより自社およびタクエーホームの一部物件で着工・引渡しが後ろ倒しとなり、売上計上時期に影響が生じています(会社側は契約キャンセルは発生していないとしています)。

第二に、同社が保有する暗号資産(ビットコイン)について、期末時点の時価評価に基づき評価損225百万円を営業外費用として計上しており、これが経常利益を大きく押し下げた主因の一つです。暗号資産を事業会社が資産として保有し、その時価変動が決算に直接影響する点は、住宅業界の中でも珍しい特徴といえます。

第三に、新リース会計基準の適用を見据えたROA(総資産経常利益率)向上策として、常設展示場から建売型モデルへの移行を進める中で一部展示場を早期撤退した結果、減損損失47百万円・店舗閉鎖損失9百万円を特別損失として計上しました。会社はこれを「店舗業績の悪化ではなく、将来の収益性・資産効率向上を目的とした戦略的な取り組み」と説明しています。

なお、2026年6月期の売上高・営業利益は2025年11月公表の業績予想修正どおりに着地しており、下期に入ってからのサプライズではありません。

財務指標とキャッシュフロー

自己資本比率は34.7%(前期40.9%)に低下しました。ROE(自己資本利益率)は2.2%(前期10.7%)、総資産経常利益率は2.3%(前期7.3%)と、いずれも大幅に悪化しています。これは主に、上記の一過性・評価性の損失によって純利益・経常利益が圧縮された結果であり、後述の通り翌期は大幅な改善が見込まれています。

キャッシュフローは、営業活動によるキャッシュフローが14.2億円のマイナス(前期は13.8億円のプラス)に転じました。 これは、リモートワークからオフィス勤務への回帰など市場ニーズの変化を踏まえ、利便性の高いエリアで戦略的な用地取得を進めた結果、土地の取得単価が上昇し、販売用不動産・仕掛販売用不動産(棚卸資産)が合計で約20.7億円増加したことが主因です。投資活動によるキャッシュフローは9.1億円のマイナスで、暗号資産の取得(5.0億円)も含まれています。財務活動によるキャッシュフローは、短期借入金の純増などにより18.7億円のプラスとなり、営業キャッシュフローの不足を補う形になりました。現金及び現金同等物の期末残高は33.6億円です。

会社はROA(総資産経常利益率)を重視した経営を掲げ、建売型モデルの強化による販売回転率の向上・資産効率の改善を通じて、投下資本の早期回収と資産圧縮を図る方針を示しています。

3. 成長戦略・将来性

Lib Workの成長戦略は、前述の3本柱それぞれの深掘りとして整理できます。

戸建住宅事業では、確度の高い見込み顧客の獲得に重点を置いたデジタルマーケティングと、DX・AIを活用した営業・設計業務の効率化を推進しています。2026年5月の鹿児島出店は、単なる営業エリア拡大にとどまらず、既存の認知度・デジタル集客力・施工体制を活かした「ドミナント戦略」(特定エリアに経営資源を集中して市場シェアとオペレーション効率を同時に高める手法)と位置づけられています。

3Dプリンター住宅事業では、2025年7月に土を主原料とした一般住宅用3Dプリンター住宅「Lib Earth House “model B”」を完成させ、2026年1月から販売を開始しました。セメントを使用せず自然由来の素材を中心に構成しながら、従来モデル比約5倍の強度を実現しており、配合・製造技術について特許を取得しています。発表以降、来場予約・資料請求等の反響は累計1,500件を超えており、今後は技術開発に加えて販売体制の構築・海外展開に向けた準備を進めるとしています。3Dプリンター住宅は世界的にも実用化例が少ない新しい技術領域であり、成長性は期待できる一方、量産化や採算性については今後の実績を注視する必要があります。

プラットフォーム事業では、AIを活用した住宅プラン提案サービス「My Home Robo」の登録プラン数が10,000プランを突破し、全国の住宅会社・工務店へのサービス提供基盤を拡充しています。また、アパレル大手の株式会社アダストリアとのIPライセンス事業「niko and ... EDIT HOUSE」は、加盟住宅会社が全国に広がり、モデルハウスも全国累計27店舗まで拡大しました。自社で施工を行わずライセンス収入を得られるこの事業は、ストック型収益(継続的・安定的に得られる収益)の柱として育成が進められています。

今後の見通しとして、会社は物価上昇・金利上昇により戸建住宅市場を取り巻く環境が厳しさを増すとの認識を示しつつ、デジタルマーケティングによる集客を軸に販売チャネルを多角化し、プラットフォーム事業のライセンス数・加盟企業数の拡大を図る方針です。2027年6月期の業績予想は、売上高162.0億円(前期比3.3%増)、営業利益5.80億円(同9.9%増)、経常利益5.10億円(同78.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2.80億円(同171.6%増)と、大幅な増益を見込んでいます。 これは前期に計上された暗号資産評価損・減損損失といった一過性・評価性の損失が翌期には想定されていないことが主な理由とみられます。

なお、2026年7月28日に熊本県を中心に「令和8年熊本地震」が発生しており、会社は2027年6月期において被災オーナーへの復旧・復興支援を最優先事項とし、上期の業績予想にはその対応の影響を織り込んでいるとしています。熊本に本社機能を置く同社にとって、地震という自然災害リスクが現実の経営課題として顕在化した形です。

住宅業界全体としては、2025年の新設住宅着工戸数が740,667戸(前年比6.5%減)と3年連続で減少するなど、市場全体は弱含みで推移しており、業界内での同社の位置づけ(シェア等)については他データとの比較が必要です。

4. 株主還元

Lib Workの年間配当金は、2025年6月期・2026年6月期とも1株あたり6.40円(四半期ごとに1.60円)で据え置かれています。配当性向(稼いだ純利益のうちどれだけを配当に回したかを示す指標)は、2025年6月期が30.2%であったのに対し、2026年6月期は純利益の急減により144.4%まで跳ね上がりました。これは、会社が減益局面でも配当金額そのものは維持する「安定配当」の方針を優先した結果です。2027年6月期は、予想通り増益となれば配当性向は53.2%まで低下する見込みで、同額の年間6.40円(四半期1.60円)が予想されています。

自己株式については、2024年9月の取締役会決議に基づき自己株式287,700株を取得した実績があるほか、2019年・2020年の取締役会決議に基づき、従業員(一部子会社従業員含む)を対象とした株式付与信託を導入しています。2025年10月には、社外取締役を除く取締役・従業員等を対象とした株式報酬制度の改定も決議されており、インセンティブ設計の見直しが継続的に行われています。

5. ガバナンス・リスク

Lib Workは監査役会設置会社(取締役会とは別に監査役・監査役会を置き、独立した立場から取締役の職務執行を監視する機関設計)です。なお、今回参照した半期報告書には役員の異動について「該当事項はありません」と記載されているのみで、取締役の人数・社外取締役比率・監査役構成といった具体的な数値は記載されていません。 これは半期報告書が年次の有価証券報告書に比べて簡易な様式であるためで、より詳細な機関設計を確認するには年次の有価証券報告書等、別の資料が必要です。同様に、政策保有株式(いわゆる持ち合い株式)の状況についても、今回の半期報告書には記載がありません。

事業等のリスクについても、半期報告書では「前事業年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについての重要な変更はない」とされています。もっとも、決算短信の内容から読み取れる留意点として、次のような点が挙げられます。

  • 暗号資産(ビットコイン)保有に伴う価格変動リスク:2026年6月期には期末時価評価に基づき225百万円の評価損を計上しており、暗号資産市況次第で今後も損益が変動しうる点。
  • 自然災害リスク:2026年7月に発生した熊本地震により、本社を置く熊本県内で被災オーナーへの対応が生じており、2027年6月期業績への影響が織り込まれている点。なお、この地震は決算期末(2026年6月30日)後に発生した事象ですが、決算短信の「重要な後発事象」欄自体は「該当事項はありません」と記載されている一方、経営成績の定性的な説明箇所では地震への言及と2027年6月期業績への影響が述べられており、開示の見せ方に留意が必要です。
  • 法規制・許認可リスク:2025年4月施行の改正建築基準法による4号特例の縮小など、規制変更が設計・引渡しスケジュールに直接影響しうる点。
  • 住宅市場全体の縮小リスク:新設住宅着工戸数が3年連続で減少するなど、国内の戸建住宅市場そのものが構造的に縮小傾向にある点。

6. 株主構成・株価情報

半期報告書(2025年12月31日現在)に記載された大株主は次の通りです。

株主名持株比率
株式会社CSホールディングス34.23%
瀬口 力11.51%
瀬口 悦子8.29%
瀬口 瑞恵2.71%
井手尾 環1.69%
株式会社日本カストディ銀行(信託口)1.58%
Lib Work従業員持株会1.20%
酒巻 英雄0.72%
株式会社肥後銀行0.59%
Lib Work取引先持株会0.55%

上位10名の合計は63.07%です。株式会社CSホールディングスは代表取締役社長・瀬口力氏の資産管理会社であり、これに瀬口氏本人および親族(瀬口悦子氏・瀬口瑞恵氏)の持株を合わせると、創業家サイドで発行済株式(自己株式除く)の約56.7%を保有する計算になります。 オーナー経営としての意思決定の速さが期待できる一方、創業家への株式集中度は高い水準にあります。

株式については、発行済株式総数24,151,540株(うち自己株式885,023株)、単元株式数100株です。ストックオプションなど潜在株式は現時点で発行されていません。

現在の株価情報(2026年8月28日時点、Yahoo!ファイナンスのデータ)では、株価652円、時価総額約157.5億円、PER(2027年6月期会社予想EPS12.03円ベース)約54.2倍、PBR(2026年6月期実績BPS201.14円ベース)約3.24倍、配当利回り(会社予想)0.98%となっています。PERが50倍を超える高い水準にあるのは、直近実績である2026年6月期の純利益が暗号資産評価損等により一時的に落ち込んでおり、翌期の急回復を織り込んだ予想EPSを分母にしていることが主因です。実績ベースのEPS(4.43円)で計算すると株価収益率はさらに大きく異なる数値になる点には注意が必要です。一般的な住宅業界の平均的な株価指標水準との比較については他データとの確認が必要であり、株価情報は変動するため最新の数値は証券会社のサイト等でご確認ください。

7. まとめ

Lib Work(1431)は、注文住宅・建売住宅という戸建住宅事業を土台にしながら、3Dプリンター住宅やAI活用のプラットフォーム事業など、テクノロジーを軸にした新規領域への投資を積極的に進めている点が特徴の企業です。2026年6月期は、建築基準法改正に伴う引渡し遅延、暗号資産(ビットコイン)の評価損、展示場閉鎖に伴う減損など複数の一過性要因が重なり、大幅な減益となりました。配当は減益下でも据え置かれましたが、その分配当性向は一時的に144%まで上昇しています。2027年6月期は大幅な増益予想が示されていますが、これは主に一過性損失の剥落によるところが大きく、実際の収益力の改善ペースは今後の四半期決算で確認していく必要があります。また、暗号資産保有という他の住宅会社にはあまり見られないリスク要因や、本社を置く熊本での地震被害への対応、創業家への株式集中度の高さも、投資判断にあたって留意すべきポイントといえるでしょう。


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