注文住宅の建築請負を主力事業とするタマホーム(証券コード1419)について、2026年5月期有価証券報告書および同期決算短信をもとに、ファンダメンタルズ(企業の実力を示す基礎的な情報)を初心者向けに解説します。
1. 企業概要
タマホームは、「より良いものをより安く提供することにより社会に奉仕する」を経営理念に掲げ、1998年に福岡県筑後市で注文住宅建設会社として創業した企業です。「自由設計・オール電化・豊富な設備仕様」を特徴とする主力商品「大安心の家」を中心に、ロードサイド型の独立店舗を全国に展開する営業モデルで成長し、2013年に東京証券取引所第一部(現プライム市場)・福岡証券取引所に上場しました。2026年5月31日現在、独立店舗183店舗・住宅総合展示場51箇所を含む234の営業拠点を全国47都道府県に展開しています。
事業セグメントは、住宅事業(注文住宅の建築請負、リフォーム、設計支援等)、不動産事業(戸建分譲、マンション販売、サブリース、オフィス区分所有権販売)、金融事業(保険代理業、つなぎ融資取次)、エネルギー事業(メガソーラー発電)、およびその他事業(広告代理業、家具販売、地盤保証、農業、車両リース等)の5つで構成されています。中核である住宅事業は売上高の約7割を占める一方、近年は戸建分譲・オフィス区分所有権販売を含む不動産事業の存在感が増しているのが特徴です。
企業グループは、当社および子会社11社・関連会社3社(2026年5月31日現在)で構成されており、創業家である玉木家が経営の中心を担っています。代表取締役会長の玉木康裕氏が創業者で、現在は長男の玉木伸弥氏が代表取締役社長を務めています。
2. 業績・財務情報
業績推移
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 親会社株主帰属純利益 | EPS | 自己資本比率 | ROE |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2024年5月期 | 2,477.3億円 | ― | 128.8億円 | 87.5億円 | 301.94円 | 42.7% | 23.9% |
| 2025年5月期 | 2,008.2億円 | 41.1億円 | 37.9億円 | 14.8億円 | 50.99円 | 37.1% | 4.1% |
| 2026年5月期 | 1,977.4億円 | 38.4億円 | 37.6億円 | 12.1億円 | 41.86円 | 34.3% | 3.8% |
| 2027年5月期(会社予想) | 2,300.0億円 | 75.0億円 | 67.0億円 | 40.0億円 | 137.99円 | ― | ― |
※2024年5月期の営業利益は有価証券報告書の開示形式上、本レポートでは記載していません(経常利益以下の項目は開示ベース)。
同社の業績は、2024年5月期から2025年5月期にかけて経常利益が128.8億円から37.9億円へ約7割減少するなど、過去2〜3期で急激な収益悪化を経験しています。 2026年5月期も、売上高197.7億円(前期比1.5%減)、営業利益38.4億円(同6.6%減)、経常利益37.6億円(同0.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益12.1億円(同17.9%減)と、増収増益への転換には至らず低迷が続きました。ROEは2024年5月期の23.9%から2026年5月期には3.8%まで低下しており、資本効率の面でも大きく後退している点が確認できます。
特に注目すべきは、中核である住宅事業が、2026年5月期に営業損失10.7億円(前期は営業利益3.3億円)に陥ったことです。 注文住宅の引渡棟数が5,176棟と前期比7.5%減少したことが主因で、輸入木材やナフサ由来製品を中心とする資材価格の上昇基調も収益を圧迫しました。一方、戸建分譲事業やオフィス区分所有権販売事業を含む不動産事業は、売上高54.9億円(同14.9%増)・営業利益35.8億円(同48.1%増)と大きく伸長し、住宅事業の損失を穴埋めする形で全社の経常利益を支えました。 金融事業(保険代理業等)も営業利益2.5億円(同64.8%増)と好調でした。
会社側は2027年5月期を初年度とする中期経営計画「タマステップ2031」を策定し、「V字回復から持続的成長へ」を基本方針として掲げ、売上高230.0億円(前期比16.3%増)、営業利益75.0億円(同95.2%増)、経常利益67.0億円(同78.3%増)、純利益40.0億円(同229.7%増)という大幅な回復を予想しています。この予想が実現するかどうかが、当面の最大の注目点となります。
セグメント別の実績(2026年5月期、億円)
| セグメント | 売上高 | 前期比 | 営業利益・損失 | 前期比 |
|---|---|---|---|---|
| 住宅事業 | 1,359.0 | △7.0% | △10.7(損失) | 前期は+3.3億円 |
| 不動産事業 | 549.2 | +14.9% | 35.8 | +48.1% |
| 金融事業 | 9.7 | +5.3% | 2.5 | +64.8% |
| エネルギー事業 | 8.0 | △3.5% | 2.5 | △6.6% |
| その他事業 | 51.5 | +0.6% | 8.1 | △10.6% |
財務指標とキャッシュフロー
自己資本比率は2026年5月期末で34.3%(前期37.1%から低下)となりました。有利子負債残高は151.1億円(前期190.7億円)まで圧縮されていますが、営業活動によるキャッシュフローが9.3億円まで縮小(前期22.5億円)した結果、有利子負債を営業CFで返済しきるのに必要な年数を示す「債務償還年数」は16.3年(前期8.5年)まで悪化し、利払い負担の余裕度を示す「インタレスト・カバレッジ・レシオ」も2.6倍(前期10.7倍)まで低下しています。 財務体質の健全性という観点では、注視が必要な状況にあると言えます。
投資活動によるキャッシュフローは11.6億円のマイナスで、新規支店の開設等に10.0億円を投じています。財務活動によるキャッシュフローは、長期借入金の返済(115.8億円)や配当金の支払(56.5億円)などにより96.3億円の大幅なマイナスとなり、現金及び現金同等物の期末残高は前期末比98.2億円減少し211.8億円となりました。
3. 成長戦略・将来性
タマホームは、2027年5月期を初年度・2031年5月期を最終年度とする中期経営計画「タマステップ2031」を推進しています。基本方針は「V字回復から持続的成長へ」で、事業競争力の強化、人的資本への投資、資本効率を意識した経営を通じて企業価値の持続的向上を目指すとしています。数値目標は次のとおりです。
| 項目 | 2027年5月期予想 | 2031年5月期計画 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,300億円 | 3,100億円 |
| 営業利益 | 75億円 | 160億円 |
| 営業利益率 | 3.3% | 5.3% |
| 経常利益 | 67億円 | 155億円 |
| 親会社株主帰属純利益 | 40億円 | 100億円 |
| ROE | ― | 25% |
戦略の柱としては、注文住宅事業における商品ラインナップの再編・共通化、営業・施工体制の再構築による収益力回復を最優先とし、戸建分譲事業・リフォーム事業・不動産事業についても、それぞれの強みを活かした成長を進めることで事業ポートフォリオの多様化を図る方針です。加えて、DXの推進や人的資本への投資、ROEを重要指標とした資本効率重視の経営を掲げています。
2026年5月期の設備投資額は10.3億円で、大半(10.0億円)が住宅事業における営業拠点・展示用建物(モデルハウス)の充実に投じられました。業績が低迷する中でも営業基盤への投資は継続している点は、収益力回復に向けた前向きな取り組みと捉えられます。研究開発活動については、高品質・低価格の住宅供給を目的とした研究開発費として1.5億円を投じています。
事業環境については、人口減少に伴う新設住宅着工戸数の減少、建設業界の人手不足・高齢化、資材価格の高止まりなど、構造的な逆風が続くとみられています。会社もこれを認識し、「住宅取得に対する消費者マインドは慎重な状況が続く」との見通しを示しています。中期経営計画の初年度である2027年5月期の業績予想が実現するかどうかは、住宅事業の収益力が実際に回復するかにかかっており、同業他社との競争環境の比較も含めて、今後の四半期業績を注視する必要があります。
4. 株主還元
配当方針は「安定的かつ継続的な利益還元」を基本方針としつつ、業績及び財務状況等を総合的に勘案して配当を実施するとしています。
| 決算期 | 1株当たり配当金 | 配当性向(連結) |
|---|---|---|
| 2024年5月期 | 190.00円 | ― |
| 2025年5月期 | 195.00円 | 382.4% |
| 2026年5月期 | 125.00円 | 298.6% |
| 2027年5月期(予想) | 130.00円 | 94.2% |
2026年5月期は、前期の195円から125円へ大幅な減配となりました。それでも配当性向(連結)は298.6%と、当期純利益を大きく上回る配当を支払っている状態が続いています。 これは、業績悪化前の高水準の配当を、単年度の利益水準に見合わないペースで維持してきた結果であり、内部留保を取り崩す形での株主還元と言えます。2027年5月期は1株当たり130円への増配を予定していますが、会社予想の純利益(40億円、EPS137.99円)が実現すれば、配当性向は94.2%まで低下する見通しであり、業績回復のシナリオが配当の持続性にも直結する構図になっています。
自己株式の取得については、2026年5月期中の取得は単元未満株式の買取り50株・17.8万円のみと、積極的な取得は行われていません。
5. ガバナンス・リスク
タマホームは、取締役会に加えて監査役会を設置する監査役会設置会社(取締役会が経営の意思決定・監督を、監査役会が業務の適法性・適正性の監査を担う伝統的な機関設計)を採用しています。2026年8月26日現在、取締役会は社内取締役9名・社外取締役2名の11名で構成され、社外取締役比率は約18%です。監査役会は常勤監査役1名・社外監査役2名の3名で構成されています。2026年5月期の取締役会開催は14回で、出席率は多くの取締役で100%でしたが、社外取締役の1名は86%(12回/14回)、社外監査役の1名は93%(13回/14回)でした。
ガバナンス上の特徴として、創業家である玉木家の影響力が大きいことが挙げられます。 筆頭株主は創業家の資産管理会社である株式会社TAMAX(持株比率39.30%)で、これに代表取締役会長の玉木康裕氏、その配偶者、代表取締役社長の玉木伸弥氏、常勤監査役の玉木克弥氏の4名(各3.01%)を加えると、創業家関係者だけで発行済株式(自己株式除く)の5割超を保有する計算になります。オーナー経営としての意思決定の速さは強みですが、少数株主からのガバナンスに対する目線という観点では、社外役員の比率や独立性を踏まえた評価が必要です。
事業等のリスクとしては、有価証券報告書で(1)売上・利益が第4四半期(3〜5月の引渡しシーズン)に偏重する季節性リスク、(2)個人消費動向・住宅ローン金利動向による受注減少リスク、(3)建設業法等の許認可に関する規制リスク、(4)輸入木材・ナフサ由来製品を中心とした資材価格・人件費の高騰リスク、(5)大規模自然災害によるサプライチェーン寸断・引渡遅延リスク、(6)不動産事業における販売用不動産等の評価損リスク、(7)個人情報の情報セキュリティリスク、(8)技能労働者等の人材確保リスク、(9)住宅の契約不適合等に関する訴訟リスクが挙げられています。このうち、資材価格・人件費の高騰と個人消費の悪化は、直近2期の業績悪化に直結してきたリスクであり、今後も注視が必要です。 また前項で述べたとおり、債務償還年数の悪化など財務健全性指標にも留意が必要です。
6. 株主構成・株価情報
2026年5月31日現在の所有者別状況では、その他の法人が39.26%、個人その他が48.73%を占めています。大株主は次のとおりです。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| ㈱TAMAX | 39.30% |
| 日本マスタートラスト信託銀行㈱(信託口) | 6.47% |
| 玉木 康裕 | 3.01% |
| 玉木 和惠 | 3.01% |
| 玉木 伸弥 | 3.01% |
| 玉木 克弥 | 3.01% |
| タマホームグループ従業員持株会 | 1.09% |
| ㈱日本カストディ銀行(信託口) | 0.91% |
| 三菱UFJモルガン・スタンレー証券㈱ | 0.63% |
| ㈱みずほ銀行 | 0.39% |
上位10名の合計は61.20%です。筆頭株主の株式会社TAMAXと創業家メンバー4名を合わせると発行済株式の5割超を占め、典型的なオーナー企業の株主構成となっています。自己株式は467,642株(発行済株式総数の約1.6%)を保有しています。
発行済株式総数は29,455,800株、単元株式数は100株です。株式分割等の直近の実施はありません。
現在の株価情報(2026年9月10日時点、IFIS株予報のデータ)では、株価2,880円、PER(会社予想EPS138.0円ベース)約20.9倍、PBR(実績BPS1,024円ベース)約2.81倍となっています。会社予想の年間配当130円をもとに計算すると、配当利回りは約4.5%となります(時価総額は自己株式を除く発行済株式数ベースで概算約835億円)。過去5年の最高株価は4,645円(2024年5月期)、最低株価は2,055円(2022年5月期)と、業績の急激な変動を反映して値動きの振れが大きい銘柄です。 PER20倍台という評価は、直近の低迷した実績利益ではなく、2027年5月期の大幅増益予想を前提としたものである点に留意が必要です。ただし業界内での相対的な位置づけについては他データとの比較が必要です。株価情報は変動するため、最新の数値は証券会社のサイト等でご確認ください。
7. まとめ
タマホーム(1419)は、注文住宅事業を主力としながら不動産事業などへの多角化を進めてきた住宅会社ですが、2025年5月期以降、資材価格の高騰や住宅取得マインドの低下を背景に業績が急激に悪化し、2026年5月期には中核の住宅事業が営業損失に陥るという厳しい状況にあります。全社の利益は不動産事業の伸長によって支えられている構図であり、配当も前期比で大幅に減配されたものの、なお配当性向は300%近い高水準で、内部留保を取り崩す形の株主還元が続いています。会社は中期経営計画「タマステップ2031」で「V字回復」を掲げ、2027年5月期に大幅な増益を見込んでいますが、その実現には住宅事業の収益力そのものの立て直しが不可欠です。創業家による強いオーナーシップという特徴も踏まえつつ、今後の四半期業績や住宅事業の採算改善の進捗、財務健全性指標の動向に注目していく必要があります。