【1401】エムビーエス

2026/09/06

企業分析

t f B! P L

老朽化した建造物の外壁・内装リフォームを独自工法「ホームメイキャップ工法」で手がける株式会社エムビーエス(証券コード:1401、東証グロース市場/福岡証券取引所Q-Board)について、2026年5月期の決算短信・有価証券報告書(いずれも一次データ)をもとに、投資初心者の方向けにファンダメンタルズ分析を行いました。数値は原則として企業が開示した決算短信・有価証券報告書に基づいており、外部データを使用した箇所はその都度出典を明記しています。


1. 企業概要

事業内容・セグメント構成

エムビーエスは、老朽化した諸建造物(一般住宅、集合住宅、商業ビル、歴史的建造物、道路及び橋梁等)の維持・保全を目的に、自社開発の施工技術による外壁・内装のリフォーム工事やコンクリートの補修・改修工事を手がける会社です。事業セグメントは次の3区分です(決算短信・有価証券報告書のセグメント情報より)。

  • ホームメイキャップ事業:独自工法「ホームメイキャップ工法」による外壁・内装の補修改修(2026年5月期売上高4,803百万円、セグメント利益983百万円、全社売上の約95%を占める中核事業)
  • 建築工事業:一般的な工法による新築・改修工事(同188百万円、セグメント利益2,609百万円)
  • その他:不動産事業、FC加盟店向けコーティング材販売等(同38百万円)

ホームメイキャップ工法は、英国Sika社製の特殊機能性塗料を日本の気候・自社工法向けにアレンジしたもので、①クリアコーティング施工(タイルや窯業サイディングの白化・チョーキング補修)、②カラーコーティング施工(外壁再塗装、軽度のひび割れ補修)、③スケルトン防災コーティング施工(コンクリートのはく落防止・耐震補強。橋脚・橋桁・トンネル等の土木構造物にも対応)、④応用/特殊施工(止水・防水等の大規模補修)の4技術で構成されています。足場から左官、防水、塗装、シーリングまで自社一貫施工というワンストップ体制を業界内での差別化ポイントとし、施工後10年間の品質保証を付けています。

沿革

1993年に山本貴士氏(現代表取締役社長)が個人で始めた足場業が出発点です。1997年に有限会社化、1998年に外壁リフォーム業へ転換、2001年に株式会社化。2005年に福岡証券取引所Q-Board、2015年に東証マザーズへ上場し、2022年の東証市場区分見直しでグロース市場へ移行しました。その後も埼玉・岡山・滋賀・高松・徳島・岐阜・大分・金沢と全国に支店網を拡大し続けており、2025年10月には後述するドーナッツロボティクス株式会社との資本業務提携を締結しています。

経営理念・ビジネスモデル

有価証券報告書のサステナビリティに関する記載では、「技術力の強化」「環境も守る技術」「地域経済の活性化」の3本柱を掲げ、国連SDGsの複数目標と紐づけて経営方針を整理しています。地域経済の活性化に関しては、2026年2月に本社所在地である宇部市と包括連携協定を締結するなど、地域密着の姿勢も示しています。

受注形態は、当社が元請となる直営方式(売上高は財務諸表上「完成工事高」)と、認定FC加盟店が窓口となる提携方式(同「加盟店関連売上高」)の2本立てです。工法の核となる特殊機能性塗料は仕入先であるシーカ・ジャパン株式会社との契約に基づくもので、2026年5月期の仕入総額に占める同社からの仕入割合は約59%に達しており、事業モデル上重要な取引関係となっています(この依存度の高さはリスク要因としても後述します)。


2. 業績・財務情報

有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」に記載された過去5期分の実績は次の通りです(同社は連結財務諸表を作成していないため、単体決算のみとなります)。

決算期 売上高(百万円) 経常利益(百万円) 当期純利益(百万円) 1株当たり当期純利益(円) 自己資本比率 ROE
2022年5月期4,03047632642.3977.7%11.4%
2023年5月期4,00446832342.6278.0%10.4%
2024年5月期4,35752840454.0578.8%12.1%
2025年5月期4,71367247264.9675.8%13.2%
2026年5月期5,03094656781.0775.9%15.0%

売上高は5期中4期で増収と、緩やかな成長を続けています。直近の2026年5月期は売上高5,029百万円(前期比6.7%増)、営業利益721百万円(同15.3%増)、経常利益945百万円(同40.6%増)、当期純利益566百万円(同20.0%増)という増収増益決算でした。

ただし経常利益の伸び率40.6%増は本業以外の要因が大きい点には注意が必要です。内訳は、保険積立金の解約益127百万円、外国社債に関する有価証券償還益54百万円、同利息21百万円などの営業外収益によるもので、いわば一過性の色彩が強い増益です。一方で当期純利益に関しては、保有する投資有価証券の評価損146百万円を特別損失として計上しており、資産運用面ではプラス・マイナス双方の要因が同時に発生した決算といえます。

営業利益率(売上高営業利益率)は14.4%(決算短信記載)と前期の13.3%から改善しており、原価低減・販管費削減の効果が本業の収益性向上にも表れています。自己資本比率は過去5期一貫して75〜79%という極めて高い水準を維持しており、財務健全性の目安(自己資本比率が高いほど負債への依存度が低く、財務的な安全性が高いとされます)としては建設業の中でもかなり手堅い部類です。ROE(自己資本利益率。株主が出資したお金をどれだけ効率的に利益に変えているかを示す指標)も右肩上がりで15.0%まで改善しました。

受注の先行指標となる受注残高は2,161百万円(前年同期比+140.8%)とほぼ倍増しており、来期以降の増収基調を示唆する材料です。

キャッシュ・フローについては、営業活動によるキャッシュ・フローは723百万円のプラスを確保(前期567百万円から増加)。投資活動によるキャッシュ・フローは保険積立金の解約収入等により228百万円のプラス、財務活動によるキャッシュ・フローは自己株式取得等により△364百万円となりました。現金及び現金同等物の期末残高は2,417百万円まで積み上がっており、資金繰りに不安を感じさせる要素は見当たりません。


3. 成長戦略・将来性

経営環境の認識

有価証券報告書は、建設業界について「政府及び民間による建設投資は底堅く推移したものの、慢性的な技術者・技能労働者不足や時間外労働の上限規制への対応に加え、資材価格や労務費、物流費等の建設コストの高止まりが続いており、事業環境は依然として厳しい状況」と認識を示しています。技術者・技能労働者不足への対応が、以下の成長戦略の背景にある共通課題です。

成長ドライバー

  • ヒューマノイドロボットとの資本業務提携:2025年10月17日、次世代ヒューマノイドロボットを開発するドーナッツロボティクス株式会社と資本業務提携契約を締結しました。第三者割当増資でドーナッツロボティクス株45,024株(1株2,221円、総額約9,999万円)を引き受け、業務提携としては施工技術・現場管理ノウハウの提供、現場テスト環境の提供、ロボット導入の安全評価、ヒューマノイドの建築業界向け独占販売代理店業務(リース含む)、現場作業を可能にする技術開発などを行うとしています。想定される活用シーンは、足場組立、外壁塗装の自動化、警備・監視、点検診断支援、危険区域への資材運搬、インフラの除草管理など。開発ロードマップは「12ヶ月でプロトタイプ開発・実地検証」→「12〜24ヶ月で実用モデル化・実証」→「24ヶ月超で商用展開・独占販売含む全国展開」という3段階が想定されています。
  • 村田製作所との共同開発:2026年6月17日、自社技術と村田製作所のRFID技術を組み合わせた「状態・異常検知システム及び検知方法」の共同開発・特許出願を発表しています。
  • 全国出店戦略:埼玉・岡山・滋賀・金沢など支店網の新設・移転を継続しており、地域の工務店・ゼネコン等パートナーとの関係強化による全国展開を進めています。
  • ブランド保護:2026年5月・6月に商標登録に関するお知らせを公表するなど、「ホームメイキャップ」ブランドの保護にも取り組んでいます。

なお、研究開発費は240千円と僅少で、既存技術(スケルトン防災コーティングの強化、応用特殊施工の改良)の改善が中心であり、経営成績への影響は軽微とされています。設備投資についても、当事業年度の投資総額は30,407千円(社用車・ソフトウェア・器具備品等)にとどまり、大規模な設備投資計画は開示されていません。

2027年5月期の業績予想

会社は次期(2027年5月期)の業績予想について、「中東地域における情勢不安の長期化により、石油・ナフサ由来の原材料等の供給の停滞や価格の高騰等の影響が予想され、業績に影響を与える要因を現時点で合理的に算定することが困難」として「未定」としています。増収増益が続いてきた実績とは対照的に、来期の数値目標が示されていない点は、投資判断をする上で押さえておきたいポイントです。


4. 株主還元

配当方針

エムビーエスは、継続的な安定配当を基本方針とし、期末配当(株主総会決議)と中間配当(取締役会決議、11月30日基準日)の年2回の剰余金配当を行う方針を掲げています。2026年5月期の配当は1株あたり15.00円(前期13.00円)で、配当性向は18.5%でした。過去5期の配当は5円→6円→8円→13円(うち上場20周年記念配当3円を含む)→15円と、5年で3倍に増加しています。

自己株式の取得

2025年10月に自己株式の取得に係る事項を決定し、同年11月に取得を終了したことが公表されています。2026年5月期のキャッシュ・フロー計算書では自己株式の取得による支出が269百万円計上されており、期末の自己株式残高は800,098株(帳簿価額653,616千円)となっています。配当の増額と自己株式取得を同時に進めており、株主還元に積極的な姿勢がうかがえます。


5. ガバナンス・リスク

取締役会・監査等委員会の構成

エムビーエスは監査等委員会設置会社で、有価証券報告書提出日現在、取締役会は代表取締役社長 山本貴士氏を含む取締役(監査等委員を除く)4名と、監査等委員である取締役3名(うち社外取締役2名:伊藤尚毅氏、前田隆氏)の合計7名で構成されています(社外取締役比率は約29%)。取締役会は原則月1回開催され、当事業年度は20回開催、全取締役が20回すべてに出席(出席率100%)しています。

会計監査

会計監査人は三優監査法人で、2026年5月期の財務諸表について無限定適正意見(監査人が「財務諸表は適正である」と認める、最も標準的な監査意見)が付されています。監査上の主要な検討事項(KAM。監査人が特に重要と判断した項目)としては、一定の期間にわたり収益を認識している工事契約の工事原価総額・工事収益総額の見積りが挙げられています。これは進行基準(工事の進捗度に応じて収益を計上する会計処理)を採用する建設業に特有の、見積りの不確実性に関する通常の監査上の重点項目であり、会計上の懸念事項というわけではありません。

政策保有株式

有価証券報告書「株式の保有状況」によれば、純投資目的以外で保有する株式は非上場株式3銘柄(貸借対照表計上額合計100,998千円)、上場株式1銘柄(住友不動産株式会社、176千円、主要な販売先として長期的関係構築の観点から保有)です。非上場株式のうち当事業年度に新規増加した99,998千円分は、前述のドーナッツロボティクス社への第三者割当増資引受によるもので、資本・業務提携関係の強化を目的とした投資と説明されています。

事業等のリスク(有価証券報告書より、特に押さえておきたい項目)

  • 創業者への依存:代表取締役社長の山本貴士氏は創業者・筆頭株主であり、経営方針・戦略の決定から事業推進まで中心的な役割を担っています。同氏が経営から退いた場合、事業展開に多大な影響を及ぼす可能性があるとされています。
  • 特定仕入先への依存:主力工法で使う特殊機能性塗料の仕入先であるシーカ・ジャパン株式会社への依存度が仕入総額の約59%に達しており、取引条件の変化や契約解除が生じた場合の影響が大きいとされています。
  • 建設技能労働者の不足:業界全体で高齢化・若年入職者の減少が進んでおり、労務費の高騰や施工能力の縮小により受注高が減少する可能性があるとされています。
  • 工事原価の変動リスク:資材価格・労務費の高騰分を請負代金に反映できない場合、完成工事総利益が減少する可能性があるとされています。

いずれも建設業界に共通する構造的なリスクですが、前述のロボティクス活用の取り組みは、この中でも特に大きい労働力不足リスクへの対応策として位置づけられそうです。


6. 株主構成・株価情報

大株主の状況(2026年5月31日現在、有価証券報告書より)

氏名又は名称 所有株式数(株) 発行済株式(自己株式除く)に対する割合
山本 貴士(代表取締役)2,098,60030.27%
極東ホールディングス株式会社1,100,00015.87%
鳴本 聡一郎360,0005.19%
エムビーエス従業員持株会299,9004.33%
松岡 弘晃139,3002.01%
山本 朋子130,0001.88%
原 真也120,0001.73%
井野口 房雄117,0001.69%
BBH(LUX)FOR MUFG GLOBAL EQUITY SMALL CAP FUND108,2001.56%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社79,3001.14%
上位10名合計4,552,30065.67%

大株主の顔ぶれからは、創業者である山本貴士氏が筆頭株主として3割超を保有するオーナー経営企業であることが読み取れます。あわせて、2025年10月・11月付で公衆縦覧されている大量保有報告書(訂正後)によれば、2位株主の極東ホールディングス株式会社と鳴本聡一郎氏(株主名簿上は単独で5.19%保有)が共同保有者として2025年8月末時点でそれぞれ13.90%、4.66%の保有株券等割合を報告しており、両者を合算すると2割弱の株式を握っている計算になります。会社側は実質所有株式数を当事業年度末時点で確認できていないとした上で、株主名簿ベースの数値を大株主欄に記載している旨を注記しています。

所有者別の株式数構成(2026年5月31日現在)では、株主数ベースで個人株主が全体の97.8%(2,257名/2,308名)を占める一方、所有株式数(単元)ベースでは個人その他が79.82%、その他の法人が14.72%、金融機関が2.03%、金融商品取引業者が1.03%となっています。

株式分割・単元株

単元株式数は100株です。有価証券報告書の「発行済株式総数、資本金等の推移」には過去の新株予約権行使による増加(2020〜2021年、190,000株)の記載はありますが、株式分割の実施記録はありません。

株価情報

有価証券報告書によれば、2026年5月期中の株価レンジは最高1,847円~最低800円でした。株主総利回り(配当・値上がり益を合わせた株主のリターンを示す指標。上場時を100として指数化)は252.7%に達しており、同時期の比較指数である東証グロース市場250指数(71.2%)を大きく上回っています。上場来、株価は市場平均に対して大幅に良好なパフォーマンスを続けてきた銘柄といえます。なお、有価証券報告書記載の実績PER(期末時点株価ベース)は15.91倍、PBR(株価純資産倍率)は2.3倍でした。

2026年9月4日15:30時点の株価は1,323円(前日比△2円、時価総額約102億円)で、株式情報サイトの数値によればPBRは2.36倍(出典:株探、2026年9月4日時点)。同時点のPERは同サイトでは算出されていませんでしたが、有価証券報告書記載の2026年5月期実績EPS81.07円をもとに計算すると、1,323円÷81.07円=約16.32倍となります(期末時点の株価水準〈800〜1,847円のレンジ〉とは基準時点が異なる点にご留意ください)。


7. まとめ

エムビーエスは、独自工法「ホームメイキャップ工法」による外壁リフォーム事業を軸に、自己資本比率75%超・ROE15%という高い資本効率を維持しながら増収増益を続けている財務健全性の高い会社です。2026年5月期は保険解約益など一過性の要因が経常利益を押し上げていますが、営業利益率の改善や受注残高の大幅増加(+140.8%)は本業の底堅さを示しています。配当も5年で3倍に増やしており、株主還元に積極的な姿勢がうかがえる一方、次期(2027年5月期)の業績予想は中東情勢の不透明感を理由に「未定」とされている点は留意が必要です。

事業面での最大のトピックは、建設業界共通の課題である技能労働者不足に対応すべく、ヒューマノイドロボット開発企業ドーナッツロボティクス社との資本業務提携に踏み出したことです。伝統的な労働集約型の建設・リフォーム業に、ロボティクス・センシング技術を掛け合わせていく今後の展開が、成長ストーリーとしてどこまで実装フェーズに進むか注目されます。創業者・特定仕入先への依存度の高さといった構造的なリスクとあわせて、今後の決算の推移を見極めていく局面にあるといえるでしょう。


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