【137A】Cocolive

2026/09/04

企業分析

t f B! P L

不動産業界向けのマーケティング支援クラウドサービスを手がけるCocolive株式会社(証券コード:137A、東証グロース市場)について、2026年5月期の決算短信・有価証券報告書(いずれも一次データ)をもとに、投資初心者の方向けにファンダメンタルズ分析を行いました。数値は原則として企業が開示した決算短信・有価証券報告書に基づいており、外部データを使用した箇所はその都度出典を明記しています。


1. 企業概要

事業内容・セグメント構成

Cocolive株式会社は、不動産会社向けのマーケティング・オートメーションツール「KASIKA(カシカ)」を自社開発・提供するBtoBクラウドサービス事業を単一セグメントで営む企業です(決算短信・有価証券報告書ともにセグメント別の記載はありません)。

KASIKAは、不動産ポータルサイト経由で問い合わせた見込み客への自動返信メール送信や、営業担当者向けの顧客管理・追客(見込み客への継続的なアプローチ)支援機能を中心としたサービスです。対象顧客は「工務店・ハウスメーカー」「不動産売買仲介業者」「分譲マンション事業者」の3領域で、大和ハウス工業や三菱地所レジデンスなど大手企業への導入実績があることが同社公式サイトで紹介されています(出典:Cocolive公式サイト。有価証券報告書には個社名の記載はありません)。

沿革

2017年1月、東京都港区赤坂において資本金100万円で設立され、同年5月にKASIKAの提供を開始しました。以降、SMS送信オプション(2021年)、大手住宅設備メーカーの株式会社LIXILとのパートナーシップ契約(2022年)などを経て、2024年2月に東証グロース市場へ上場しています。上場後も株式会社ダイテック、株式会社Lib Work、株式会社リノベストといった住宅・不動産関連企業との連携を拡大しており、直近ではAI文章生成機能(2025年9月)やAPI連携ツール「Yoom」との連携(2026年1月)など、生成AIを活用した機能拡充を続けています。

経営理念

「テクノロジーとマーケティングの力で、住宅・不動産業界で働く”人”の力が最もうまく活かされる仕組みを創り上げたい」をミッションに掲げています(有価証券報告書より)。公式サイトでは「データとマーケティングの力で不動産業界に新しい価値を」というタグラインも掲げられています。

ビジネスモデル・主要製品・収益の柱

収益の柱はKASIKAの月額制サブスクリプションの一本足で、料金体系は「店舗数課金」(1店舗あたり月額50,000円)と「ユーザー数課金」(10名まで月額50,000円、11名目以降は1名につき5,000円)の2方式です。ここにSMS送信オプションやAI査定オプション(各月額10,000円)が加わります。分譲マンション事業者向けには、2027年1月からプロジェクト規模・地域特性に応じた新価格体系の導入が予定されています。

解約に縛りとなる最低利用期間は設けておらず、2026年5月期の単月解約率(年間平均)は1.29%でした。これは「利用のハードルを下げつつ、顧客満足度を維持することを重視している」(有価証券報告書)という同社の方針を反映したものです。2026年5月末時点の有料契約社数は1,175社、MRR(Monthly Recurring Revenue=月次経常収益、毎月安定して得られる売上の指標)は114百万円となっています。

販売はKASIKAの直接販売に加え、LIXILやイー・ステート・オンライン、プライムクロスなど不動産関連企業との代理店契約経由でも行われています。


2. 業績・財務情報

以下は有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」に記載された過去5期分の実績です(同社は連結財務諸表を作成していないため、単体決算のみとなります)。

決算期 第6期(2022/5期) 第7期(2023/5期) 第8期(2024/5期) 第9期(2025/5期) 第10期(2026/5期)
売上高(千円) 557,140 797,145 1,027,747 1,301,771 1,447,436
経常利益(千円) 70,503 140,710 203,233 281,352 202,151
当期純利益(千円) 48,469 97,175 149,975 209,170 149,129
1株当たり当期純利益(円) 17.88 35.59 53.42 71.39 49.33
自己資本比率(%) 58.67 71.72 83.66 83.85 86.31
自己資本利益率(ROE)(%) 43.40 36.37 22.63 26.99 15.46

売上高は5期連続で増収が続き、直近の第10期(2026年5月期)も14億47百万円(前期比11.2%増)と成長を継続しています。一方で、経常利益は第9期の2億81百万円から第10期は2億2百万円(前期比28.2%減)へと、増収減益の決算になりました。当期純利益も同様に前期比28.7%減の1億49百万円です。

この減益の要因は、決算短信の説明によると主に人件費の増加です。売上原価に含まれるカスタマーサクセス部門(顧客の利用定着を支援する部門)の人員を体制強化のために積極採用したことで売上原価が前期比21.3%増加し、また採用費用・業務委託費の増加により販管費も前期比23.5%増加しました。製品の競争力低下や解約の急増によるものではなく、将来の成長に向けた先行投資が主因と読み取れます。

自己資本比率は86.31%と極めて高く、財務健全性の目安(一般に自己資本比率が高いほど負債への依存度が低く、財務的な安全性が高いとされます)としては手堅い水準です。有利子負債もなく、いわゆる無借金経営を続けています。ROE(自己資本利益率。株主が出資したお金を使ってどれだけ効率的に利益を生み出しているかを示す指標)は、増益基調だった第9期の26.99%から第10期は15.46%へ低下しており、利益率の希薄化がROEにも表れています。

キャッシュ・フローについては、営業活動によるキャッシュ・フローは第10期も1億20百万円のプラスを確保していますが、前期(2億21百万円)からは減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは本社移転に伴う敷金(差入保証金)の支払等で△28百万円、財務活動によるキャッシュ・フローは自己株式の取得(後述)を主因に△71百万円となっています。現金及び現金同等物の期末残高は約9億円で、手元流動性に懸念はありません。


3. 成長戦略・将来性

市場環境

同社は、自社が属する市場を「SaaS型マーケティング・オートメーションツール市場」と位置づけ、株式会社富士キメラ総研の調査(『ソフトウェアビジネス新市場 2025年版』)を引用し、2024年度から年平均9.0%で成長し、2029年度には市場規模が4,841億円になるとの見通しを有価証券報告書に記載しています(この市場規模予測は外部調査会社によるものであり、同社独自の見通しではありません)。また、総務省の経済センサスを引用し、国内の不動産取引業の事業者数を66,942社、就業者数を352,108人としており、顧客獲得の余地がまだ大きいとの認識を示しています。

成長ドライバー

  • 生成AIの活用:AI文章生成機能(2025年9月)やAI査定オプションなど、生成AIをプロダクトに組み込み「顧客の生産性向上(AIトランスフォーメーション)」を進める方針です。
  • 新価格体系の導入:分譲マンション事業者向けに2027年1月から、プロジェクト規模・地域特性に応じた価格体系を導入予定です。
  • 提携・代理店網の拡大:LIXIL、ダイテック、Lib Work、リノベストなど住宅・不動産関連企業との連携を継続的に拡大しています。
  • 新領域への展開:高齢化社会を見据えた「サービス付き高齢者住宅の提供会社」や、住宅購入後の「リフォーム」領域への展開も今後の重点分野として挙げられています。

同社はソフトウェア開発が主体の事業であるため、大規模な設備投資やM&Aの計画は有価証券報告書に記載がなく、投資の中心は人材(採用・育成)とAI関連の開発投資です。

2027年5月期の業績予想

会社が公表している次期(2027年5月期)の業績予想は、売上高16億2百万円(前期比10.7%増)、営業利益1億68百万円(前期比15.1%減)、経常利益1億73百万円(前期比14.3%減)、当期純利益1億26百万円(前期比15.7%減)、EPS41.25円というものです。増収は続く一方、利益は2期連続の減益を会社自身が見込んでいることになります。

決算短信では2027年5月期について「引き続き拡大する需要を確実に取り込み、将来の圧倒的な利益へ変換し、飛躍するための高収益体質への『助走』期間」と表現しており、当面は収益性よりも顧客基盤・体制の拡大を優先する方針であることが明確に示されています。この「増収は続くが、当面利益は伸びない」という会社自身の見通しは、投資判断をする上で重要なポイントです。


4. 株主還元

配当方針

Cocolive株式会社は、創業以来一度も配当を実施しておらず、今後の配当実施の可能性・実施時期についても「未定」としています(配当性向・配当利回りは、配当を行っていないため算出されていません)。有価証券報告書では、その理由として「事業がまだ成長過程にあり、内部留保の充実を図り、業容拡大と効率化のための投資に充当していくことが株主に対する最大の利益還元につながる」との考え方が示されています。

こうした無配方針は、成長初期段階のグロース市場銘柄では珍しくありません。利益を配当として株主に還元するのではなく、事業拡大への再投資に回すことで将来の企業価値向上を目指すという考え方であり、投資家としては「配当を受け取る投資」ではなく「値上がり益(キャピタルゲイン)を期待する投資」としての性格が強い銘柄と言えます。

自己株式取得

一方で、同社は2026年4月10日開催の取締役会において、発行済株式数の約5%にあたる150,000株(取得価額総額上限1億円)を上限とする自己株式取得を決議しています(取得期間:2026年4月13日~2027年1月31日)。2026年5月期末までに33,100株(取得価額24,198,900円)を取得済みで、有価証券報告書提出日(2026年8月20日)時点での累計取得は141,700株に達しています。なお、この自己株式取得プログラムは2026年7月24日をもって終了しています。

自己株式取得は、配当と並ぶ株主還元の手段の一つで、市場に流通する株式数を減らすことで1株当たり利益(EPS)や1株当たり純資産(BPS)を押し上げる効果があります。配当を行わない代わりに、自己株買いという形で一定の株主還元姿勢を示していると見ることができます。なお、有価証券報告書には株主優待制度に関する記載はありません。


5. ガバナンス・リスク

取締役会・監査役会の構成

2026年8月20日(有価証券報告書提出日)現在、取締役会は代表取締役の山本考伸氏を含む取締役4名(うち社外取締役1名:石川智哉氏、社外取締役比率25%)で構成されています。監査役は3名全員が社外監査役(鬼頭麻由佳氏、三島圭史氏、野原俊介氏)です。役員7名のうち女性は1名(14.3%)となっています。

取締役会は2026年5月期に21回開催されており、月次の定例開催に加え臨時開催も活発に行われている様子がうかがえます。全取締役・監査役の出席率はいずれも100%でした。任意の諮問機関として報酬委員会(社外役員が過半数を占める構成)も設置されています。

会計監査

会計監査人は監査法人FRIQで、2026年5月期の財務諸表について無限定適正意見(会計監査人が「財務諸表は適正である」と認める、最も標準的な監査意見)が付されています。監査上の主要な検討事項(KAM)としては「売上高の実在性」が挙げられていますが、これは月額課金型サービスに特有の取引件数の多さ・一部手作業処理を踏まえた通常の監査上の重点項目であり、会計上の懸念事項というわけではありません。

政策保有株式

有価証券報告書「株式の保有状況」には「該当事項はありません」と明記されており、いわゆる政策保有株式(取引関係の維持等を目的に保有する他社株式)は保有していません。

事業等のリスク(有価証券報告書より、発生可能性・影響度が高いものを中心に)

有価証券報告書は11項目のリスク要因を開示しており、特に投資初心者が押さえておきたい点は以下の通りです。

  • 潜在株式の顕在化リスク(発生可能性:高、影響度:中):役職員へのインセンティブとして新株予約権(ストックオプション)を付与しており、提出日時点で発行済株式総数に対する潜在株式数の割合は12.63%に達しています。これらが将来行使されると、1株当たりの価値が薄まる(希薄化する)可能性があります。11項目の中で唯一「発生可能性:高」と評価されている項目です。
  • 特定の他社事業サービスへの依存(発生可能性:低、影響度:大):同社のサービス基盤はさくらインターネット株式会社の「さくらのクラウド」に依存しており、障害発生時にはサービス提供に影響が出る可能性があります。
  • 特定の事業サービスへの依存について(発生可能性:中、影響度:大):売上高はKASIKA一本に依存しており、他に収益源となる事業がありません。単一製品への依存度の高さは、成長期のSaaS企業に共通する構造的なリスクです。
  • 情報漏えいリスク(発生可能性:中、影響度:大、発生時期:短期):顧客の個人情報を多数預かる事業特性上、情報漏えいが発生した場合は信用低下や損害賠償請求のリスクがあるとしています。

6. 株主構成・株価情報

大株主の状況(2026年5月31日現在、有価証券報告書より)

氏名・名称 所有株式数(千株) 持株比率(%)
山本考伸(代表取締役) 1,302 43.22
富田祐司(取締役) 250 8.29
株式会社エアトリ 223 7.42
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 89 2.96
株式会社SBI証券 79 2.65
楽天証券株式会社共有口 44 1.47
BBH LUX(海外機関投資家名義) 35 1.19
山田善久 29 0.97
株式会社EPARK 24 0.82
XTech1号投資事業有限責任組合 21 0.69
上位10名合計 2,096 69.73

大株主の顔ぶれからは、創業者である代表取締役の山本考伸氏が発行済株式の約43%を保有する、いわゆるオーナー経営企業であることが読み取れます。取締役の富田祐司氏(共同創業メンバー)を合わせると経営陣で発行済株式の過半(約51.5%)を占めており、経営の意思決定に関する安定感がある一方、少数株主の意向が経営に反映されにくい面もある点は留意が必要です。株式会社エアトリは上場前からの株主(第三者割当増資の引受先)で、事業提携の一環と見られます。

所有者別の株式数構成(2026年5月末時点)では、株主数ベースでは個人株主が全体の96.4%(1,790名/1,857名)を占める一方、所有株式数(単元)ベースでは個人その他が78.80%、その他の法人が8.97%、金融商品取引業者(証券会社名義など)が6.49%、金融機関が3.19%となっています。

株式分割・単元株

上場前の2023年10月31日付で、普通株式1株につき20株の株式分割を実施しています。上場後(2024年2月以降)の株式分割の実施記録はありません。単元株式数は100株です。

株価情報

2026年5月期(第10期)中の株価レンジは最高1,566円~最低606円でした。上場翌期にあたる2024年5月期の最高値3,295円と比べると、株価は大きく下落した水準で推移してきたことになります。株主総利回り(配当・値上がり益を合わせた株主のリターンを示す指標。上場時を100として指数化)は、第9期(2025年5月期)の86.7%から第10期(2026年5月期)は39.4%まで低下しており、同時期の比較指数である東証グロース市場250指数(132.1%)を大きく下回っています。上場来、株価は市場平均に対して軟調に推移してきた銘柄と言えます。

2026年9月2日時点の株価は687円(時価総額約21億円)で、株式情報サイトの数値によれば予想PER(株価収益率、株価が1株当たり利益の何倍まで買われているかを示す指標)は約16.0倍(会社予想EPS41.25円ベース)、実績PBR(株価純資産倍率、株価が1株当たり純資産の何倍まで買われているかを示す指標)は約1.92倍(有価証券報告書記載の2026年5月期末BPS345.75円ベースで計算すると687÷345.75=約1.99倍で、サイトの数値とはおおむね近い水準)となっています(出典:株探、2026年9月2日時点の市場データ。有価証券報告書に記載の実績PER(2026年5月期末株価ベース)は12.28倍であり、これは期末時点の株価水準〈606円台〉を用いたもので、現在の株価水準とは基準時点が異なります)。

PBRが1倍を上回っているのは、自己資本の額面以上に将来の成長期待が株価に織り込まれていることを意味しますが、前述の通り会社自身が次期(2027年5月期)も減益を見込んでいる点を踏まえると、目先の利益成長率だけでなく、KASIKAの顧客基盤拡大や解約率の低さといった「非財務的な成長の芽」も併せて評価する必要がある銘柄と言えそうです。


7. まとめ

Cocolive株式会社は、不動産業界特化型のマーケティング支援クラウドサービス「KASIKA」を武器に、上場から丸2年で売上高を1,000社超の顧客基盤とともに着実に伸ばしてきた企業です。2026年5月期は増収ながら人件費先行投資により減益となり、会社自身も2027年5月期を「高収益体質への助走期間」と位置づけて、もう一段の減益を見込んでいます。無配・単一事業依存・12.63%の潜在株式(ストックオプション)による希薄化リスクといった点は投資判断上おさえておくべき材料ですが、無借金・自己資本比率86%超という財務基盤の堅さと、低い解約率(1.29%)に支えられたストック型ビジネスの安定性は同社の強みです。株価は上場来低迷が続いており、成長投資の成果が今後の増収・増益にどうつながっていくかを、決算の推移とともに見極めていく局面にあると言えるでしょう。


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