【1417】ミライト・ワン

2026/09/09

企業分析

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NTTグループ向けの通信設備工事を祖業とし、M&Aを重ねて総合エンジニアリンググループへと姿を変えてきたミライト・ワン(証券コード1417)について、2026年3月期有価証券報告書・決算補足資料、および2027年3月期第1四半期決算短信をもとに、ファンダメンタルズ(企業の実力を示す基礎的な情報)を初心者向けに解説します。

1. 企業概要

ミライト・ワンは、2010年10月に大明株式会社・株式会社コミューチュア・株式会社東電通の3社が株式移転(共同で新しい親会社を設立し、その完全子会社になる手法)によって設立した共同持株会社を起点としています。その後、株式会社TTK(2018年)、株式会社ソルコム・四国通建株式会社(いずれも2019年)を株式交換によりグループに迎え入れ、2022年7月には中核子会社の株式会社ミライトおよび株式会社ミライト・テクノロジーズを吸収合併し、純粋持株会社から事業も自ら手掛ける「事業持株会社」へ移行、社名もミライト・ワンに変更しました。その後も西武建設(2022年)、国際航業(2023年)、光陽ホールディングス(2024年)、Y2S(2025年)と買収を重ね、現在はミライト・ワン本体に加えLantrovision(S)Ltd、TTK、ソルコム、四国通建、西武建設、ミライト・ワン・システムズ、国際航業を含む連結子会社83社からなるグループを形成しています。

事業内容は、環境・社会イノベーション事業、ICTソリューション事業、NTT事業、マルチキャリア事業の4つに大別され、これらは大きく「通信基盤ドメイン」(NTT事業+マルチキャリア事業)と「企業/環境社会基盤ドメイン」(環境・社会イノベーション事業+ICTソリューション事業)の2つに整理されています。祖業である通信キャリア向けの設備工事(通信基盤ドメイン)は足元堅調なものの、通信キャリアの投資が新設工事から品質向上・新サービスへシフトすることで中長期的には縮小が見込まれるとしており、会社はデータセンター関連工事、再生可能エネルギー、ソフトウェア開発、グローバル事業などの成長分野を「みらいドメイン」と位置付け、経営資源を積極的にシフトしています。

主要顧客への依存度を見ると、2026年3月期の売上高に占める割合はNTT東日本が15.2%(915億円)、NTT西日本が10.2%(616億円)で、この2社だけで売上高の約25%を占めています。祖業がNTTグループ向け通信設備工事であることの裏返しであり、後述するリスク要因でも特定取引先への依存が最初に挙げられています。

2. 業績・財務情報

過去5期の推移

決算期売上高経常利益親会社株主帰属純利益EPS自己資本比率ROE
2022年3月期4,703.9億円341.5億円251.6億円250.84円55.6%10.7%
2023年3月期4,839.9億円223.8億円147.8億円151.20円56.5%6.0%
2024年3月期5,183.8億円186.9億円125.4億円133.34円48.5%5.0%
2025年3月期5,786.0億円274.7億円171.8億円189.40円48.6%6.7%
2026年3月期6,023.8億円365.2億円232.8億円261.74円48.7%8.6%

2026年3月期は、売上高6,023億7千7百万円(前期比4.1%増)、営業利益342億6千7百万円(同22.4%増)、経常利益365億1千7百万円(同32.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益232億8千2百万円(同35.5%増)と大幅な増収増益になりました。 売上高・経常利益・純利益はいずれも直近5期の中で最高水準です。営業利益率は5.7%、EBITDA(営業利益に減価償却費とのれん償却額を加えた指標で、設備投資負担を除いた収益力を示す)率は8.0%、ROE(自己資本利益率)は8.6%となりました。

事業を展開する4分野の実績は以下の通りです。企業/環境社会基盤ドメイン(環境・社会イノベーション事業+ICTソリューション事業)は売上高3,672億円、通信基盤ドメイン(NTT事業+マルチキャリア事業)は売上高2,352億円で、成長分野「みらいドメイン」の売上高構成比は41%まで拡大しています。

事業区分受注高売上高売上総利益率
環境・社会イノベーション事業2,209億円1,933億円16.3%
ICTソリューション事業1,850億円1,739億円13.6%
通信基盤ドメイン(NTT事業+マルチキャリア事業)2,528億円2,352億円16.1%
合計6,587億円6,024億円15.4%

※2026年3月期通期実績。売上総利益率は決算補足資料の非監査ベースの区分集計によるもので、有価証券報告書上の報告セグメント(グループ会社単位)とは区分が異なります。

グループ会社別に見ると、中核であるミライト・ワン単体(分割後の事業会社)が受注高3,412億円(同10.3%増)・売上高3,077億円(同0.9%増)・営業利益181億円(同18.9%増)と最大の構成要素を占めるほか、シンガポールを拠点とするラントロビジョン(アジア圏のデータセンター需要を取り込み営業利益は前期比91.0%増)、TTK・四国通建(いずれもNTT事業やNEXT GIGAスクール関連の受注拡大により増収増益)などグループ各社が総じて好調でした。一方、西武建設は前期の大型案件の反動で受注高・売上高がともに減少したものの、工事採算の改善で営業利益は増加しています。

財務状態とキャッシュフロー

2026年3月期末の総資産は5,733億9千3百万円(前期末比+356億円)、純資産は2,884億4千7百万円(同+185億円)で、自己資本比率は48.7%となりました。建設・エンジニアリング業界としては標準的な水準です。

キャッシュフローは、営業活動によるキャッシュ・フローが240億8千1百万円のプラス(前期は180億4千9百万円のプラス)と増加した一方、投資活動によるキャッシュ・フローは有形固定資産取得(86億円)や無形固定資産取得(25億円)を中心に112億2百万円のマイナス、財務活動によるキャッシュ・フローは自己株式取得(30億円)や配当金支払(72億円)等により67億3千1百万円のマイナスとなりました。設備投資の総額は135億5千1百万円で、本社移転関連費用や施工管理システムの開発費用などが主なものです。装置産業ほど重い設備投資負担を必要としないビジネスモデルであることがうかがえます。

直近四半期(2027年3月期第1四半期)の動向

2026年4〜6月期(2027年3月期第1四半期)は、売上高1,300億3千3百万円(前年同期比7.1%増)と過去最高を更新し、売上総利益率も14.2%(前年同期比+1.3ポイント)に改善しました。 営業利益は28億4百万円(前年同期比172.9%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は18億5千7百万円(前年同期は13億1千1百万円の純損失)と大幅増益に転じています。ICTソリューション事業とNTT事業の伸びが牽引役でした。繰越工事高(未消化の受注残)も3,928億円と前年同期比13.1%増加しており、先行きの業績を下支えする材料です。

会社側は2027年3月期通期の業績予想として、売上高6,600億円(前期比9.6%増)、営業利益400億円(同16.7%増)、経常利益400億円(同9.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益255億円(同9.5%増)、1株当たり当期純利益290円79銭を見込んでおり、第1四半期時点での通期進捗率は売上高19.7%、営業利益7.0%と、季節性を踏まえても順調な立ち上がりといえます。

3. 成長戦略・将来性

会社は2030年に向けた事業ビジョン『MIRAIT ONE Group Vision 2030』のもと、2022〜2026年度(2027年3月期まで)を対象とする第5次中期経営計画を推進しています。成長戦略の柱は「5つの事業変革(5 Changes)」として整理されており、(1)人間中心経営(人財育成・健康経営・働き方改革)、(2)事業成長の加速(みらいドメインへのリソース集中、データセンター関連事業・グローバル事業の強化)、(3)利益性トップクラス(グループ間の集約・効率化、生成AI活用による業務変革)、(4)データインサイトマネジメント(データ活用によるDX推進)、(5)ESG経営基盤強化(温室効果ガス削減、コーポレートガバナンス強化)から構成されています。

中期経営計画の最終年度(2026年度=2027年3月期)に向けたKPI(経営目標の達成度を測る客観的指標)として、売上高7,200億円以上、みらいドメイン比率45%以上、営業利益率6.5%以上、EBITDA率8.5%以上、ROE10%以上、EPS年成長率10%以上を掲げています。直近の会社予想(前述の2027年3月期通期予想)と照らすと、みらいドメイン比率(売上高ベースで通期計画45%)やEPS成長率(同予想ベースで前期比11.1%増)は目標水準に届く見通しである一方、売上高は6,600億円と目標の7,200億円をやや下回り、営業利益率も予想ベースで6.1%程度と6.5%目標にはやや届かない水準にとどまっています。ROEについても2026年3月期実績が8.6%と、10%目標にはまだ距離があります。中期経営計画は総じて前進しているものの、一部KPIは未達で着地する可能性がある点は留意が必要です。

成長分野「みらいドメイン」の具体的な取り組みとしては、生成AIの普及やクラウドサービス拡大を背景とするデータセンター需要の取り込み(営業から保守運用までワンストップで提供する体制の構築)、街づくり・里づくりや企業のDX・GX支援、脱炭素に貢献するグリーンエネルギー事業の拡大、ソフトウェア事業の強化、国内外のデータセンター関連・インフラシェア事業を含むグローバル事業の拡大が挙げられています。2025年10月には物販・O&M(オペレーション&マネジメント)事業に強みを持つ株式会社Y2Sを買収するなど、M&Aを通じた事業領域拡大も継続しています。あわせて、西武建設・国際航業とのシナジー最大化を図る「三位一体の事業シナジー」や、子会社ミライト・ワン・システムズの吸収合併など、グループ内の効率化にも取り組んでいます。

4. 株主還元

会社は2023年11月に公表した方針のもと、総還元性向(配当と自己株式取得の合計が当期純利益に占める割合)50%〜70%をターゲットレンジに設定し、安定的な配当成長と機動的な自己株式取得を組み合わせた株主還元を行っています。

2026年3月期の年間配当は1株当たり85円(中間40円・期末45円)で、配当性向(単体ベース)は61.0%でした。2027年3月期は1株当たり年間配当95円(中間45円・期末50円)へ10円の増配を予定しています。

自己株式取得については、2026年3月期中に113万株(約30億円)を取得したのに続き、2026年5月には新たに上限200万株・取得価額上限60億円の自己株式取得を決議(取得期間2026年5月13日〜2027年3月31日)しており、株主還元に対する積極姿勢がうかがえます。なお、利用目的のない自己株式については積極的な消却も実施する方針です。

5. ガバナンス・リスク

同社は監査等委員会設置会社(取締役会に議決権を持つ監査等委員を置き、経営の監督機能を強化する機関設計)を採用しています。2026年6月時点の取締役は13名で、うち5名が独立社外取締役(社外取締役比率は約38%)、役員に占める女性比率は23%(3名)です。取締役会は2025年度に20回開催され、出席率はすべての取締役で100%でした。取締役の指名・報酬の客観性を高めるため、独立社外取締役3名を含む5名で構成する「指名・報酬委員会」を設置しており、委員の過半数が独立社外取締役で、委員長も独立社外取締役の互選により選出されています。

政策保有株式(取引関係の維持・強化などを目的に保有する株式)については、2026年3月末時点で上場株式25銘柄(貸借対照表計上額69億6千9百万円)、非上場株式30銘柄(同8億9千2百万円)を保有しており、当事業年度中に5銘柄を売却しています。会社は年1回、取締役会にて個別銘柄ごとに保有の意義を定量的・定性的に検証し、意義が乏しいと判断した株式は縮減する方針を示しています。上位保有銘柄には日本電設工業(工事受注量確保が目的)や住友電気工業(調達取引先)、NTT・KDDIなど主要顧客・取引先が並んでおり、事業上の関係強化を主眼とした保有であることがわかります。

事業等のリスクとして有価証券報告書は12項目を挙げていますが、初心者が押さえておきたいポイントとしては、(1)NTTグループなど特定取引先への依存度が高く、通信キャリアの設備投資動向に業績が左右されやすい点、(2)資材価格の高騰や為替変動、労務単価上昇により工事コストが上昇するリスク、(3)自然災害・感染症拡大等により工事が中断・遅延するリスク、(4)アジア・オセアニアを中心とした海外事業における政治・経済情勢や為替変動のリスク、(5)M&Aで期待したシナジー効果が実現しない可能性、が挙げられます。会社側はこれらに対し、みらいドメインへの事業シフトによる特定顧客依存の低減、リスクチェック体制の整備、BCP(事業継続計画)の策定などで対応を進めているとしています。

6. 株主構成・株価情報

2026年3月末時点の所有者別状況を見ると、金融機関が32.4%、個人その他が27.6%、その他の法人が27.5%、外国法人等が10.6%を占めています。大株主は以下の通りです。

株主名持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)14.00%
株式会社日本カストディ銀行(信託口)6.42%
住友電気工業株式会社4.12%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 5050012.66%
ミライト・ワン従業員持株会2.48%
住友電設株式会社2.23%
GOVERNMENT OF NORWAY1.69%
株式会社みずほ銀行1.46%
JP MORGAN CHASE BANK 3857811.32%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 5052231.31%

上位10名の合計は37.71%です。信託銀行や海外機関投資家が上位を占める一方、住友電気工業(4.12%)・住友電設(2.23%)という事業上の取引先が上位株主に名を連ねているのが特徴で、資本面でも取引関係の強化が図られていることがうかがえます。自己株式(2,215,874株、発行済株式総数の2.43%)は上記比率の計算上控除されています。発行済株式総数は91,325,329株、単元株式数は100株で、東京証券取引所プライム市場に上場しています。

現在の株価情報(2026年9月8日時点、Yahoo!ファイナンスのデータ)では、株価3,545円、時価総額約3,237億円、PER(会社予想EPS288.41円ベース)約12.3倍、PBR(実績BPS3,135.77円ベース)約1.13倍、配当利回り(会社予想)2.68%となっています。PBRが1倍をわずかに上回る水準にとどまっている点は、資本効率(ROE8.6%は中期経営計画の目標10%に未達)に対する市場評価が背景にある可能性がありますが、業界内での相対的な位置づけについては他データとの比較が必要です。株価情報は変動するため、最新の数値は証券会社のサイト等でご確認ください。

7. まとめ

ミライト・ワン(1417)は、NTTグループ向け通信設備工事を祖業としながら、M&Aとグループ再編を重ねて総合エンジニアリンググループへと発展し、2026年3月期は売上高・利益とも直近5期で最高水準を記録しました。データセンター関連やグリーンエネルギーなど成長分野「みらいドメイン」の売上構成比は41%まで拡大し、2027年3月期第1四半期も増収増益で滑り出しています。一方で、売上高の約25%をNTT東西2社に依存する事業構造や、中期経営計画で掲げたROE10%・営業利益率6.5%などの目標に対して足元の実績・予想がやや届いていない点は、今後の進捗を注視すべきポイントです。総還元性向50〜70%を掲げる積極的な株主還元方針とあわせて、みらいドメインへの構造転換がどこまで実を結ぶか、今後の決算での確認が重要になります。


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